33歳人妻が16歳の少年に恋した話 80 マスターと学長

2023年、3月中旬。

とある週末、私はバスに乗ってマスターのカフェへと向かっていた。

話したいこととは何だろう。

マスターからわざわざお店に呼ばれるなんて初めてだったので、ちょっと怖かった。
話したいことというのが何か見当もつかなかったので、尚更怖かった。

しかし、心の中ではどこか期待している自分もいた。
もしかしたら、彼がお店にいたりして、と。

彼がマスターに私とのことを相談して、気にかけてくれたマスターが仲直りさせてくれようと場を設けてくれてたりして。

そんな淡い期待を抱きながらバスに揺られた。

マスターのお店に着いた。

開店直後だがあからさまに照明が暗く、いつもに増して入りづらい空気が漂っていた。
後から聞いたところ、私以外のお客さんが入って来られないようにと、マスターなりに考えた結果だったという。
(いっそのことCLOSEDの看板でも出しておけばよかったのでは?と言ったが、マスター曰くそれは違うらしい)

恐る恐るお店に入ってみると、いつも私が座っているカウンター席にマスターと同年代ぐらいの男性が座っていた。
フラッグ君ではなかった。残念。

男性はお年こそ召しているが、綺麗な身なりをしており、言葉を選ばない言い方をするならば、かなりお金を持っている人のように見えた。

戸惑いながらもとりあえず一礼すると、その男性は立ち上がってこちらに深々とお辞儀してきた。
知らないお上品な男性に突然お辞儀をされ、ギョッとした。

マスターがカウンターからひょこっと顔を出した。

「おはようあのこちゃん。ありがとね」
「マスター、こちらの男性は…?」
「フラッグくんが通うフリースクールの学長。今日は彼からあのこちゃんに相談というか、聞きたいことがあってね」
「初めまして」
「初めまして…あのこと申します」

彼の学校の学長が私に相談?
どういうことなのかさっぱりわからなかった。

マスターに促され、学長の隣の椅子に座った。
マスターが私と学長にコーヒーを出してくれた。

「あのこちゃん。早速だけど」

私はなぜか心臓が跳ねた。
何を話されるのだろう。

「フラッグ君の様子が最近おかしいらしいんだ」
「え?どういうことですか?」
「学校で過剰に暴言を吐いたり、自分には大人の友達がたくさんいるから、と言って自ら友達を遠ざけて孤立したり。ここ最近は何日も学校をサボるようになっているんです。何か知りませんか」

思いっきり心当たりがあった。
完全に派閥の影響だ。

あの後も彼は派閥の大人たちとあらゆる試合会場で暴れ、その度にSNSに晒されて炎上していた。
試合前に被災地の方に向けて黙祷する時間に、派閥の人間と大声で歌っていたりもした。

また、平日に試合がある日は学校があっても休んで試合に行き(その旨を必ずツイートしていた)、派閥の人間と暴れていた。

学校の先生にはそんな話一切していないのだろう。

勝手に話していいものか迷ったが、このまま学校を蔑ろにして派閥の人間とばかり過ごしていたら彼の将来は危ない気がした。
とても勝手だけど。

私は彼のことを学長に話すことにした。

続く

関係ないけど、R-1とENGEIが面白くて執筆がなかなか進まなかった。やっぱりお笑いが好き。今年もたくさんライブに行けたらいいな。

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