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すぐには気づかなかった、やんわりと人種差別をされた話。

それはオーストリア航空、ウィーン発アムステルダム行きの機内で起こった。
成田から14時間のフライトののち、パスポート検査、手荷物検査を通過し、ゲートで数十分待ってやっと搭乗し、荷物を無事コンパートメントに収納、着席してやれやれ、と思っていた矢先に。

私の席は7C。通路側。隣のAとBの席では中年のカップルが恋人つなぎに手を握り合っていた。その女性の方が話しかけてくる。「あなた、前の席に移ってくれたら私たち、もっとゆったり座れるのだけど」、と。前の列はBとCが空いている。でも、何で私が移動しなけりゃならないの?今やっと落ち着いたところで、第一すごく疲れているし。と、心の中で答えを出し、「いいえ、私はこの自分の席を変えることはしたくありません。ご自分で移ったらどうですか?」と返事をした。

そうして数分が経ち、あれ、何かがおかしいぞ、と気がついた。この2人、私が隣からいなくなってもきっと今と同じように2人仲良く手を握り合って窓側に座っていたに違いない。Cが空席になったとしても彼らのスペースが増えるということはない。あるとしたら女性と私の間の肘掛けがフリーになることぐらいだ。ということは、あれは私を追い払う口実だった?

もしも私がアジア人の様相を呈していなかったら、もしも私が白人の男性、または女性だったら、彼らは同じように訊いてきただろうか。私はかなりの確信を持って、否と言える。あれは本人たちも気づかない、やんわりとした人種差別だったのだ。

ヨーロッパには、特にオランダにはこんなことは日常茶飯事。でもいざ自分の身に起こると不快な思いは拭えない。

話は変わって、成田からウィーンへ向かう飛行機の中で、White Lotusシーズン2のエピソード1〜4を見た。シーズン1はハワイだった。2はシチリアのタオルミナが舞台。私も2回行ったことがある。タオルミナは娼婦のような艶やかさと魅力のある町、と辻邦夫さんが書いていた記憶がある。このドラマにうってつけのロケーションだ。続きを見るためにはHBOの試聴も申し込まないと。


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