33歳人妻が16歳の少年に恋した話 81 いい恋してたんだ

彼が派閥に加入してから様子がおかしくなった件について話すことにした。

「学長、彼が某スポーツチームを応援していることはご存知ですか」

そう聞くと、学長は

「ええ。彼は学校でよくその話をしていますからね。
去年はあの子の作った旗が流行ったか何かで、好きな人ができたと言っていましたね。かわいくてとても素敵な人なんだってよく友達に自慢しているのを聞きました」

と、ニコニコしながら話した。

「そ、そうなんですね…」

とだけ返し、何も言えずにいた。

彼、学校で私の自慢をしていたのか。
学長の話す感じを聞くに、好きな人が既婚者だということは隠していたようだ。

嬉しかったと同時に、彼が一体どんな気持ちで私の話をしていたのかと思うと少し苦しくもなった。

彼の好きな人が私であることは隠しておいた方がいい気がして、何も言えずにいた。

するとマスターが

「学長、フラッグ君の好きな人というのはこの子のことなんだよ」

と言った。

「あなたが?」

学長は目を見開いて私を見た。
明らかに驚いていた。


言うなよ。マスター。

私はめちゃくちゃ焦った。

「ちょっと、言わないでよ」
「もう話した方がいいよ。というか話してほしくて呼んだみたいなところもあるんだから」
「どういうことなの?」

私とマスターが言い合いをしている最中、学長が私にお辞儀してきた。

私はパチパチと瞬きをし、学長を見た。

学長は私に向かって、

「ありがとう」

と言った。

「彼が私の学校に来た頃は、まだ小学生でした。
不登校の真っ只中で暗い顔をして、我々大人ともクラスメイトとも目を合わせようとしない。いつも虚ろな目をしていました。

でも、あのスポーツチームを好きになってからあの子は少しずつ変わっていきました。
表情が明るくなって活発になったしね。生き生きとし始めました。

そんな中、去年好きな人ができたと話し始めてから、明らかに変わったんです。
ものすごく勉強を頑張っていたんですよ。去年の夏頃なんて特に、グンと成績が上がってね。
好きな人のためにと言って、勉強以外の活動も全力で頑張っていました。
彼が初めて恋した人は、とても素敵な方なのだろうと思っていました。

そうか。あなただったんですね。ありがとう」

ありがとう、と言われた瞬間涙が出た。

彼は私をたくさん変えてくれた。
私にとって彼との出会いはとてもいいものだった。

その一方で、彼にとって人妻である私との出会いはいいものだったのかとずっと不安だった。

しかし学長の話を聞いてわかった。
彼も私によってたくさん変わっていたんだ。

許される関係ではなかったけど、お互い高め合えるいい関係性ではあったのだ。
それだけで報われたような、救われたような気分だった。

その後、彼が加入した派閥の件を全て話した。

学長は彼のやらかしに相当衝撃を受けたようで終始困った顔をしていたが、なんとか彼を説得するように務めると言い、帰って行った。

マスターと2人きりになった。

マスターは

「彼のために我々大人にできることはここまでだ。
彼にとってもあのこちゃんにとっても、恋したことはいいことだった。しかし今はもう違うよ。
あとは学長に任せて、彼が幸せに生きることを遠くから願うだけ。
もうあの子への恋心は今日で断ち切りなさい」

と言った。

悲しいけど、認めざるを得なかった。

私は半分泣きながら、マスターの目を見て黙って頷いた。

続く

関係ないけど今日は春物を買いに行った。予算30000円に設定したのに60000円遣った。本当にどうしようもない。

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