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藤井二冠、今年痛かった敗戦ベスト?スリー

朝日杯三連覇を逃した敗戦↓

2020.02/11 角換り (千田七段) 後手 朝日杯準決勝

や、ビッグフォーの渡辺名人、永瀬王座と「止め男」広瀬八段も既に敗退し、杉本師匠との3組決勝戦を制して勝ち上がった竜王戦の本戦、それも一回戦で喫した敗戦↓

2020.07/24 一手損角換り (丸山九段) 先手 竜王戦(千日手指し直し局)

も確かに痛かった。

しかし、なんと言っても誰も予想していなかった王将リーグ開始早々からの三連敗が↓

2020.09/22 横歩取り (羽生九段) 先手 王将リーグ第一戦
2020.10/05 相掛り (豊島竜王・叡王) 後手 王将リーグ第二戦
2020.10/26 四間飛車 (永瀬王座) 先手 王将リーグ第三戦

最終的にはリーグ陥落にもつながったわけだから、今年最大の痛恨の敗戦ではないでしょうか?藤井ファンの「リーグ滞留はあっても降格無し!」の神話を打ち砕かれた想いでした。

特に棋聖、王位と奪取して二冠になり、去年は挑戦者争いに絡んだ王将リーグを、高校生三冠最後のチャンスと見ていただけに・・・

この伏線となったのが、実は二冠を戴冠して初めての敗戦↓

2020.09/12 横歩取り (豊島竜王) 先手 JT杯

にあると今となっては考えています。このJT杯は持ち時間が短時間の上に途中で封じ手が入るという変則的なルールになっており、最後まで有利を保っていたにも関わらず豊島竜王に逆転を許してしまいました。

メディアから「若き棋神」と騒がれて、藤井二冠がほぼ無敵状態にあると思われた中での対豊島戦5連敗に勢いが若干削がれた感がありました。しかし王将リーグでは豊島竜王や永瀬王座と共に挑戦者争いをすると見られていたのがまさかの上記三連敗です。しつこいようですが、勝率8割超の棋士の三連敗です。リーグ陥落です・・・

いったい藤井くんに何が起こっていたのでしょうか?

自分の経験ですが、会社でも若手を管理職として抜擢した際に挨拶で「管理職を拝命し身の引き締まる思いです。これから管理職として恥じぬよう人間的にも成長し立派に重責を果たす所存です。」とか言うんです。

つまり「管理職に成る。」「管理職らしい人間に成長したい。」「重い責任を背負う。」と思い込んでしまうんですね。

そして・・・その管理職で終わる・・・(ピーターの法則)。

違うんです。管理職は役割りであって管理職と言う人間は存在しない。また身を引き締めたりしたら縮こまるだけで長所を生かせない。人間は自分がやれる範囲を超えた責任は負えないんです。

藤井くんが就位インタビューで「これからはタイトル・ホルダーとして将棋界を代表する立場・・・」とか発言していたときは、まずいなぁ~と。単にタイトル・ホルダーは称号であり役割なのに。将棋界を代表するのは佐藤会長だけで十分です。

タイトル・ホルダーとして、ただ上席に座る、駒を取り出し並べる、イベントで挨拶する、そしてそのタイトル戦を戦う・・・だけ。何ら将棋を指すうえでの変化は無いんです。一局一局将棋を指して勝つ、以外は全て雑念の範疇です。

それを「タイトル・ホルダーらしい立ち居振る舞い」とか「タイトル・ホルダーらしい貫禄や将棋!」まで考え始めると自分を見失うんです。タイトル・ホルダーの貫禄や将棋は相手が感じるもので自分が意識したらメリットが無いどころかデメリットばかりです。

杉本師匠が藤井くんが二冠になって「近寄りがたい雰囲気に・・・」とかテレビで言ってたのを聞いて本当に心配しました。

(初めてタイトルを取った棋士の成績が往々にして下がり気味になるのは、この悪しき自意識によるものが半分です。残り半分はシードによる対局数の減少と上位棋士や勝ち上がってきた勢いのある棋士と対局する機会が増えるからです。)

この「タイトル・ホルダー症候群によるストレス」こそ藤井二冠の王将リーグ三連敗の原因の一つではないでしょうか。

しかしながら幸いなことに藤井二冠の順位戦はB2で中位クラスです。ここでの対戦と白星が普段の自分を取り戻すための何よりの薬となっているように思えます。

また見方を変えて藤井二冠の長期的な成長を考慮すれば、萩本欽一さんの言う通り「豊島さんは有り難い師匠!」ここで壁になってくれることで、さらに大きく飛躍する踏み台になってくれているのかも知れません。

また王将リーグ陥落のつらい経験も必ず生きるときが来ると信じています。

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