富岳とて
フレッドは、ドがつくエリートである。
ハーバード大卒で、有名外資企業勤務の高給取り。
日本語も流暢で、漢検は準1級受験するレベルだという(合否は知らない)。
長身で顔面もイケてるコケージョンなので、とくに日本人女性からモテモテだけど奥さん一筋の人格者。
奥さんの家族も自分の家族も大事にするし、季節ごとに寄付もする。
スポーツもボードゲームも得意で、料理も上手。
何をやらせてもすぐコツをつかんでしまうので、フレッドの奥さんは「人じゃない生き物」と言っていたし、私は「(スパコン)富岳」と呼んでいた。
リアル出来杉くん。
私は奥さんと仲が良かったのでよく家にお邪魔していたのだけれど、
ホームパーティーのときは、ビル・ゲイツみたいな雰囲気のお友達もチラチラ来ていた。
(「I LOVE MATH」というTシャツを着てきた瓶底メガネの人には「hey! いかにもすぎるぞ!」と爆笑ののちハグをしたことがあるが、ほんとに数学界隈では有名な学者だったらしい)
それとはまた別の日のホームパーティーでのできごと。
フレッドが改まった感じで言い出した。
「僕、昔からわからないことがあるんだよ…」
ゆるっとした空気を残しながらも、全員が彼に注目した。
するとフレッドは十分なスペースを確認してから、両脚でジャンプをしながら腕を横にあげてみせた。
ラジオ体操第2に出てくるやつ?
「これと、」(ジャンプしながら、脚を開くタイミングで腕を横にあげる)
「これ」(ジャンプしながら、脚を閉じるタイミングで腕を横にあげる)
「どっちが正しいのかな?」
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ナレーターをやっているといういい声の男性が、全員の気持ちを代弁してくれた。
「whatever」
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