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藤井三冠、ただシンプルに

昨日10/10の棋聖就位式のインタビューで藤井三冠に記者が質問した内容とそれに対する答えが印象に残りました。

それは「藤井三冠はタイトルや記録を意識することはないとのことですが、それでは今回の竜王戦初戦のように苦しくなった将棋を耐えて、逆転するような気力を奮い起こす原動力は何なんでしょうか?」との趣旨の質問でした。

これはメディアやタイトルのスポンサーにとっては、重要な質問です。本来ならタイトルや記録を棋士に意識してもらいたいのです。そこにドラマが生まれ視聴者の注目が集まるからです。

藤井三冠は「一局一局に全力を集中したい。対局に勝つことで結果的にタイトルや記録に届く。」といった回答だったような記憶があります。

ここからは個人的な推測になります。

例えば豊島竜王はご承知の通り、20歳で王座に初挑戦し失敗、その後何度もタイトルに挑戦しましたが跳ね返されました。ようやく棋聖で初戴冠しましたが、その後何度もタイトルを取りながら防衛に失敗し続け、唯一成功したのは昨年の竜王戦で羽生九段を退けた一回のみです。

それに比べて藤井三冠は初挑戦、初戴冠、初防衛を棋聖、王位で達成し、さらに叡王をその豊島竜王からフルセットながら奪取し、現在は竜王に挑戦し初戦を制しています。

二人のこの「タイトル親和性?」の差は何なんでしょうか?

棋力自体に二人の差がそれほどあるとはとても思えません。今は9-9のイーブンになってきましたが、二人の勝敗は当初豊島竜王が6-0でリードしていたぐらいですから。

独断と偏見かも知れませんが、藤井三冠の「タイトルを意識しない。」に秘訣があるのではないでしょうか。
つまり多くの棋士が「タイトルの重圧」で自滅するところを、す~っとすり抜けているからでは。

渡辺名人がこれまでタイトル戦で若手棋士に圧倒的な強さを誇ったのは、その経験によってタイトルの重圧を制御する術を身につけいるせいではないでしょうか。ところが藤井三冠だけはス~ンとしている・・・

藤井三冠はコロナ禍で最初の棋聖、王位への挑戦は前夜祭もない過密日程で「あれよ、あれよ」とタイトルを意識する間もなく獲得しました。ところがやはり二冠の重圧からか王将りーグは出だしから3連敗し陥落してしまいます。
どこか「タイトル・ホルダーらしい将棋を!」との意識があり、受けに回わり思い切って踏み込むような手が指せなかったせいでしょうか。

その時、藤井三冠は・・・ハッと気づいたのでは・・・「タイトル意識しても、何らメリット無い。」と・・・

そこから「眼前の一局、一手に集中して勝つこと」それ以外は一切無駄だと。対局以外ではひたすら勉強しこれまでの対局を通じて把握した課題を克服する・・・それだけ。

メディアや世間がいかに注目しようが、たとえ相手がどんな強敵であろうが目の前にあるのは将棋盤と駒だけ。
「この一局に勝つために自分の駒を次にどう動かすか?」

シンプルです。簡明です。

メディアの思惑やこれまでの常識に捉われることなく、藤井三冠には一直線に自分の信じるスタイルを貫いて欲しいものです。

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