【怖い話】 ぐにゃっ 【「禍話」リライト69】
こっくりさんの親類が主役の、短いお話。
Hさんの中学生時代、こっくりさんっぽいヤツが流行っていたそうである。
本家のこっくりさんは、紙の上に十円玉を置き、その上に指を添える。
そこの学校で「エンジェル様」だかと呼ばれていたヤツは、十円玉ではなく鉛筆を紙の上に立てる。
鉛筆を指で持って、「エンジェル様、エンジェル様……」と言って呼び出す。
あとは、こっくりさんと同じである。
…………新規性はないが、それが流行っていたのだから仕方ない。
Hさんは男子ながら、その「エンジェル様」を友達3人と放課後によくやっていたのだそうだ。
ある日のこと、いつものように鉛筆をつまんで勉強のことや恋愛のことなどを尋ねていた。
と、いきなり。
ぐにゃっ
Hさんの指先で、鉛筆が柔らかく曲がった感触がした。
わ! と叫んで思わず指を離す。
すると両隣のふたりも「えっ!?」「うおっ!」と弾かれるように飛びのいた。
Hさんとそっくりの反応だった。
そんな3人を、残った奴が口を尖らせて睨んでいる。
「お前らいきなり何してんだよ~。離しちゃダメだろ~?」
「あのさ……今あの、鉛筆がこう……」
とふたりにHさんが水を向けると、
「うん、うん。曲がったよな……」
「いきなり溶けたみたいに……」
ふたりも頷いて、すごい目つきでHさんを見る。
「なに? お前らバカかよ。なんともねーぞ?」
残りのひとりは、まだ律儀に鉛筆を握っている。
「いやいや、完全に曲がったし……」
「絶対曲がったでしょ今……」
「気持ち悪い感じに……」
怯える3人に、残りのひとりはまるで慌てずに言った。
「いやそんなわけねーだろ? 鉛筆が曲がるって、お前らおかしいんじゃねーか?」
今度はHさんを含めた3人の側が、彼をすごい目つきで見つめる番だった。
「お前、超強い守護霊がついてるんじゃねぇの」
「それかメチャクチャに鈍感なんだな。きっとそうだ」
「どっちでもいいけど、どうしてお前だけ無事なんだよ。ずるいぞ」
「…………なんで俺が責められなきゃなんねーんだよ!」
みにくい言い争いが繰り広げられて、その日は終わった。
それから一週間も経たないうちの、ある日の放課後のことだった。
Hさんが「鉛筆曲がった」派の友達と連れだって帰っていると、路上に人だかりがしていた。
車が変な位置に止まっている。なにやらうめくような声もする。どうやら人身事故らしい。
こりゃ大変だ見に行こう、と走って行き、人ごみの隙間から中を見た。
「あっ!」
道路の端、「鉛筆は曲がってない」と主張したあの友達が、尻餅をついている。
痛ぇーっ痛ぇーっと叫びながら足を押さえている。
道路を渡ろうとして、車にぶつけられたらしい。
「うわっおい! 大丈夫かよ!」
思わず駆け寄ったが彼は痛い痛いというばかりだ。重傷らしかった。
「君たち友達?」と、近くにいたおじさんが言う。
はいと答えると「いま救急車呼んだけどね。ここから絶対に動かしちゃダメだから」と指示された。こういう時の心得のあるおじさんのようだ。
「この子ちょっとキツそうだから……ハンカチ持ってる?」
「持ってます!」Hさんが言った。
「ハンカチ越しに本人が押さえてる足のところ代わりに押さえてあげて」
「はい!」
Hさんはハンカチを出し友達のそばに膝をついた。
「ここか? ここだな? いいか?」
確かめてから血のにじむズボンの裾あたりを指で押さえた。
ぐにゃっ
その感触は、あのとき曲がった鉛筆の感触とそっくりだったそうである。
【完】
★本記事は、無料&著作権フリーの怖い話ツイキャス「禍話」、
ベスト・オブ・禍話②……新作多め より、編集・再構成してお送りしました。
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