大嘘が美しいミッドガル鉄道・FFVII REMAKEレビュー②【ネタバレ微注意】 #doncomet

本題の前に、嘘についての話をしたいと思う。嘘は大別して4つに分類できると思う。
 まず「大きい嘘」「小さい嘘」、そして「バレないための嘘」「バレるのを見越した嘘」かだ。違いについては、本文中で少しずつ話していきたい。

◆FFVIIの鉄道は、嘘がいっぱい!

 FFVIIの世界には、ミッドガルという複層型で円盤状の人工都市があり、その中に鉄道が走っている。オープニングもその機関車が疾走するシーンで始まるのが印象的だ。この鉄道は隣接した区画(プレート)を結ぶだけでなく、上層の街と下層のスラムとも行き来しているようである。前回でも少し触れた通り、REMAKEではこの鉄道表現がものすごく作りこまれていて、非常にリアルな描写となっていた。
 ただ、かえってリアルに作りすぎたせいで、違和感が際立ってしまったこともいくつかあった。たとえば、壱番街駅の構造を例に挙げてみよう。

◆壱番街駅は辺境駅? 何のために貨物列車は停車したのか

 壱番街駅は、一面一線の小さな駅である。最初にクラウド達が乗っていた貨物列車も、後ろの車両が入りきらないほどのホームの短さだ。一見すると都会に潜むローカル駅といった、小さな駅のように見える
 しかし入口には自動券売機が4台もあり、自動改札機も6台も設置され、それなりの利用者がいると想定したような、大きな駅の作りに思える。その割に、駅員は警備員以外は見当たらないし、改札機の両サイドは車椅子利用に配慮したような幅広になっており、正直無賃乗車し放題のような構造に見える。
 そもそも、このような構造の駅に貨物列車が止まっていること自体、結構おかしなことだと思う。実際、オープニングで停車した列車に対し、警備員はチェックを行うだけで、貨物の積み下ろしも行っていない。
 となると、時刻調整のための通過停車か、セキュリティチェックのための停車だったのだろうか?(しかしその後の描写で、センサー通過による乗客のセキュリティチェックが行われており、貨物列車に対しても行われて不思議ではないはずだ)

 おそらく真相は、物語の演出とモデリングの手間などの都合だと思われる。先に「テロリスト達が貨物列車に潜み、駅に飛び降りる」という描きたい描写があったが、走行中の飛び降り描写に色々問題があって「停車後に飛び降りる」という描写に変更されたのではないだろうか。(たとえば子供が真似をする、ムービーが長くなって容量が大きくなる、など)
 これに説得力を持たせるため、PS1では単線とし、駅も旅客駅なのか貨物駅なのか判別が難しい、曖昧な表現に留めたのではないだろうか。もしかしたら、PS1では貨物駅という設定だったのかもしれない。
 前方のトンネルがPS1でもリメイクでも閉じているが、PS 1ではゆっくりと停車しているのに対し、リメイクではかなり高速で進入し急停車している。トンネルが閉まっていることを考えれば、もし止まれなかったら激突しているわけで、鉄道としては極めて危険な作りだと言える。
 これもリアルさで言えば、PS 1の方が描写としては正しい。ただ、それは所定の停車だった場合の話で、アバランチが何か細工をして予定外に列車を止めていた、という設定だとしたら、リメイクの方が正しい。もっとも、あまりにも綺麗に止まりすぎているし、後の神羅兵の挙動からして、予定外の停車とはあまり思えない。
 さらに言えば、機関車には当然運転士がいたはずなのだから、後ろでドンパチ起きている時にどこへ行ったのか? という点が気になる。これもPS1だと画面を若干ボカすことであまり気にはならなかったが、PS4だと視点が自由に動くので、違和感に気づきやすくなってしまった。一般人モブの挙動に随分こだわりがあったのだから、「命だけは勘弁してくれ〜!」なんて表現があっても良かったのではないか、とも思わなくもない。

◆七番街スラム駅は効率悪すぎ!?

 もう1つ物語の中で印象的な駅で、七番街スラム駅がある。一見するとなんてことの無い田舎駅の一つだが、周辺には列車墓場…すなわち車両基地がある。PS 1では駅の両端が見切れているので、その前後の線路がどうなっているかは想像するほかない。
 ところが、PS4版だとやはり視線が動くので、その前後関係がハッキリとわかってしまう。ホームから見て、左側(スラム側)が終端であり、右側はすぐトンネルへと繋がっている。車両の向こう側にいくつか線路があって、逆の手前側には列車墓場が繋がっている、という位置関係だ。
 しかしここで疑問が出てくる。PS4版のような線路配置だと、列車は七番街スラムに到着した後、折り返し運転するには機関車を後ろ側に付け替えなければいけない。ところが、左側は線路が途切れているので、バック運転をしなければすならない。
 普通、客車を繋いでのバック運転は避ける傾向があるので、このような駅の場合、左側の線路がもう少し伸びていて、機関車だけは回り込めるような配線になっているか、右側の線路が車両基地(列車墓場)側と繋がっていて、別の機関車が連結できるような配線にした方が効率的だ。
 しかし、七番街スラム駅の右側はすぐトンネルなので、仮に基地側と線路が繋がっているとしても、それはトンネル内ということになってしまう。バック運転でそんな遠くまで行かなければならないとなると、列車の折り返し運転に毎回時間がかかるわけだから、必然的に列車本数も少なくなってしまう。
 神羅は鉄道のセンスが無い!という描写なら納得ではあるのだが、PS 1の時に想定していた描写と変更があるのではないかと、ちょっと気になる点である。

◆各路線はバネのような線路で上下を結んでいる?

また、同じような描写なのが五番街スラム駅。こちらはPS4のみの駅で、七番街スラムと異なり旅客ホームだけだが、やはりホーム向かって左側が終点になっている。
 ということは、五番街スラムも七番街スラムも終点駅ということであり、もしかしたらそれぞれは別の支線として繋がっているのかもしれない。
 ミッドガルは円盤状の都市であるから、環状線状に線路を敷いた方が効率的なような気もするのだが、そうではなく中心に向かって放射状に展開する路線網なのかもしれない。
 あるいは、螺旋トンネルのように複線の路線はプレートの上層部では繋がっていて、各スラムにはプレートに対してバネ状に敷かれた線路が単線で分岐しているのかもしれない。狭い範囲で高低差を解消するには、確かにそういった線路の敷き方をしないといけないのかもしれない。(ただ、壱番街駅の路線図を見ると片道運転の環状線のような書き方だった)
 いずれにせよ、なかなか鉄道的視点で見れば不思議な形状の路線網を展開しているミッドガル鉄道であり、このような鉄道は現実の世界ではどこを探しても見つからないだろう。まさに唯一無二の存在であり、それを創造したスタッフ達の発想力に驚く限りである。
 現実にあるのか、という意味では大嘘な鉄道なのだが、こういう作りなら嘘ではない、という解釈の余地を残した、面白い嘘が散りばめられたユニークな鉄道だと言える。
 神羅ビルのエントランスには鉄道博物館的な物もあったが、その辺の建設経緯に関する説明などもあったりするのだろうか?
 せっかくあれだけこだわった作りなのだから、実際の鉄道模型メーカーとコラボして、ディスプレイモデルでもいいから発売して欲しいとものだと密かに願うところである。

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