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藤井二冠、一刀両断できるか?

将棋の棋士を分類するのに、若手かベテランか?居飛車党か振り飛車党か?攻め将棋か受け将棋か?急戦調か持久戦調か?バランス派か玉を固める派か?とか色々あります。

さて棋士のライフ・スタイルでは「理系研究者肌」と「文系コミュニケーション肌」があるように思います。

理系研究者肌の代表格として、まず豊島竜王、永瀬王座、斎藤八段、千田七段・・・とか、文系コミュ肌の代表格は、渡辺名人、鈴木九段、広瀬八段、黒沢五段、青嶋五段(麻雀の好きな棋士が多い・・・)とかです。

要は将棋一筋、真理追求型が理系研究者肌で文系コミュ肌は趣味や余技が得意の勝負師タイプと言えます。

藤井二冠は将来は分かりませんが今のところは若手を代表する理系研究者肌に分類されるでしょう。(勝負師の素質も充分持っていますが・・・)

将棋界にソフトが導入され、研究者肌の棋士が増える傾向にはあります。いや、事前研究が以前より重視され研究者肌に成らざるを得ない事情が生まれていまず。何時間研究に費やせるか?が勝負に直結する時代に入っているということですね。

そんな風潮の中、謂わば逆風の中で敢えて麻雀や競馬に棋士が時間を使う意味はあるのか?との疑問は当然あります。まして昭和の「飲む、打つ、買う」三拍子揃った豪の者!は棋士ではほぼ全滅状態ですから。

ストイックな棋士全盛時代に趣味や余技をする意味は?

まずは将棋の研究からの気分転換、リラックスは挙げられるでしょう。(「詰将棋が趣味です!」とか言ってる棋士も居ますが・・・)

ここで話は一転。

渡辺王将と永瀬王座の王将戦第二局の激闘をご覧になった方も多いと思います。永瀬王座研究の相掛りで始まり、中盤の出口から終盤にかけて、なんと勝機が両者の間を行ったり来たり、手に汗を握る接戦で最終的には渡辺王将が勝利しました。(現在は渡辺王将がその後三連勝してタイトル防衛に王手をかけています。)

この対局を観戦しながら、この展開はどこかで見たなぁ・・・っと。そうです。渡辺vs豊島の名人戦七番勝負です。有利だった豊島さんがいつの間にか泥沼の終盤に引き込まれ、最後は渡辺さんが勝利を浚っていきました。

渡辺さんの指運が良いのでしょうか?

サイコロを振って出た目に賭けるのであれば、それは運です。
しかし、将棋の終盤の難解な局面で勝つのは運だけでは無いはずです。また、逆に終盤の難解な局面を全て読み切ることは、かの藤井二冠をもってしても不可能です。(今のところは・・・)

では、何が渡辺さんをして勝たしめているのか?

将棋の読みは盤面深く潜って解を求める作業です。でもそれが見つからない場合は逆に「浮上して運の流れやその波の上下のリズムに乗っている!」のではないかと。盤面に潜るよりも相手の呼吸や態度から心理を洞察し、最も嫌がるであろう難しい手を指し続ける中でミスを誘い「それに乗る。」

ある意味「盤面最善を放棄して対人最善を優先」している、「最後にミスをしない!」だけに集中して「将棋に負けても相手に負けない!」終盤の粘りが発揮されるからこそ渡辺さんが光り輝くんです。(額だけじゃなく・・・)

勝負に対する直感と人間洞察の世界です。これは勝負事全般に通じることなので麻雀でも競馬でも・・・
これが棋士をして他の勝負事に走らせる理由であり、その経験を将棋に生かしているのではないか?と。

一方、従来早指し戦は藤井二冠のような勢いのある若手が有利とされていましたが、上記ソフトによる序中盤の研究によって必然的に生み出される終盤泥沼一点集中主義に偏ることで異変が起きています。昨年のNHK杯で優勝が深浦九段でベストフォーも全て40代以上のベテランでした。今期もベスト8にベテランが4人も残っています。

Abemaトーナメントの超早指しフィッシャールールでも森内九段とか木村九段の活躍が光りました。

原因はベテラン勢のソフト研究が若手のそれにようやく追い付いたことで、これまでの長い経験からくる終盤における勝負勘と直感が生かされる状況になってきているのではないでしょうか。
中高年の逆襲は既に始まっているのかも・・・渡辺王将も高年ではないが、立派な中年・・・

「ヨーイ、ドン!即終盤」に若手もベテランも揃って放り込まれる事態に、ソフトとは逆に人間臭い勝負の機微が勝敗を左右することになっているのでは。

藤井二冠のかねて定評のある「脅威の終盤力」がこの混迷を深める泥沼を「一刀両断」出来るのか?楽しみは尽きません。

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