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タチバナの頑張り

女子校に入学して間もなく、
仲良くなった5人組で初めて遊ぶことになった。

「タチバナ」の家にお邪魔した。
タチバナは、長身でスタイル抜群。黒髪ロングヘアの清楚な雰囲気の中に、子犬とリスを足したような可愛さがある子だ。
部屋もきれいで真面目さが伝わってくる。

一緒に行ったのは、自分のことをボクと呼ぶタイプの美少女「ボク」と、東京から引っ越してきた派手めな「マキちゃん」、そして横顔があまりに男前なテニス部の「エイサク」(吉田栄作からきている)。

お菓子を食べながら、いつの間にか「ここだけの話」トークタイムとなった。
大っぴらには言えない自分の闇を明かし、5人の絆を深めたかったんだと思う。高一だけど厨二こじらせてた。

口火を切ったのはボク。
祖母の嫁いびりがひどく、夫も盾にならず、ボクの母親が出てってしまったという話だった。いつも笑ってるボクが涙をこぼしている。
みんなももらい泣きだ。

私の番。内心焦った。母子家庭で貧乏だったけど、不幸という認識は薄かったから。
とはいえ多分こういう感じかな…?と、母子家庭の苦労話をいくつか語ってごまかした。
みんなはさっきの雰囲気で「大変だったんだね…」と言ってくれた。なんとかセーフ。

エイサクの番になると、彼女はおいおい泣きながら「実は一家で夜逃げしてきた」と言った。ガチな告白に場はずんと重くなった。

マキちゃんはもっとヘビーだった。
義父に暴行を受けてきたこと、彼氏と無理やり引き離されたこと、種違いの妹は可愛いけれど複雑な感情があること、その義父からいま逃げてきているということを明かした。

みんなぐったりするほどもらい泣きした。

最後にタチバナが鼻をすすりながら言った。
「お母さんが…スクールメイツになりたくて…なれなかった…」


ないなら入るなよ。
(人のことは言えないが)


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