2022年西東京市議会議員選挙レポート
西東京市議会議員選挙が12月18日告示され、25日の投票に向けて選挙戦が繰り広げられた。定数28に40人が立候補するという激戦となった。
西東京市議選については前回2018年にもウォッチしているが、前回はわずか33人しか立候補していなかった。今回はそれよりも7名も候補者数が増えている。
西東京市は昨年の市長選長もわずかながらウォッチしており、比較的継続して調査出来ているのではないか。
◆西東京市議選立候補者
西東京市議会議員選挙に立候補しているのは次の40人。
現有議席は自民党10、公明党5、共産党4、立憲民主党2、生活者ネットワーク2、無所属4。立候補したのは自民党9、公明党5、立憲民主党4、共産党4、維新の会1、国民民主党1、参政党1、生活者ネットワーク2、諸派4、無所属10となっている。
自民党の現有議席は10。4年前は9議席獲得で、その後NHKから国民を守る党の冨永雄二市議が加わっている。今回は引退する遠藤源太郎市議を除く現職9名が立候補した。
公明党と共産党はそれぞれ現有議席と同じ人数を立てている。
立憲民主党は現有議席の倍となる4名を立てた。
西東京・生活者ネットワークは現職2人が引き続き立候補。
前回公認と推薦の現職が共倒れに終わった国民民主党は1名に絞った。
前回国民民主党と希望の党推薦で落選した山崎英昭・元市議は今回は日本維新の会から立候補している。
参院選で議席を獲得し勢いに乗る参政党も候補者を立てている。
前回はNHKから国民を守る党(現・NHK党)の冨永雄二市議が最下位で当選したが、その後離党し今回は自民党からの立候補となった。
その代わり、NHK党は諸派党構想の一環として「政治家女子48党」を立ち上げ3人を擁立している。
NHK党はもともとは参院選大阪選挙区から立候補した経験のある丸吉孝文候補を擁立する予定であったが、政治家女子48党の立ち上げによって丸吉候補は事実上選挙戦から撤退。立候補者したものの党の知名度を高めることに徹するようだ。選挙公報も提出せず、ポスターにも自身の顔写真は用いていない。
なお、政治家女子48党とは、「歌って踊れる政治家アイドルプロジェクト」で、来年の統一地方選挙後に当選者の中から48名の選抜メンバーを選び武道館でライブを行なうのだという。とてもではないが48名も当選するとは思えないのだが、まったくもってふざけている。なお、候補者の1人朝日恵子候補は、「CANDY。」の芸名で歌手としても活動しているそうである。
この政治家女子48党を始めとして、西東京市議選の候補者にはなんともカオスな顔ぶれが並んでいるのだ。
その筆頭が長井秀和候補。
2000年代に「間違いない!」の決め台詞でブレイクしたお笑い芸人。創価大学出身で、父親も元公明党武蔵村山市議であるのだが、公明党ではなく無所属で立候補。なんでも2012年に創価学会を脱会しており、現在は創価学会批判を繰り広げている。Twitterでも盛んに創価学会批判をぶちまけているのだが、市議として何をしたいのか今一つ見えてこない。芸能人として知名度があり、「芸能人を呼んできて西東京市を盛り上げる。私ならできる。」と演説していたそうなのだがら応援演説にかけつけた弁士というのがなんとも一癖も二癖もある人物ばかり。
例えば、黒川敦彦・つばさの党代表、難病アイドルで政治家女子48党代表でもある夏目亜希・荒川区議、スマイル党の込山洋氏、「中年東大生?政治家をめざす」の著者・猪野隆氏、明大の替え玉受験で話題となったタレントなべやかん、大川隆法・幸福の科学総裁の長男で「カルト宗教から国民を守る党」代表の宏洋氏…。
彼のTwitterを眺めていて気になった点が1つある。話題の候補だけにTwitterには応援、批判のコメントがたくさんついているのだが、彼はそれらに対して一切返信を返していないのである。もちろん、そのような義務は一切ないのではあるが、これでは例え当選しても一方的に言いたいことを言うだけで有権者の耳に声を貸さないのではないかと思ってしまう。
しまぞうZ候補はお笑いコンビ「キャベツ確認中」のメンバー。錦織圭の物真似を得意としているそうだ。
ザ・シャーク候補は覆面プロレスラー。サメのマスクがトレードマークだという。地域政党「東京新党16」が支援しているが、同党は統一地方選で北区長選に立候補する元光GENJIの大沢樹生氏も支援しているとのこと。
「地域政党西東京」の矢野幸介代表。彼も本職は舞踏家で演歌歌手だという。
もちろん色物であろうと芸能人崩れであろうと地域のために尽くしてくれるのであれば私は何も文句は言わないつもりである。
◆西東京市議選ウォッチ
西東京市議選をウォッチに出かけた。西東京市は2001年に田無市と保谷市が合併して誕生した自治体であり、ターミナル駅としては西武池袋線保谷駅と西武新宿線田無駅の2つがある。その2つの駅が直接鉄道で結ばれていないという不便さもあるのだが、今回は主に田無駅周辺を歩いてみた。
田無駅北口で降りると、ちょうど参政党の五十嵐将雄候補が街宣中であった。しばらく見ていたのだが、彼はずっと背を向けたまま壁に向かって話していてまったくこっちを見ようとしない。
思わず「どこ見て話してるんだよ。」と言ったところ、すぐにスタッフが「ロータリーに向けて話してますよ。」と答えてくれた。
しかしロータリーは車道を挿んだ先にあり、そこからだと五十嵐候補の姿は小さくしか見えない。通行人は圧倒的に駅側の方が多いというのに、いったい何を考えているのだろう。
Twitterを見ると、五十嵐候補ら参政党の候補者はNHK党の関係者からたびたび妨害を受けているようだ。参政党本部がNHK党との対話を拒否したことから、参政党の候補者は一方に妨害を受けるだけになっているとのこと。なるほど、それでナーバスになっているのだろう。批判的なことを言ってしまったので私もNHK党関係者と誤解されてしまったかもしれない。
同じ場所では別の日には政治家女子48党の朝日恵子候補が街宣をしていた。朝日候補は「CANDY。」の芸名で歌手活動も行なっている。五十嵐候補とは対照的に、通行人にも積極的に声をかける。写真を撮っていたら、「一緒に撮りませんか?」とサービス精神も満点。
そこに無所属の長井秀和候補の街宣車がやって来た。朝日候補が長井候補に駆けつけるなど、両者は和気藹々としている。NHK党の黒川敦彦幹事長が長井候補を応援していることもあって、両者の親和性は高いようだ。
長井候補は朝日候補に「昭和の女子プロレスラーみたいだ」と、下手すればセクハラともとられかねない冗談を飛ばす。そして「♪ビューティーペアー」と歌う。朝日候補もそれに合わせて踊るなど、とても選挙活動とは思えない。
長井候補と共に現れたのは黒川敦彦・つばさの党代表(NHK党幹事長)と、俳優の宏洋氏。宏洋氏は、大川隆法・幸福の科学総裁の長男で、「カルト宗教から国民を守る党」を結成し来年の統一地方選の渋谷区議選に出馬する。3者の街宣が始まった。
しばらく聞いていたが、冗談交じりで幸福の科学や創価学会といったカルト宗教への批判を繰り広げるばかりで、肝心の西東京市政についてはまったく語らない。
その後場所を移動。パチンコ屋の前で延々と下ネタを披露している。宏洋氏に父・隆法総裁のナニの大きさを聞いたりと、あまりに内容が下品すぎる。お笑いのトークライブだとしてもこれはないのでは? ましてやここは往来のど真ん中。これを聞いた通行人は引いてしまうのではないか…。こんな人当選させてしまうと、西東京市民の品性が疑われかねない。
おや、聴衆の中に見たことのある顔が。
都知事選や総選挙にも出馬していた押越清悦・目覚めよ日本党代表であった。彼は創価学会による集団ストーカー被害を訴えていたので、長井候補とは共通するところがあるのだろう。
他にも田無駅前には、サメのマスクの覆面レスラーでもあるザ・シャーク候補や、もう一人の政治家女子48党の織田三枝候補の姿もあった。
それにしても田無駅前は色物系の候補者ばかりである。とある人が指摘していたが、田無駅北口には自己顕示欲の強い候補者ばかりが集まってしまうのだそうだ。
そこで南口へ行ってみた。すると、自民党の坂井和彦市議が静かに演説していた。坂井候補は前回は無所属で当選している。
また、8回当選のベテラン、小峰和美・元市議会議長が通行人に挨拶をしていた。私がカメラを向けると「いい顔に撮ってくださいね」と冗談を飛ばす。
このようにちょっと歩くだけで多くの候補者に実際に会うことが出来た。
◆西東京市議選当落予想
西東京市議会議員選挙の当落を予想してみた。定数は28。立候補している40人のうち12人が落ちる激戦だ。
記号は○が有力、△がやや有利、▲がやや苦戦である。
立候補者の内訳は現職22、元職1、新人17であるが、やはり現職が有力である。
しかし自民党の現職9人のうち1人ぐらい取りこぼしがあるのではないかと予想する。その場合落ちるのはNHKから国民を守る党から移籍した冨永雄二市議だろう。今回系列政党の政治家女子48党から3人も刺客が立てられた形となっているし、こうした変節漢には有権者は厳しい。
一方の立憲民主党は1議席上乗せ。現職2人が有力で、残り1つは女性の菅原美穂候補と予想。
公明党は手堅く全員当選。
共産党は現職2人は当選するが、新人2人のうちどちらかを落として1減となる。八巻明美候補のほうが羽根石里美候補より有利と予想しているのは、八巻候補の前任者の保谷清子市議の方が、羽根石候補の前任者・藤岡智明候補よりも前回得票が多かったことによる。
生活者ネットワークは2人とも当選。
日本維新の会に移籍した山崎英昭・元市議が返り咲く。
無所属では現職の納田里織市議、小峰和美市議が有力。また、前回トップ当選で今回は引退する森輝雄市議は、田村広行市議、山口あずさ候補、丹治日子太候補の3名を後継として支援している。このうち現職の田村市議も有力である。ただ、3議席獲得は厳しいと予想。新人では山口候補がやや有力。丹治候補は前回最下位であったこともあり、今回も苦しいかと思われる。
残り2議席が激戦となるが、国民民主党の鈴木佑馬候補と、参政党の五十嵐将雄候補が入るのではないか。
長井秀和候補、しまぞうZ候補、ザ・シャーク候補、政党女子48党といった色物系の候補者は全員議席に届かず、西東京市民の品性は守られそうである。
なお、一部の候補者が投票用紙を撮影してSNSに投稿することを奨励しているが、これは秘密投票の原則に違反しているし、公職選挙法に抵触する可能性もある。そのようなことは控えて頂きたい。
政党別の予想は次の通り。
もちろん私は選挙の専門家でない。西東京市の状況にも明るいというわけではない。外れてもともとだと考えている。こうした予想などを立てながら結果を待つというのも、選挙の楽しみ方の1つだろう。
◆西東京市議選開票結果
12月25日、西東京市議会議員選挙が行なわれ、即日開票された。投票率は38.66%で、前回の36.84%を上回った。
開票結果は次の通り。
党派別の当選人数は次の通りとなる
。
トップ当選したのは長井秀和候補で、2位以下に大差をつける圧勝となった。Twitterで見る限り、選挙戦の1年以上前から街頭に立つなど地道な活動をしてきていた。その辺りが有権者に評価されたのだろう。しかし、創価学会批判と下ネタばかりの外宣を見ているので、正直市議としてどれだけ仕事が出来るのか不安しかない。今後はどこまで市民に寄り添えるかが問われるところだ。
2位には田村広行市議が入った。前回より得票をほぼ倍増させている。もとももの支持に加え、森輝男市議の後継ということがプラスに働いたのだろうか。しかしながら、森市議の後継の他の2候補は議席に届かなかった。
自民党は9人中8人が当選。現有議席より2減となった。前回NHKから国民を守る党で当選した冨永雄二市議は、前回より票を増やして再選。田中慶明市議が涙を飲んだ。このところNHK党は地方選挙で低迷が続いていることもあり、今後ますますNHK党から他党への移籍の動きが増えてくるのではないだろうか。
公明党と生活者ネットワークは全員当選で、議席を守った。
立憲民主党も4人の候補者が全員当選で、議席の倍増に成功。
その一方で共産党が議席を1つ減らした。
国民民主党から日本維新の会に移籍した山崎英昭・元市議が返り咲き。
国民民主党の鈴木佑馬候補も上位で当選した。
参政党の五十嵐将雄候補は最下位に11票足りない次点で落選。参政党はこのところ地方選10連勝を果たしていたが、ここでいったんストップとなった。NHK党はこのところ参政党への批判を強めており、五十嵐候補もしばしば選挙妨害にあっていた。確かに妨害の影響はあったのかもしれない。NHK党の黒川敦彦幹事長もTwitterで、これを自分たちの落選運動の成果であったとアピールしている。
しかし、NHK党が擁立した政治家女子48党の候補者3名はいずれも惨敗に終わっている。織田三江候補153票、朝日恵子候補96票(写真下)、丸吉孝文候補14票と、いずれも供託金没収。参政党の追い落としに成功したからといってこれではまったく喜べないのではないか。
政治家女子48党代表の夏目亜希・荒川区議が投票日当日にのんきに犬との写真をあげていたことに批判が集まった。党首でありながらまるで選挙に関心がないかのよう。
批判に対する答えが、「そもそも勝つための選挙じゃないって立花さんいってますよ」。
立花さんとは、政治家女子48党の設立に関わったNHK党の立花孝志党首。第三者の意見にただ流されているというところに党首の自覚も何もない。いや、勝つつもりもなく候補者を立てるという行為は選挙を冒涜し有権者を侮辱していることだということがわかっていない。少なくとも西東京市民にそう思われたことが政治家女子48党の惨敗の最大の要因だったのだろう。政治家女子48党は当選した議員から48人を選抜して武道館でライブを行なうつもりだというが、出だしからこれではとてもではないが48人も当選者を出すことは出来ないだろう。
実質的に選挙戦を行わなかった丸吉孝文候補を除くと、最下位は保谷美智夫候補の87票。昨年の市長選にも出ていて知名度はあるはずだが、まったく振るわなかった。
話題の候補者では芸人のしまぞうZ候補、プロレスラーのザ・シャーク候補は共に落選だった。
◆西東京市議会総括
今回の西東京市議選、私が落選と予想を立てていた長井秀和候補がトップ当選というのは驚きであった。残念ながら私の予想の甘さだったと言わざるを得ない。しかしながら顔ぶれはともかく人数だけで言えば、立憲民主党が1議席多かった点と参政党の落選以外は予想通りだった。それだけ地方選挙というのは波乱も少なく番狂わせもないということなのかもしれない。
そう考えると、長井候補のトップ当選はそれこそ快挙であったのだ。長井候補らいわゆる色物候補の乱立で、西東京市議選に注目が集まったのは確かである。だからこそ当選した議員たちには今後も市のために頑張ってもらわなければならない。我々もこれから引き続き西東京市議会に注目していく必要がある。
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