デジタル化石
22世紀になると、過去100年間の記録遺産価値を見直そうという機運が高まっていた。
百歳を越える高齢者の割合も多くなっていたが、その記憶をたどることは困難で、サーバーなどの記憶媒体に残るビッグデータを解析する作業が進んでいた。
しかし、庶民の生活状況や個人的な情報は、一定期間が過ぎると廃棄されており、細かな社会の状況を再現することは困難だと思われていた。
そんな時、ある地質学者が、微弱ではあるものの、ある地層から一定の電磁波を発していることを発見したのだ。
100年前には、人目に触れたくない情報は「削除」することで消し去られていると誰しも思っていたようだが、地下に多くの鉄分を含む地層がある場合、湿度の関係で、化石のように記録されていることが分かったのだ。
中には、男女の会話のようなものまで見つかり、100年前の総理大臣の会話と思われるものまで発見された。
秘密裏に廃棄されたのだろうが、たまたま鉄分の多い地層の上で記録された会話であったのであろう。
ただ、100年も前の事でもあり、一部の女性誌が話題にしたようだが、大きく取上げられることは無かった。
以後、国家安全に関わる部署の建物は、その地層を調査することが義務化されたのは言うまでも無い。