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全てが”優しい”無料ビジュアルノベルの傑作。【U-ena‐遠花火の少女】

「あの空のむこうに、君はまだいますか?」

夜空に前触れもなく現れる天体現象”遠花火”。

”舞台はどこにでもあるような田舎の学校。
言の葉サークルとよばれる、文芸部と茶道部を合わせたような部活に所属する主人公は、 遠花火が見えたとある夜、泉の真ん中でずぶ濡れになっている少女と出会う。
少女――ユエナと、言の葉サークル部長、東雲 詩乃との三人で、なんでもない日常を過ごしていくが、次第にゆったりとした現実に、突如として加速した非現実が迫ってくる。” ​(引用:Steamストアページ)

言の葉サークルの3人が送るちょっと不思議なSF青春恋愛ストーリー。
選択肢はほぼない一方向型ビジュアルノベル。
「ユエナ、詩乃には主人公の知らない秘密が…」、といったヒロインの秘密が徐々に明らかになっていく。同時にそれに直面した主人公が成長していく姿を私たちは目にする。


Steamに書いたレビュー

予め書いておくが、この作品を私は本当に好きになった。
なので純粋にべた褒めしている。
以下、原文ママ

「この作品を本当に無料でプレイしていいのだろうか」
そう思わせてくれる作品でした。

恋愛シミュレーションゲームとして見るのであれば、
実際に選択可能な項目は本当に少ないです。
ですが、ビジュアルノベルというジャンルで見るのであれば、
ストーリー・画風・音声・音楽どれを取っても、本当に良い作品でした。

ざっくり言えばSF青春ラブストーリーなのですが、”恋愛”だけでなく、
”大人になるということはどういうことなのか?”、
”青春とは?”というテーマについて考えさせてくれる、そんな作品です。
(そして作者様の文章の書き方、非常に刺さりました。本当に表現が豊か。)

画風からプレイすることを決めた私でしたが、最後には思わず泣いてしまいました。
キャラクターも可愛らしく、感情移入もできる中々の名作です。


DLのきっかけ

前評判も特に調べてはいなかったのに、なぜDLしようと思ったか。
正直に言おう、まずはキャラ絵に惹かれた。Steamストアページに載っているユエナ、詩乃のデザインがとにかく可愛かった。まずはそこだった。
(三頭身デザインでDL決定した)
加えて、ビジュアルノベルをもっとプレイしたいと思っていたタイミングでもあったのだ。

風景や描写の描き方も、サンプルからでもその清涼感。
心地よさを感じることができたのだ。

しかもこの作品、無料なのだ。通常でプレイしても10-13時間程度かかるボリュームでだ。そこも一つプレイへのハードルが下がった要因だと思う。
逆に言えば、無料でこのボリュームなのである。
キャラソング集が別売りになっているが、それでも1500円。
ビジュアルノベルの中では破格と言っていい価格だ。
そうした部分でも衝撃を受けた。

「なぜここまで好きになれたのか。」という自問。(注意:ネタバレ一部含む)

そして内容についてだが、恋愛要素が強いのだろうか?という疑問がプレイ前にはあったが、そんなことはなかった。もちろん恋愛感情というものが登場人物の言動や描写に現れているのだが、むしろ恋愛や青春の日々を通して、主人公を中心に、登場人物(特に主人公)が成長していくことがメインだと思う。

というのも、主人公達は田舎の中学生という設定であり、思春期真っ只中なのである。心身ともに成長していく時期であり、どこか幼さがあり、大人の持つ黒い部分というのが無い頃と言ってもいい。(もちろん個人差はあるだろうが)

だが、そんな無垢な時間にも困難というものが訪れる。時として自分ではどうしようもないような困難が。それを越えて”大人”になっていく。そういう作品だと思う。

突然のユエナ(宇宙人)との出会い、ユエナを受け入れてくれる詩乃、そして3人になった言の葉サークルの日常。それを見守る(教育実習生兼ユエナの保護者)の椿は一緒の時間を過ごし、遊び、思い出を作っていく。でも、ユエナそして詩乃、椿にも主人公に伝えていない秘密があり、それが段々と明らかになっていく。その現実に主人公は苦悩する。

だが、その苦悩する主人公に3人はただ優しく接してくれる。自分自身もその現実に苦悩しながらも。自分の運命、役割を受け入れつつ、主人公に接する3人の姿は心打たれるものがあった。

日常の他愛のない時間、柔らかな時間と描写、そして秘密が明らかになった後の受け入れがたい現実の描写の対比。そうしたものに引き込まれた。
その描写を引き立たせてくれる音楽、繊細さを感じるカットシーン(一枚絵)の描き方、とにかく美しかった。

そして何より、ストーリーを含めた全体の文体の”優しさ”が私には何よりも印象深かった。相手のことを想い、苦しさの中で自分を変化させていく登場人物たちの言葉、日常の風景や様々な場面場面での形容の仕方、そして”大人になるとは?””人を想うこととは?”といった問い、それら全てに書き手の優しさがこもっていると思った。
皆さんが思う優しさとは違うかもしれないが、私にはこれ以外の言葉が出て来なかった。(それ以外の言い方が思いつかなかったのだ…笑。)

最後に

本当に読み進める中で色んなことを考えさせてくれた作品だったわけだ。
だからこそ、これを読んでいるあなた、それ以外にもいろんな人にプレイしてみてほしい。
本当におススメできる、おススメしたい作品の一つだ。

最後に、作中の決め台詞を引用させてもらおう。

”ぱふぇてろ!”

それではまた別の作品で…



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