2024年東京都議会議員補欠選挙レポート
東京都知事選挙は現職の小池百合子都知事の圧勝に終わったが、同時に投票があった東京都議会議員補欠選挙の方は激戦が多かった。その結果は都知事選以上に、その後の政局を占う上でも大切となる。その様子をレポートする。
都議会議員補欠選挙は6月28日に告示された。補欠選挙が行なわれたのは江東区、品川区、中野区、北区、板橋区、足立区、八王子市、府中市、南多摩(多摩市、稲城市)の全部で9つの選挙区。全て定数1であるが、勝敗の予想のつかない激戦区が多いようだ。
9つの選挙区の政党別の候補者数は次の通りであった。
また、告示時点での都議会の主要会派構成は次の通りとなっている。
最大会派の自民党と、2位の都民ファーストの会の差は3議席。今回の補選の結果次第では最大会派が変動する可能性がある。そういう意味でもこの補選は重要である。
◆江東区選挙区
自民党の山崎一輝・前都議が2023年の江東区長選挙に立候補(落選)して辞職したことに伴って実施される。
山崎前都議が返り咲きを狙って立候補。
共産党は大嵩崎かおり(おおつき・かおり)区議を擁立。
やり直し区長選に出馬していた三戸安弥(さんのへ・あや)元区議が立候補。区長選に続き、上田令子都議の自由を守る会が支援している。
木村勉・元自民党代議士の孫・髙橋巧候補も立候補。高橋候補は木村弥生元区長の甥ということにもなる。江東区ではこれまで、柿澤家、木村家、山崎家による争いが散々繰り広げられてきたが、またしても木村家と山崎家の戦いとなった。
◆品川区選挙区
森澤恭子都議(現・品川区長)が2022年の区長選に立候補のために辞職したことに伴って実施される。
自民党は初の平成生まれ区議だった芹澤裕次郎区議を擁立した。
立憲民主党の菅原千稲候補は、2015年国立市議選に民主党公認で立候補して落選したことがある。
篠原里佳候補は森沢区長の秘書を務めていた。今回も「区長との連携」を強く訴えている。
川口めぐみ候補は2022年区議補選、23年区議選で落選している。
◆中野区選挙区
都民ファーストの会の荒木千陽・前代表が2022年参院選出馬(落選)したことで失職したことに伴って実施される。
荒木前都議が返り咲き立候補。
自民党は出井良輔区議、共産党は長沢和彦・元区議を立てる。
前北美弥子(マエキタミヤコ)候補はコピーライターで環境保全運動家。
◆北区選挙区
自民党の山田加奈子都議が2023年北区長選挙立候補のため辞職したことに伴って実施される。
自民党は戸枝大幸区議、共産党は清野恵子(せいの・けいこ)区議を擁立。
都民ファーストの会は区長選で次点だった駒崎美紀・元区議を立てる。
また、日本維新の会が木藤直樹候補を擁立。もともと北区は音喜多駿・日本維新の会参院議員の地盤で、駒崎元区議も音喜多代表(当時)率いる「あたらしい党」の幹事長を務めていたが、2019年12月に離党している。
◆板橋区選挙区
都民ファーストの会に所属していた木下富美子・元都議が無免許運転事故の不祥事で辞職したことに伴う。
自民党は2017年都議選で落選した河野雄紀・元都議を擁立。
都民ファーストの会の渡辺義輝・元区議は、区議時代は立憲民主党に所属していた。
共産党の竹内愛区議は2003年区議選では初出馬でトップ当選という実績もある。
維新の会は26歳の津田郁也候補を立てた。
◆足立区選挙区
自民党の高島直樹・都連幹事長が2023年10月2日に亡くなったことに伴う。
自民党はピアノ講師の榎本二実子候補を擁立。
立憲民主党の銀川裕依子区議は美人議員としても知られ、過去2回区議選でトップ当選。2017年都議選で落選した経験がある。
◆八王子市選挙区
自民党の西山賢都議が2022年8月18日に45歳の若さで亡くなったことに伴い実施される。
自民党の馬場貴大市議と、前回落選した滝田泰彦・元都議の一騎討ち。
滝田元都議は都民ファーストの会を離党しており、今回は「新時代の八王子」公認で出馬する。昨年の市長選では次点につけていた。
◆府中市選挙区
自民党の鈴木錦治都議が2023年6月18日に亡くなったことに伴い実施される。
自民党は増山明香市議を擁立。
また、昨年の府中市長選で落選した甲田直己候補も立候補。共産党と緑の党グリーンズジャパンが支援する他、立憲民主党の鈴木烈都議らも応援している。
その他、篠原恵子候補が立候補している。完全無所属の30歳の若い候補者だ。
◆南多摩選挙区(多摩市・稲城市)〉
都民ファーストの会の石川良一元議長が6月16日に急逝したことに伴い実施される。
都民ファーストの会は遠藤千尋・多摩市議を擁立。もともとはみんなの党で市議初当選。その後民主党系会派にいたかと思えば、自民党会派に移っている。2022年多摩市長選では東京維新の会推薦で次点で落選。23年市議選で返り咲いたと思ったら、都民ファーストの会に入って都議選出馬と忙しない。
一方、立憲民主党は岩永久佳・多摩市議を擁立。多摩市議会では会派「フェアな市政」に所属。市議選では3回連続2位当選している。
また、無所属で三井健候補が立候補。2019年多摩市議選に自民党推薦で次点。2022年市議補選でも次点だった。2023年市議選は東京新党16の公認で立候補したが及ばなかった。
もともと南多摩の議席は元稲城市長の石川良一都議が有していた。ところが、3人の候補者はいずれも多摩市在住。もう1人の現職、小礒明都議(自民党)も多摩市を地盤としている。結果がどうあれ、今後稲城市側から不満が起きないか心配である。
◆都議会議員補欠選挙開票結果
7月7日、都議会議員補欠選挙は東京都都知事選挙と同時に投開票された。都知事選は20時の投票終了と同時に「ゼロ打ち」で小池百合子都知事に当確が出る。その一方、都議補選は接戦が多く、なかなか結果が確定しなかった。
◆江東区選挙区結果
無所属の三戸安弥・元区議が初勝利を決めた。
そのため、山崎一樹・元都議の返り咲きはならなかった。江東区では秋元司元代議士、柿澤未途元代議士、木村弥生前区長と、自民党の不祥事が相次いでおり、自民党への不信感がまだ残っていたといえるのではないか。
木村前区長の甥の高橋巧候補もやはり振るわなかった。
◆品川区選挙区結果
森沢恭子区長の秘書の篠原里佳候補が勝利した。
◆中野区選挙区結果
都民ファーストの会の荒木千陽・元代表が返り咲きを果たした。
◆北区選挙区結果
区長選で次点だった都民ファーストの会の駒崎美紀・元区議が当選を決めた。
◆板橋区選挙区結果
河野雄紀・元都議が7年ぶりに返り咲きとなった。共産党の竹内愛・前区議が次点。渡辺義輝・元区議が最下位だったのは、まだまだ都民ファーストの会への不信感が強いということを示している。
◆足立区選挙区結果
立憲民主党の銀川裕依子・前区議が自民党の榎本二実子候補を下した。足立区というと、自民党の鴨下一郎・元都連会長の地元で、東京13区でもこのところ自民党の候補がずっと勝っている。にも関わらず、銀川候補の勝利となった。
◆八王子市選挙区
滝田泰彦・元都議が大差で勝利し、返り咲きを果たした。八王子市は自民党の萩生田光一・前都連会長の地元であるが、ここまで大差がつくとは予想もしていなかった。裏金問題は想像以上に根が深い。
◆府中市選挙区
自民党の増山明香・前市議が勝利。次点だったのが、市長選にも出ていた甲田直己候補ではなく、“完成無所属”を標榜する篠原恵子候補だったのは驚きだった。
◆南多摩選挙区(多摩市・稲城市)結果
自民党が候補者擁立を控える中、都民ファーストの会の遠藤千尋・前多摩市議が、立憲民主党の岩永久佳・前多摩市議に競り勝った。
◆都議補選総括
今回の都知事選、自民党は南多摩を除く8つの選挙区に候補者を立てていたが、当選したのは板橋区と府中市のみだった。江東区、北区、足立区、八王子市はもともと自民党の議席であったのだが、取り返すことは出来なかった。自民党に対する逆風はまだまだちっとも収まっていないことが分かる。
かと言って野党第一党の立憲民主党も足立区の銀川裕依子・前区議が勝ったのみであり、決して風が吹いたわけではない。共産党、維新の会も議席を得られず、むしろ既成政党に対する不信感が強かったようだ。
その一方で、都民ファーストの会が中野区、北区、南多摩で勝利。また、諸派・無所属の候補も江東区、品川区、八王子市で勝利している。
その結果、都議会の主な会派の議席数は次の通りとなった。
三戸安弥都議は予想通り、支援を受けていた上田令子都議の自由を守る会に入った。自由を守る会は上田令子都議と合わせて2議席となった。篠原里佳都議は「東京・品川からやさしい未来を」、滝田泰彦都議は「新時代の八王子」を立ち上げた。都議会でありながら、地域を前面に押し出した会派である。
都議補選があったばかりだが、早くも来年には都議選が控えている。今回、破れた候補も再起を期してくるだろう。早くも選挙戦は始まっている。
また、近いとされる解散総選挙、来夏の参議院議員選挙にもこの結果は影響を及ぼすだろう。各党ともしっかりと結果を反省して、次の選挙につなげて欲しい。