7月4日(日)、東京都議会議員選挙が投開票された。
結果は次の通りとなった。
前回歴史的大敗を喫した自民党は議席を増やしたものの思ったほど延びず、第1党は確保したものの公明党と併せても都議会過半数には及ばない結果となった。
一方苦戦が予想されていた都民ファーストの会は15議席減に留まり、かろうじて惨敗は免れた。
公明党は8回続けての全員当選。共産党は前回より1議席上乗せ。立憲民主党は前回よりほぼ倍増の躍進だった。
生活者ネットワークと維新の会は前回と同じ選挙区で議席を獲得するに留まった。
国民民主党と、れいわ新選組は議席獲得出来なかった。
古い政党から国民を守る党(古い党)は、選挙期間中の6月28日に「嵐の党」に党名を変更していたが、推薦候補3名を含め、全員が供託金没収の惨敗となった。
今回、私は事前に各党の獲得議席数を予想していた。
一応すべて最小値と最大値の範囲内には収まっているのだが、自民党の大勝と、都民ファーストの会の惨敗を予想していたので、結果を大きく外してしまったことになる。ただ、多くの人が今回は公明党の取りこぼしがあると予想している中、これまで通り全員当選を的中させたのは見事だったなと我ながら満足している。共産党も具体的な候補者の当落は外しているものの、19議席という数値は一致した。立憲民主党も予想より1議席だけ少ない結果だった。
各選挙区の予想と結果を振り返ってみたい。
◆千代田区(定数1)
私の予想は自民党の内田直之候補の当選だったので、予想を外している。千代田区は港区、新宿区と共に衆議院東京都1区に所属している。1区というのは都道府県所在地が含まれており、選挙においては「1区現象」と呼ばれる波乱がおきやすい。
今回の都議選でも、事前に好調だと言われていた自民党の有力候補が破れ、まさしく今回の都議選を象徴する結果となった。
自民党の内田直之都議は、「都議会のドン」と言われた内田茂・元都議の娘婿。前回失った自民党の議席の奪還に意欲的であった。だが結果は、板橋区から移ってきた落下傘候補の平慶翔都議に破れている。1月の千代田区長選挙において、都民ファーストの会都議だった樋口候補が自民党候補らを破って勝利。その勢いが都議選でも再現された。内田候補は区長選において義父の内田茂元都議と確執のある自民党候補を支援しなかったと言われるが、その凝りがあったのかもしれない。自民党支持者の中には内田候補支援をためらった人もいただろう。
浜森香織候補には一部の区議が支援していたが、予想以上に善戦しており、一部の自民党支持の票が流れたのではないだろうか。
◆中央区(定数1)
ここは順当に自民党の石島秀起候補が当選したが、島部を除くと自民党唯一の1人区勝利となった。
前回は都民ファーストの会の西郷歩美候補が当選したが、その後離党して日本維新の会入り。今回は不出馬となった。都民ファーストの会はお笑いコンビ元モエヤンの池辺愛候補を擁立。「ヌーブラヤッホー」では勝負になるまいと予想していたが、意外にも健闘していた。
維新の会は元ミスター慶應の岸野智康候補を擁立したが、遠く及ばず惨敗となった。
◆港区(定数2)
港区は都民ファーストの会と自民党の現職が順当に当選した。
今回2人区では立憲民主党と共産党が候補者を統一したが、港区では不調に終わっている。両者の得票を合わせれば当選ラインに達していた。
◆新宿区(定数4)
共産党の大山とも子都議は8回目の当選となった。トップ当選というのはさすがである。
公明党の古城将夫都議も上位で当選。新宿区は公明党の本拠地信濃町を抱えるだけに落とすわけにはいかない。
都民ファーストの会の森口つかさ都議は、事前にあまり積極的な選挙運動をしていなかったとの話だったので、今回は苦しいと予想していた。だが、予想に反して当選。ここも東京1区の一部だけに、都民ファーストの会に風が吹く1区現象が見られたのだろうか。
その煽りで自民党が1議席に留まった。区議選でトップ当選の実績のある吉住栄郎候補が当選し、5期目を狙った秋田一郎都議が議席に届かなかった。
立憲民主党の三雲崇正候補は次点に留まったが、海江田万里元民主党代表の地元でのこの結果は厳しい。
◆文京区(定数2)
激戦区だったが共産党と都民ファーストの会が議席を獲得し、自民党の中屋文孝都議が涙を飲んだ。
立憲民主党が候補者を立てなかったこともあり、共産党の福手裕子候補の当選は予想通りだったのだが、中屋都議の落選は予想外であった。それだけ今回の自民党には“逆風”が吹いていると言えるのではないか。
◆台東区(定数2)
自民党の鈴木純候補が当選し、残り1議席を都民ファーストの会の現職同士の潰し合いとなる予想は的中した。
ただ、その中では民主党出身の中山寛進都議が有利であろうとの予想は外してしまった。
◆墨田区(定数3)
苦戦すると予想していた都民ファーストの会の成田梨沙子都議がトップ当選。自民党は現職の川松真一朗都議のみが当選した。
公明党は加藤雅之都議が最下位とはいえ危なげなく当選。
◆江東区(定数4)
現職4人が議席を守った。都民ファーストの会の白戸太朗都議は苦戦すると予想していたが、自民党の高橋恵海候補に競り勝った。
◆品川区(定数4)
公明党、共産党の現職が順当に当選。また、都民ファーストの会を離党した森沢恭子都議が、都民ファーストの会の刺客・筒井洋介候補を差し置いて当選した。立憲民主党の阿部祐美子候補が最下位で当選。
区議会が2会派に分裂している自民党は、それぞれが候補を擁立。結果的に共倒れに終わり、品川区での議席を失った。
◆目黒区(定数3)
品川区同様候補者調整が出来なかった目黒区も自民党が共倒れに終わっている。
都民ファーストの会の伊藤悠候補がトップ当選。2位以下は激戦になったが、公明党の斉藤泰宏都議も議席を守る。
3位には立憲民主党の西崎翔候補が入ったが、次点の共産党の星見定子都議との得票差はわずか6票。まさに薄氷を踏む勝利だった。
◆大田区(定数7
共産党の藤田綾子都議がトップ当選を果たした。元北区議の立憲民主党の“筆談ホステス”斉藤理恵候補も議席を獲得。日本維新の会も松田龍典候補が柳ヶ瀬裕文・現参院議員が前回獲得した議席を維持した。
公明党は新人の玉川英俊候補が最下位と苦戦したものの、なんとか2議席を維持。都民ファーストの会は森愛都議が当選したものの、奥本有里候補は届かず1減となった。
2議席を保持する自民党は3議席目を狙ったものの、鈴木晶雅都議の1議席に留まった。2人に絞っていれば2人共当選だっただけに悔やまれる戦略ミスである。
◆世田谷区(定数8)
最多8議席を争う世田谷区。
前回同様3議席を狙った自民党はうまく票を分け合うことに成功。全体的に自民党苦戦の中、3議席を維持した。ポスター剥がしで書類送検され自民党を離党した大場康宣都議は票が伸びず惨敗。
前回1、2位を独占した都民ファーストの会は、福島理恵子都議がトップ当選を果たした一方、木村基成都議が大きく票を減らして落選。今回、都民ファーストの会が2人擁立した選挙区では女性候補に票が集中し、男性候補は落選というパターンが目立っている。
公明党の高久則男候補、共産党の里吉ゆみ都議も議席を獲得。
立憲民主党が山口拓都議に続いて、風間穣候補を当選させた。
生活者ネットワークの関口江利子候補は届かず、次点に入ったのは維新の会の岡林裕佳候補。苦戦すると予想していたので意外な結果であった。
◆渋谷区(定数2)
渋谷区は2議席とも予想を外してしまった。
渋谷区は立憲民主党は長妻昭・元厚労相の地盤であるが、このところ民主党・民進党は議席を獲得出来なかったのだが、共産党が候補者を下げた効果だろうか、中田喬士候補がトップ当選を果たした。
2位は都民ファーストの会の龍円愛梨都議だった。私は同じ都民ファーストの会でも議員経験の豊富な大津浩子都議の方が有力だと予想していただけ2この結果は意外であった。これまでしぶとく議席を守っていた大津都議も今回は存在感を見せる事が出来なかった。
◆中野区(定数3)
中野区は都民ファーストの会にとって正念場となる選挙区である。というのも、都民ファーストの会代表の荒木千陽都議が議席を守れるかどうかがかかっている。
立憲民主党の西沢圭太都議がトップ当選。都民ファーストの会の荒木候補もそれに続いた。
今回事前の予想では公明党が苦戦するとされていたが、豊島区は落選の可能性が高い選挙区の1つであった。公明党の現職・高倉良生都議と自民党の新人・出井良輔候補の競り合いの末に、高倉都議が勝った。苦戦しても最終的に勝ち残る辺り、公明党の底力を感じる。
◆杉並区(定数6)
杉並区も都民ファーストの会は女性現職が当選し、男性現職が落選というパターンだった。茜ヶ久保嘉代子都議がトップ当選を果たしたが、鳥居宏右都議は大差で落選している。
共産党現職の原田暁都議、公明党現職の松葉多美子都議も無難に議席を守る。
自民党の2人の現職・小宮安里都議と早坂義弘都議も揃って議席を守った。
立憲民主党は2018年の区議補選で当選した関口健太郎区議が初当選した。
前回次点の生活者ネット・小松久子元都議はまたもや次点に泣いた。れいわ新選組の山名奏子候補も届かなかった。
◆豊島区(定数3)
小池百合子都知事のお膝元の豊島区。都民ファーストの会の本橋弘隆都議がトップ当選し面目を守った。
共産党の米倉春奈都議は立憲民主党の支援もあって悠々当選。
公明党はここ中野区でも苦戦。前回議席を失った自民党の堀宏道元都議と最後の1議席を争う形となったが、長橋桂一都議がなんとか議席を守る。
◆北区(定数3)
前回都民ファーストの会で当選した維新の会の音喜多駿参院議員の票の行方が焦点となる。
維新の会からは補選にも出た佐藤古都候補、都民ファーストの会からは林元真季候補が立ったが、結果的にどちらも落選となった。
補選で当選した自民党の山田加奈子都議がトップで再選。
共産党の曽根肇都議と公明党の大松成都議が議席を守ることとなった。
◆荒川区(定数2)
前回と同じ結果となった。公明党現職の慶野信一都議がトップ当選。都民ファーストの会の滝口学都議も議席を守る。
前回破れた自民党の崎山知尚元都議の返り咲きならず。逆風だった前回よりも得票を減らしており、自民党への信頼はまだ回復していないようである。
◆板橋区(定数5)
平慶翔都議が新宿区に転出したため、都民ファーストの会は木下富美子都議で一本化されることとなった。そのこともあってか、木下都議は議席を守る。
トップ当選は公明党の鎌田悦子候補。共産党の徳留道信都議と立憲民主党の宮瀬英治都議も議席を守る。前回現職2人が共倒れした自民党は今回も元職2人を擁立。松田康将元都議が議席を回復した。
再選を果たした木下都議だが、その後投票2日前の7月2日に人身事故を起こしていたことが発覚する。その際、免許停止中だったことから無免許運転であったこともわかった。
木下都議は「2月ごろに免許停止になったが、事故当日は停止期間が終わったと勘違いをしていた。」と語っていたというのだが、選挙期間中に自身でスクーターを運転していたところが目撃されていた。
それ以前に、免許停止を失念するということはあり得るのだろうか。免許証の更新を忘れて失効していたことに気づかないというのであれば、十分あり得そうである。だが、免停の場合は免許証を返納するのだから、わかっていなければおかしい。木下都議は相当悪質であったように思われる。
木下都議に辞職を求める声が高まり、そのことを重くみた都民ファーストの会は木下都議を除名処分とした。木下都議は辞職を拒否。一人会派「SDGs東京」を結成し、職務を全うするとのことである。
◆練馬区(定数7)
小池百合子都知事の地元ということもあり、都民ファーストの会の現職2人が議席を守ることとなった。
3人を擁立した自民党はうち2人が当選した。練馬区は菅原一秀・元経産相の地盤であるが、自民党への逆風はさほどないようだ。
立憲民主党は公認の藤井智教都議は当選したものの、推薦の池尻成二候補は次点に留まった。藤井都議が立憲民主党支持層の票の多くを吸収したためであり、立憲民主党の票割りがうまくいかなかったのだろう。
◆足立区(定数6)
足立区も都民ファーストの会は女性現職が当選し、男性現職が落選するというパターンだった。後藤奈美都議は前回に続きトップ当選。
自民党は高島直樹都議と、発地易隆元都議の2議席を獲得。公明党も前回同様2議席となったが、中山信行都議が前回に続いて最下位当選であった。
共産党の斉藤真里子都議も議席を守ったが、立憲民主党の和田愛子候補は届かなかった。
れいわ新選組の末武あすなろ候補は当選に遠く及ばない惨敗。
◆葛飾区(定数4)
泡沫候補や話題の候補者が大挙して立候補してきた葛飾区。
公明党新人・北口剛士候補と共産党・現職の和泉尚美都議は1位と2位で当選した。
都民ファーストの会の米山大二郎都議は前回の得票を半減させたものの議席を守った。
自民党はベテランの現職・舟坂誓生都議が議席を失い、新人の平田充孝候補が勝ち残った。
立憲民主党の新人・岩崎孝太郎候補は届かなかった。
諸派の候補者は全員下位に沈んだ。特に後藤輝樹候補と河合悠祐候補は最下位を争う結果に。これらの候補者が11月の葛飾区議選に再び顔を見せるかどうかにも注目が集まる。
◆江戸川区(定数5)
江戸川区は予想を的中させた。
公明党の新人・竹平智春候補がトップ当選。
2位には都民ファーストの会の田之上郁子都議が入った。前回都民ファーストの会で立候補した上田令子都議が離党したため、結果的に候補者の一本化に成功したと言える。その上田令子都議も議席を守ったが、通称“お姐”として地元では人気が高いようだ。
共産党新人の原純子候補も議席を維持。
自民党は現職の宇田川聡史都議が議席を守るも、大西洋平候補は約2百票差で涙を飲んだ。インドから帰化した立憲民主党のよぎ候補は及ばなかった。
◆八王子市(定数5)
前回は上位を独占した都民ファーストの会が共倒れとなった。今回、共倒れは八王子市が唯一。他の選挙区の様子を鑑みるに、どちらかが女性候補であったなら、当選していたと思われる。
公明党の現職・東村邦浩都議、共産党の新人・青柳有希子候補がそれに続く。
自民党は現職の伊藤祥広都議と新人の西山賢候補が共に当選した。八王子市は萩生田光一文科相の地元であるが、自民党は安定の強さを見せた。
立憲民主党の須山卓知候補が最後の1議席に滑り込んだが、都民ファーストの会の共倒れに救われた形となった。
◆立川市(定数2)
立川市は清水孝治都議と立憲民主党の酒井大史元都議という実績のある候補が順当に当選。
都民ファーストの会の石飛香織候補は知名度不足もあってか及ばなかった。
◆武蔵野市(定数1)
菅直人元首相と土屋正忠・元武蔵野市長の因縁の対決は、予想通り立憲民主党の五十嵐衣里候補の勝利となった。
都民ファーストの会の鈴木邦和都議も予想外に健闘し、土屋ゆう子候補を上回り次点に入った。土屋元市長の威光も過去のものとなったのか。
◆三鷹市(定数2)
立憲民主党の中村洋都議が共産党の票も吸収しトップ当選を果たした。
都民ファーストの会の山田浩史都議が2位で議席を守る。
自民党の加藤浩司候補は、前回の得票を下回る惨敗。自民党への逆風はまったく収まっていない。
◆青梅市(定数1)
自民党の山崎勝候補の勝利を予想していたが、意外にも都民ファーストの会の森村隆之都議が勝利した。自民党は前回の得票をも下回っている
◆府中市(定数2)
無所属で立った小山有彦都議がトップで再選。町田市に転出した藤井晃都議の票も吸収し、前回より得票を増やしている。
もう1議席は自民党の鈴木錦治元都議が返り咲き。共産党の柄沢地平候補はやはり勝負にならなかった。
◆昭島市(定数1)
予想は自民党の安保満候補だったが、都民ファーストの会の内山真吾都議が大幅に票を減らしながらも議席を守った。
◆町田市(定数4)
都民ファーストの会の奥澤高広都議が不出馬となり、府中から転入の藤井晃都議がその地盤を引き継ぎ議席を守った。
公明党の小磯善彦都議がトップ当選。共産党の池川友一都議も最下位ながら当選。
自民党は星大輔候補のみ当選で前回と同じ1議席止まり。
立憲民主党の鈴木烈候補は次点に終わったが、民進党出身の今村路加元都議とで票が割れたと思われる。
◆小金井市(定数1)
現職の都民ファーストの会の辻野栄作都議は、まったく票が伸びず最下位で惨敗に終わる。
接戦を制したのは野党系の漢人明子候補だった。広瀬真木候補は及ばなかった。もともと小金井市の西岡真一郎市長は立憲民主党と生活者ネットワークの推薦で当選しており、小金井市は野党系が強い地域だと言える。
◆小平市(定数2)
立候補者が定数と同じだったため無投票での当選が決まった。都議選が無投票となるのは1951年の伊豆七島選挙区(定数1)と1963年の八王子市選挙区(定数2)以来、58年ぶり3度目となる。
◆日野市(定数2)
都民ファーストの会の菅原直志都議が前回同様トップ当選を決めた。
自民党の西野正人都議は前回の自民党候補より票を伸ばしたが、共産党の清水登志子候補に競り負けた。もともと共産党が強い地域だが、立憲民主党と社民党の支援も受け、野党共闘が効を制した。
◆西東京市(定数2)
自民党の浜中義豊候補がトップ当選し、自民党の議席を取り返した。
都民ファーストの会の桐山ひとみ都議は票をだいぶ減らすも議席を守る。
一方、都民ファーストの会から立憲民主党に移った石毛茂都議は及ばず。共産党との候補者調整か不調に終わり、野党票が割れたのが原因と思われる。
◆西多摩〈福生市・羽村市・あきる野市・瑞穂町・日の出町・奥多摩町・檜原村〉(定数2)
前回と同じ都民ファーストの会の清水康子都議と自民党の田村利光都議が議席を守った。
立憲民主党の宮崎太朗候補はまったく票が伸びず、両者に大きく差をつけられての落選となった。
◆南多摩〈多摩市・稲城市〉(定数2)
元稲城市長の石川良一都議がトップ当選。自民党の小礒明元都議も議席を取り戻した。
都民ファーストの会を離党し立憲民主党入りした斉藤礼伊奈都議は及ばなかったが、予想以上に善戦。共産党との一本化がなされていれば当選していた可能性がある。
◆北多摩第一〈東村山市・東大和市・武蔵村山市〉(定数3)
公明党の谷村孝彦都議が安定した得票でトップ当選。共産党の尾崎あや子都議も議席を守った。
前回トップ当選の都民ファーストの会の関野杜成都議は大きく得票を減らすもなんとか逃げ切った。自民党の北久保眞道元都議は400票差でまたしても次点となった。
◆北多摩第二〈国分寺市・国立市〉(定数2)
東京・生活者ネットワークの岩永康代候補が都内唯一の議席を保持した。
もう1議席は自民党の本橋巧候補。前回失った自民党の議席を取り返した。
◆北多摩第三〈調布市・狛江市〉(定数3)
都民ファーストの会の尾崎大介都議が前回に続いてトップ当選を果たした。
補選で当選した自民党の林明裕都議も議席を維持。
公明党の中嶋義雄都議が大苦戦。共産党の田中智子元都議との競り合いとなった。最終的には約450票差で勝ったが、危うく落選の危機だった。公明党がそれまでの強さを失っていることが浮き彫りになった。
◆北多摩第四〈清瀬市・東久留米市〉(定数2)
都民ファーストの会の細谷祥子都議が大きく議席を減らして落選した。
当選したのは共産党の原紀子都議と自民党の渋谷信之候補。トップ当選は原都議だったが、2人区で共産党がトップに立ったのは文京区とここのみ。立憲民主党との候補者調整がうまく機能していた。
◆島部〈大島町・利島村・新島村・神津島村・三宅村・御蔵島村・八丈町・青ヶ島村・小笠原村(定数1)
自民党現職の三宅正彦都議が大差で当選を決めた。小池百合子ブームだった前回でさえ、都民ファーストの会の候補者が大差で破れている。共産党に一定の支持があるとはいえ、島嶼部で自民党の牙城を崩すのは容易ではない。あまりに順当すぎる結果だ。
◆総括
今回の都議会議員選挙の予想の多くはいずれも自民党大勝、都民ファーストの会惨敗というものだった。今回の結果は、それを覆すもので、事前にはほとんど考えられていなかった。いったいなぜこのようなことが起きてしまったのだろうか…。
告示直前に入院した小池百合子都知事が退院したことで、「小池劇場」の再来があったからではないのか。7月2日の会見で都知事は「倒れても本望と思いやり抜く」と発言。翌3日には16の選挙区(18候補)を回っていた。小池都知事は酸素ボンベを携帯していたとのことであったが、このことが最終日にネットやマスコミで拡散され、同情票を集めることにつながったのだろう。
前回大勝した都民ファーストの会が今回複数の候補者を立てた選挙区で共倒れしたのは八王子市だけであった。他はすべてどちらかの候補者は当選している。中でも世田谷区、杉並区、足立区では都民ファーストの会の女性候補がトップ当選する反面、男性候補はその半分の得票にも及ばず落選している。都民ファーストの会は12人の女性候補が当選したが、これは共産党の14人に次ぐ人数である。女性票がこうした女性候補を押し上げたという可能性があるのではないだろうか。麻生太郎・財務相が小池都知事の入院を「自分で撒いた種」と評したことも自民党にとってかなりの痛手になったのかもしれない。
また、かなり早い段階から自民党の圧勝ムードがあり、それで自民党が実力を過信してしまったこともあったのではないか。例えば、今回自民党は2人区の目黒区で候補者が共倒れ。大田区(定数4)と品川区(定数7)では3人を擁立して1人しか当選出来なかった。もし候補者を絞っていればあと3議席は確実に上積み出来ていたということになる。自民党は議席を伸ばしたとはいえ、前回を除くと過去最低だった1968年と2009年の38議席を下回っている。
逆に野党勢は立憲民主党と共産党および生活者ネットワークの選挙区の住み分けがうまく機能した。1人区では武蔵野市(立憲民主党)と小金井市(無所属)で野党系が勝利。さらに8つの2人区で野党系の候補が勝っている。住み分けがうまくいかず共倒れした港区、西東京市、南多摩も、もし一本化されていれば数字上は当選することが出来ていた。
立憲民主党が選挙前の8議席から15議席にまで伸ばしたのは、確かに躍進である。しかし考えてみると、これは旧・民主党が惨敗して都議会第一党から陥落した2013年都議選の議席と同じ数である。しかも、当時は共産党との住み分けはなされてはおらず、共産党と競合する中で獲得した議席であった。共産党の協力がなければもっと議席は少なかっただろうから、国政野党第一党としてはかなり心もとない。そして同時に、共産党が野党共闘の受け皿になっていることも示している。以前であれば、共産党が野党統一候補となった場合はそれほど票が伸びなかっただろう。それが、今回は2人区の文京区、日野市、北多摩4で共産党は議席。大田区や新宿区でもトップ当選しており、共産党アレルギーが都民においてだいぶ薄くなっているように感じる。こ来たる総選挙でも野党の共闘は一層促進されていくことになるであろう。
こうして考えると、今回の都議選では議席を減らした都民ファーストの会は元より、議席を増やした自民党と立憲民主党のどちらも勝ったとは言いがたい。結局誰が勝ったのかはっきりしない、勝者不在の結果だといえる。
今後、小池都知事は都政運営をどう行なうつもりなのだろうか。都民ファーストの会は自民党を議席数で下回ったとはいえ、その差はわずか2議席。
無所属議員の取り込みを計るのではないか。今回当選した無所属議員4人のうち、漢人明子都議(小金井市)は緑の党出身だが、残り3人はもともと都民ファーストの会に所属していた。
そして、都民ファーストの会は政権与党と政権野党どちらと組むのか。自民党と公明党の政権与党は計56議席。立憲民主党、共産党、生活者ネットワークの政権野党は計36議席。そのどちらと組んでも小池与党は都議会過半数となる。しばらくは各派による激しい多数派争いがあるのだろう。
これで都議選は終わりだが、政局はまだ動いている。秋にも解散総選挙が予定されている。政権幹部は都議選はあくまで一地方選挙であり、国政とは関係ないと語っていたが、決してそんなことはない。各党とも今回の反省を踏まえ、次の戦略を練っていることであろう。
私も都議選の各選挙区の予想と結果を振り返り、次の総選挙に備えようと思う。さすがに全国の小選挙区の予想を立てるのは大変だが、せめて都内の25選挙区の予想だけでも立てらればと思っている。