【怖い話】 夜中の騒ぎ 【「禍話」リライト 46】
看護師をしている人が、職場で体験した怖い話。
より正確には、とんでもないものを見てパニックになった患者さんから聞いた話だ。
「これ、いわゆる虫の知らせってやつなのかもしれません……」
虫の知らせと聞くと、「寝たきりのおばあちゃんがナースステーションに現れて、静かに頭を下げて消えた」みたいな、心あたたまるお話を想像する人が多いかもしれない。
違うのである。
その人の担当フロアは骨折や打撲などの怪我人が多数で、すぐさま生死に関わるような容態の患者さんはいなかった。
ある日の夜中、ナースコールが押された。
はて。このベッドの番号は腕を折ってる若い人だったはずだが、どうしたのかな。
思っていたら続けざまにライトが光り、ブザーが鳴った。それが繰り返される。どうやら必死に何度も押しているらしい。
これは大ごとらしいぞと部屋に駆けつけた。
患者さんは床にへたり込んで脂汗をびっしょりかきながらナースコールのボタンをガシガシ押していた。
「ちょっとヤバい……! ヤバいって……! 怖いこわい怖い! 勘弁してよマジ……!」
ものすごい形相でそう呟いているのを落ち着かせて、話を聞いた。
トイレに行こうとしたのか退屈だったのか、とにかく部屋からちょっと出たのだそうである。
廊下は常夜灯以外は消えていて薄暗い。暗いなぁオイ、おっかないなぁ、と考えていると……
自分の隣の病室から、
「わァーーーーーーーーーーーっ」
30人ほどの子供たちが叫びながら、一斉に飛び出してきた。
深夜の病院である。そんなたくさんの子供がいるわけがない。
子供たちはひとかたまりで廊下を走って彼の脇を過ぎ、向こうの階段の方へと駆け抜けていった。
患者さんは恐怖でぶっ倒れそうになりながらも部屋へ戻り、ナースコールのボタンを押したのだそうだ。
「みんな幼稚園児くらいの子供だったんですけど! あれって何なんですかっ!?」と聞かれても、こっちはさっぱりわからない。そんなおかしなモノはこの病院に出たことがなかった。
となると、気になるのはその、子供たちの出てきた病室だ。
朝になってから確認しに行った。
足を骨折して入院していた患者さんが、ベッドの上で死んでいたそうである。
昨日までへらへらして、いたって元気だった。持病も合併症の兆候もなく、突然死だったそうだ。
たぶん、それは虫の知らせではないと思う。
【終】
☆本記事は著作権フリー&無料の怖い話ツイキャス「禍話」、
燈魂百物語 第一夜 より、編集・再構成の上お送りしました。なお副題がネタバレのため、禍話wikiにある「病院幼児」から変更してあります。
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