欲望の螺旋:ジャニーズの星芒(前編)

10月2日のジャニーズ会見vol.2を前にした私的論点まとめ

3月のBBCドキュメンタリー『J-POPの捕食者:秘められたスキャンダル』放送・配信を皮切りに、ジャニーズ事務所周りがこれまでにない展開を見せ、それは9月7日のジャニーズ事務所初会見以降、連日にわたって目まぐるしい急展開となっています。
そこで、10月2日の記者会見を前に、現時点で私の考えている論点をまとめておきたいと思います。
あくまでも「現時点で私の考えている論点」です。

ただ、ジャニーズ事務所の公式サイトには、東山紀之代表取締役名義で「10月2日には、その進捗内容を具体的にご報告させていただきたく存じます」とあるだけで、記者会見を行うとは書かれていません。
もしこれで、書面での発表だけで済ませて、記者会見はやらないとなったら各方面から総スカンを食らうと思うので、やらないわけにはいかないでしょう。
(9月29日追記:10月2日14時から記者会見開催とメディアが報道)

論点①
「ジャニーズ問題」とはなにか?

弊サイトでは、まだメディアではほとんど使われていなかった当初から「ジャニーズ問題」という言葉を使ってきました。
なぜ「ジャニー喜多川事件」や「ジャニー喜多川問題」ではなく、「ジャニーズ問題」としたのか?
それは、8月29日に公開されたジャニーズ事務所設置の「外部専門家による再発防止特別チーム」による調査報告書および、9月7日のジャニーズ事務所記者会見までは、ジャニー喜多川の子どもに対する性的虐待をジャニーズ事務所が認めておらず、刑事事件化もされていないため、「ジャニー喜多川事件」と表記するのがためらわれたことと、最初からジャニー喜多川の問題行為をジャニー喜多川だけの問題ではないと考えていたからです。

再発防止特別チームの調査報告書では、ジャニー喜多川による性加害の根本原因を「長年にわたり広範に行わ れたジャニー氏の個人的性癖としての性嗜好異常にほかな らない」と断じています。
その見立てを流用すると、確かにジャニー喜多川の行為は性嗜好異常(パラフィリア)によるものなのでしょう。
しかしながら、子どもを対象にしたそのような行為は、法改正される前の当時であっても社会的に許されておらず、普通であれば半世紀以上にもわたって続けられるような行為ではありません。
それが長期間にわたって被害者を増やし続けたのには、ジャニー喜多川個人のみではない要因があったからです。

それを説明する前に、私の考えている「ジャニーズ問題」の定義を書いておきます。
それについては5月15日にリリースした弊サイトのこちらに明記してある通り。

ジャニーズ問題とは、広義としては、ジャニーズ事務所創設者であるジャニー喜多川氏の児童性虐待行為と、それに対する現体制でのジャニーズ事務所の企業姿勢、およびマスコミにおける報道の状況、ジャニーズタレントをCMに起用しているスポンサーの企業姿勢等、関係する一連のこと及び、それらを長期にわたって成立させている構造までを含めます。

狭義としては、主にジャニー喜多川氏の児童性虐待行為と、それに対する現体制でのジャニーズ事務所の企業姿勢を指します。

論点②
「暗黙のカルテル=利益共同体」について

ジャニー喜多川個人のみではない要因とは何でしょう?
再発防止特別チームの調査報告書には、ジャニー喜多川が犯した行為の背景を下記の5点に大別し、それぞれの詳細が書かれています。

1.同族経営の弊害
2.ジャニーズ Jr.に対するずさんな管理体制
3.ガバナンスの脆弱性
4.マスメディアの沈黙
5.業界の問題

どれも深く頷けるものですが、それでは足りないと私は考えています。
それが「暗黙のカルテル=利益共同体」の存在です。
具体的にいうなら、ジャニーズ事務所を中心としたメディア・広告代理店・スポンサー企業等の利害関係者でつくられる小集団のこと。
たとえばジャニーズ事務所+日本テレビ+電通+日産、といったような。
そしてそれは、案件ごとにジャニーズ事務所以外のメンバーが変わります。
ジャニーズ事務所+テレビ朝日+電通+P&Gというように。

芸能プロダクションの業務にはタレントのマネジメントのほか、楽曲プロデュースや、映画・テレビ番組等のコンテンツ製作、タレント候補発掘と育成、ファンクラブ運営、コンサート企画、グッズ企画販売等、多岐にわたりますが、いずれにしてもそれらはタレントの露出が前提にあってのものです。
つまり、一番重要なことはタレントを露出させることなのです。
日本ではタレントのマネジメント業務とプロダクション業務が一体化して行われており、そこには何の規制もありません(後述します)。
そのため、芸能プロダクションはメディア(テレビ中心)と密接な関係を築こうとします。
そのテレビ局はスポンサー企業から収入を得るために、視聴率を上げようと躍起になります(NHKにスポンサーは関係ありませんが受信料があります)。雑誌には販売部数増とカレンダー利権という狙いがあり、新聞社はクロスオーナーシップによるテレビ局との兼ね合いなどがあります。

ジャニーズ問題をめぐっては「忖度」という言葉がよく使われますが、故・安倍晋三元首相の森友学園問題から一般化したこの言葉は、人口に膾炙するに従い、言葉の運命として本来にはなかった別の意味合いが付加されて使われるようになりました。
「相手の気持ちや考えを推し量る・考慮する」というのが本来の意味ですが、今ではそうすることで好ましくない関係にあることをも意味に含むようになっています。
簡単にいうと「ズルをする」「見て見ぬふりをする」「不正なことをする」というような意味合いを含んで使われていると思うのですが、はっきりとそう断言するのは気が引けるので、曖昧さを含んで「忖度する」と使っているのではないでしょうか。
そして、忖度の主導権はあくまで相手にあり、忖度する側は気を遣ってそうしているかのような。

ジャニーズ事務所に対して「忖度する」のは、ジャニーズ事務所に気を遣っているからではありません。
自分たちの利益のためです。
ジャニーズ事務所の機嫌や利益を損なわないようにするのは、ジャニーズのことを考えてそうするのではなく、あくまで自分たちのため、自社利益のためです。
だから利益共同体なのです。
ジャニーズタレントを露出させるのはジャニーズのためでもありますが、自分たちのためでもあるのです。
つまりは共犯者。
「暗黙のカルテル=利益共同体」というのは、その共犯関係を表す言葉なのです。
では、何の共犯なのか?
ジャニー喜多川の児童性虐待を長期にわたらせ、被害者を増やしたことの共犯です。
最初の頃はジャニーズ事務所の実力でタレントを売り、それに見合った需要があっての露出だったのだと思います。
しかし、「暗黙のカルテル=利益共同体」の関係を強固にすることによって、需要があっての露出だけでなく、人気のタレントを出演させるかわりに、ジャニーズ事務所が売り出したい他のタレントも抱き合わせで出演させるバーターや、競合となる他事務所のボーイズグループ・タレントを共演NGにすることで、自社タレントの露出機会を増やしていったのです。
それをシステム化させたのは、おそらく光GENJIあたりからで、SMAPが決定的にしたのではないでしょうか?

アイドルに何の興味もない私ですが、ジャニーズで唯一、メンバー全員のフルネームと顔がわかるのがSMAPです。
自分から聴こうと思って聴いたことは一度もないのに、SMAPの楽曲のいくつかは知っています。
それが“国民的アイドル”と言われたゆえんでしょう。
SMAPファンに言わせると、そのSMAPはジャニーズ事務所の中では異端で、実質的に事務所を仕切っていた藤島メリー泰子(2021年没)氏や、その娘である藤島ジュリー景子氏とは折り合いが悪く、他のタレントグループとは違う経路で活動することが多かったとのことなのですが、それでもジャニーズ事務所所属(2016年末で解散)には違いないので、SMAPの人気を最大限利用して、「暗黙のカルテル=利益共同体」を強固なものにつくり上げていったのだと思われます。

若干、話が逸れますが、本来は需要と才能・実力は無関係です。
才能や実力があってもそれほど需要がないということは当たり前にありますし、才能・実力がないのに需要があるということも……いや、これはどうでしょう?
人懐こいとか、挨拶がしっかりしていて感じが良いとか、そういったことまで含めると、よほどのことがない限り、才能や実力が皆無ということはないのかも知れません。
タレント(talent)というのは、才能や才能のある人を指す言葉ですが、日本ではテレビやラジオ、雑誌等のメディアや、イベントなどに出演して収入を得る人のことを言います。
その意味では“感じの良さ”(逆に“感じの悪さ”なども)も一種の才能と言えるのかも知れません。

芸能プロダクションは所属タレントが売れないとビジネスになりません。
一旦、人気に火がつくと、飽きられるまでは多くの付加価値がついて売れますが、その人気を自然任せにするのではなく、人工的につくり出そうとするのが「暗黙のカルテル=利益共同体」です。
そして、それを正にだけ作用させるのではなく、負に向けてもあからさまに作用させたのがジャニーズ事務所です(後述します)。


※前編・中編・後編の3回にわたる更新を予定していますが、時間と気分次第ですのでどうなるかわかりません。
また、公開したものでも後で非公開にするかも知れませんし、削除するかも知れませんし、タイトルを含めて大幅に修正するかも知れません。
とりあえず、推敲も何もしないでこの前編をリリースしてみます。


中編UPしました。







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