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あなたが想い出すことのいくつかに。

学校帰り。

夕焼けに染まりながら並んで歩くふたり。
私はその後ろを歩きながら、あっという間だなーと想う。

つい何年か前に産まれたばかりなのにな。

こんなにもすらっと手足が伸びて。
生意気で。
可愛いくて。
素直な気持ちで大人のエゴを訂する強さがあって。
我儘や甘えはどれだけ許されるのか、それは自分たちへの愛情なのか、クリスマスプレゼントの予算と比例するのか、という議題をひとつのベッドに持ち込んで、結局頭をくっつけ合って寝落ちして。
仕事ばかりの夫と私を励ましたり、労ったり、そうかと思えばもっと一緒にいたいと泣き出したり。

愛してるよ、と言えば。
知ってるよ、僕も私もパパとママを愛してるよ、と返す。

てらいなく優しいんだね。 
胸が痛くなるくらいに愛しいよ。


寝返りできたね。
歯が生えたよ。
つかまり立ちしたね。
今日初めて歩いたよ。
離乳食を食べたよ。

全部ついこの前なのにな。

あっという間だよ。

ねぇ。思春期になっても、ママと仲良くしてね。
親友ができたら。
恋人ができたら。
いつでも我が家に連れておいで。
ママはいつだってごはんをたくさん作って迎えるよ。

ひとりでお腹が空いたら、ママがよく作るパスタやチャーハンを作ってごらん。
きっと美味しくできるから。

私がそう言うと、ママそんなのまだまだ先だよ、と子供たちは呆れたように笑うけれど。

分かったよママ、思春期がきてもママと仲良くするね、家を出てもママのごはん食べたくなったらすぐに帰るね、でも自分で作るときは美味しくできるか分からないよ、だからママ、ちゃんとレシピ教えてね。

そうだね、野菜の切り方もお出汁のとり方も、ちゃんと教えておかないとね。

大きくなったあなたがママの作っていた味をもとにお料理をするとき。

なにを想うのかな。

ねぇ、なにか想い出したりするかもしれないね。
そんな日が訪れたとして。
あなたが想い出すことのいくつかに。


テーブルに並ぶみんなの大好物や旬の果物。

毛布にくるまって家族で夜更かしして観たディズニー映画。

自転車の補助輪が取れて誇らし気にぐんぐん走る君を、カメラを持ってずっと追いかけていたパパ。

あれはサンタクロースのおうちに繋がっているマイクだよと教えられ、背伸びしてプレゼントのリクエストを伝えていた家の天井の火災報知器。

泣いても笑っても、どんなときも必ずぎゅっと抱きしめられた温もり。

自分はちゃんと愛されていたという記憶があればいい。


今日も明日も幸せであるように。
重ねていく毎日に願いを込めて。

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