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豊島竜王から見た藤井二冠

朝日杯準々決勝で藤井二冠はこれまで6連敗していた豊島竜王に初めて勝利を収めました。ファンとしてはようやく高い、高い、壁を超え、大きな、大きな、重しが取れたような気分でホッとしています。

今回の勝利から逆に「豊島流」対藤井二冠の見方が分かってきました。これまで盤面では接戦が続いてましたが最終的には豊島竜王に屈していましたので、底が見えなかったんです。どこまで研究されているのか、何を豊島竜王が掴んでいるのか、あれこれソフトを駆使して豊島竜王の対藤井戦と対他の棋士戦とを比較検討しましたがどうも今一つこれだ!と言う解を発見出来ませんでした。以下、あくまで個人的は推論の域を出ませんが述べてみます。

まず、朝日杯準々決勝を戦う両者の当日の状態はどうだったのか?

豊島竜王はこれまで朝日杯では結果を残しておらず、持ち時間40分+1分将棋は藤井二冠の戦績から比べると若干苦手の部分があるのかなと思っていました。しかし一回戦で飯島七段得意の横歩取りを時間をほとんど使うことなく一方的に破っていますので、調子は上々と判断しました。
藤井二冠は後手番で大石七段の中飛車に対して作戦が成功し、一気に押し切るかと思われましたが中盤から終盤にかけて少し評価値が戻る場面がありました。でも最後は無難に勝利しましたので、これまでの朝日杯のような圧勝ペースではありませんでしたが調子はまずまずかなと。

振り駒の結果は豊島竜王の先手で両者得意の角換わり戦法になりました。豊島竜王にとって短時間の持ち時間の将棋で先手を握れたのは極めて大きいと思ったはずです。
では、実戦の流れに応じて豊島竜王の対藤井二冠戦略を分析してみることにします。

1.藤井神話を信用しない

序盤で藤井二冠が豊島竜王の腰掛銀に早繰り銀で対抗し、後手番であるにも関わらずほとんど時間も使わずに早仕掛けを決断しました。豊島竜王はこれは藤井二冠の研究手順であろうと推測し、まともに攻め合うのはまずいと判断され、それを外すように腰掛けた銀を敢えて引いて受けに回りました。

藤井二冠には、「圧倒的な終盤力があるので、序盤中盤で相当リードを広げておいて、かつ時間を余して終盤に入らないと勝てない。」とよく言われています。事実そのような展開で負けている将棋もあるので今や対藤井定跡?となっている感があります。

しかし、豊島竜王はそれを鵜呑みにはしてはいない様子です。確かに展開的にはそれがベストで、以前の対局で勝ってもいます。詰むか?詰まないか?の局面まで行けば藤井二冠の詰将棋の力は侮れないが、その直前まで五分か若干不利でも勝つチャンスは十分あると思っておられるようです。

2.豊島竜王と藤井二冠の将棋は似ている

同じ居飛車党でソフトを活用して研究している。ソフトで両者の棋譜を比較しても相似性は極めて高い。同じ愛知県出身(あまり将棋とは関係ないかも・・・?(^_^;)しかし、関西所属で若いころから知っている。
つまり、豊島竜王にして見れば、同型の棋士の成長が手に取るように分かる先輩棋士の立場となります。

少なくとも関東の棋士が抱く「化け物、怪物、異質」感は皆無でしょう。

ただ、成長度を正確に理解できるので豊島竜王と藤井二冠の実力差が今年度に入ってから急速に接近、肉迫されていることも痛いほど分かっています。

3.豊島竜王のネックだった部分を未だ藤井二冠も克服してない

ソフトの研究が進めば進むほど、中盤の出口から終盤にかけて氷山の裂け目が出来る傾向にあります。豊島竜王も何度もその裂け目に落ちて、渡辺名人や他の強豪棋士に苦杯を喫した経験があります。

棋力差が少ないほど、拮抗した局面が続けば続くほど、裂け目は深くなると言うか、相手がそう誘導するからとも・・・。逆に棋力差が大きければ、終盤以前に大差になるか、相手が先にミスをしてこちらの裂け目が無くなることもあります。

当日局後の感想戦で両対局者に判明したことですが、最終盤に豊島竜王にも勝ち筋があり、それを確認して豊島竜王も一安心された様子でした。

終盤の裂け目の問題は局面が千差万別のためソフトでの研究は難しい。またこの終盤の逆転劇の無い将棋を人間の棋士が指す意味があるのかどうか?

藤井二冠のファンは終盤、時間が無いこともあり、いつもハラハラ、ドキドキしています。ハラハラ、ドキドキさせておいて勝つからファンは一層藤井二冠の将棋に熱狂してしまうのです・・・

今後、豊島・藤井戦はこれまでのような一方的な星の偏りは無くなり、拮抗した結果になるはずです。両者の緊張感たっぷりの熱戦を期待しています。


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