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藤井二冠、揺れる心

7/21,22日王位タイトル戦第三局までの間に両者とも他の対局の予定はありません。しかしその後7/25日叡王戦初戦まで、神戸から東京への移動や前日の対局場検分、インタビューなどを考えると実質中一日で二日制ストップウォッチ8時間から一日制チェスクロック4時間への対応も迫られます。(対局者は同じなので条件は平等ですが・・・)

従って先後が決定している王位戦と振り駒での叡王戦両方の対策を王位戦開始までに検討し決定しておく必要があります。当然王位戦第三局の展開や結果は後の叡王戦に影響するでしょうが、ここは全く別のタイトル戦と割り切って指した方が良い結果を生むと思います。

あるいは、藤井二冠にとっては先手が確定している王位戦だけに絞って対策を研究し叡王戦については先手になったときの戦型だけを決めておき、後手の作戦は相手に合わせてその場で対応するという方針が良いのかも知れません。

いずれにしてもこれまで豊島竜王の序盤、中盤、終盤、隙が無いという定評に一点、終盤にプレッシャーがかかればミスが出易いという、ほとんどの棋士はそうですが、豊島竜王でも弱点といえば弱点と言える突破口があることが分かりました。

奇しくもA級順位戦広瀬戦、今回の王位戦第二局と同じ部分でミスが出て連敗となっています。

これは以前の名人戦で渡辺名人に名人位を奪取された際にも度々見られています。序盤中盤は研究することが出来ますが、終盤力を今さら強化するのは難しい。

豊島竜王としては王位戦一回戦のように作戦勝ちして一気に押し切る将棋を目指してくると思われます。

本来は藤井二冠も序盤、中盤、終盤と形勢を徐々に良くして評価値が有名な「藤井曲線」を描くような勝ち方が理想ではあります。事実次回先手の三局目でこのような勝利が出来れば防衛に大きく近づくことでしょう。

しかし相手は豊島竜王です。そう簡単には勝たせてくれないでしょう。
いったんは藤井二冠が先攻し、そのまま押し切ることができればそのまま・・・、予想される渾身のカウンター攻撃を最小限のダメージで受け止めて、最悪6:4から7:3まで。その後最終パンチを喰らうことなくジリジリとした展開に持ち込み終盤勝負に賭けるのがベストかと。

ここで一番難しいのは攻めと受けの切り替えのタイミングです。

最初から木村九段のように受ければ良いじゃないか?との声もあるでしょうが、豊島竜王の攻めを受け潰すのは難しいでしょう。余程線の細い焦った攻めでない限り・・・

つまり先攻して歩得なり、攻めの起点なりを築いておいて常に反撃の構えを見せておかないと逆に一方的に攻め潰されてしまいます。

第二局の後手5四角打ちから先手6五歩に対して封じ手で藤井二冠の頭には7六歩の攻め合いは全くなく6五同角は必然の手だったのでしょう。つまり5四角打ちの時点で既に受けに切り替えているからです。

その後、豊島竜王に随分攻め込まれポイントを稼がれましたが決め手を与えておりません。いかに藤井二冠にとってその凌ぎが厳しいものだったかは、勝利を確信した96手目3九銀と王手をかけた駒が傾いて升目にかかっていました。着手が震えたのは時間に焦った増田戦以来じゃないでしょうか。

王位戦第一局の駒を取り出す所作が緊張のためぎこちなかった。
そしてこの第二局終盤の手の震え・・・谷川先生は今朝の朝日新聞で藤井二冠の「揺れない心」と書いておられますが、豊島竜王を意識して藤井二冠の心は「揺れていた」のです。

そのような揺れる心同士の勝負だからこそファンは感動するのです。

話を戻しますが、それほど自ら心理的なプレッシャーを感じるような凌ぎに回るからこそ相手にもプレッシャーを与えミスを誘えるわけです。ぎりぎりの勝負なんです。

今後の両者の対局から立ち上る棋士のプライドを賭けた意地と意地のぶつかり合いを楽しみにしたいと思います。

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