知らない駅 黄金町郵便局 宿舎

駅をでてすすむ
どちらの駅なのかは覚えていません
古くてよごれた感じの駅でした
あまり広くない道路がまっすぐ伸びていて
そこをすすみます
表通りからひとつ入り込んだくらいの通り
自動車もほとんど走らなくて人通りもすくない
通りの両わきに色味のないビルが立ち並んで小さめのオフィス街かしら
ときどき向かってくる自動車をよけるために電柱の後ろにかくれたりする

旅行に来たのか
そんな感じではなくて、でもなにしにここに来たのかわからない

まっすぐのせまい通りは長くて
5分は歩いたと思う
通りの半分以上来ると、先は丁字路になってるってわかった
わたしの行く通りのすき間から時々白い自動車が過ぎて行くのが一瞬みえる
丁字路の近くまで来ると向こう側に大きな看板みたいなものの一部がみえた
それはハリウッドサインみたいなものだ
最初二文字だけみえた
それは黄と金だった
あら、なにかしら?
黄金
わたしの通りが丁字路に到着するとのこりの文字がみえた
のこりは町と郵と便と局だった
二つを合わせると黄金町郵便局とわかった
あら、黄金町に郵便局あったかしら?
よくわからないけれど、なかったような・・でもあるような・・・

突き当りの通りの向こうは緩やかに斜面になっていて
雑草のせいで明るいグリーンにみえる
斜面の上には50センチくらいの高さのコンクリの塀がある
斜面や塀のまわりには人だかりがあって、どしてかみんな男の子だった
学校があるのかしら?
わたしは道をまたいでグリーンの斜面の向こうへ行きたかったけれど
たくさん男の子たちがいて気後れしていた

みんなの間を抜けて斜面を上がると、小さな塀の向こうは遊歩道みたいだった
遊歩道は小さめの丘を溝のように削ってつくられていて、削った分だけ窪んでいてそれほど広くはなかった
斜面がわから低くみえた塀はほんとは1メートル以上あるってわかった
う~ん・・
遊歩道に行きたい・・・
でも
この塀からジャンプするのは怖い
飛び降りるのはむりそうだったので
塀につかまってぶら下がって、でも足はとどかなかったけれど
手をはなして尻もちついた

痛い!

右手には遊歩道の始りがみえて、そこまで回ってくればよかったと思う
左手は緩やかな下り坂
いい感じだわ
雨上がりのコンクリがところどころ乾いてまだら模様になった
すぐ先に木立がみえて、遊歩道はその中へ消えている
わたしは木立に吸い込まれるように下り坂を行く

坂を下るにつれて両わきの塀がグングン高くなる
みると、だれもいない
舗装された遊歩道は木立のなかへつづいていて急に狭くなった
高い塀は、よくわからないけれど木立を囲むようにひろがっているようだ
どうしよう
このまま進んでも大丈夫かしら
わたしひとりしかいないみたいだし
さっきまでたくさんいた男の子たちはどこへ行ったのかしら

現実のわたしならだれもいない木立にひとりで入ったりしない
でも
夢ではいつもちがう
どしてかしら
不思議

木立の入り口に立ってすこし考える

木立のなかはうす暗くてじめじめしていると思う
葉っぱも濃いめのグリーンでほんとに暗い
でも舗装された小径があるから迷子になったりはしないだろう
そう思うと
わたしはもう木立のなかを進んでいた

やっぱりじめじめでうす暗くて静か
鳥も虫も鳴かないし、誰かの声も気配もない
小径は木立の中を曲がりくねりながらぐんぐん下って行く
右手の塀は知らない間にもっともっと高くなって木立を囲うように立っている
コンクリの塀は湿っていて苔やツタがからまって
どしてか四角やアーチ形の穴が窓のようにあいている
壊れかかった遺跡みたいだわ
かなり怖い感じ
どうしよう
そろそろもと来た道をもどろうか

そう考えていると、突然後ろから大きな声で
「お姉ちゃん!」
と妹がわたしの肩をたたいた
「ギャー」
ほんとに驚いて猛ダッシュで逃げると
「お姉ちゃんどこ行くのよ、待ちなさいよ!」
そういいながら私の後を追ってくる
「やめてー来ないでーー」
怖くて、なにがどうしたのか、ほんとの妹かもわからない
走れるったけ走って丸太で組んだ壁にぶつかって小径は行き止まりになった
湿った丸太にはキノコがたくさん生えていて、みると、壁というよりもそこに丸太を貯蔵してあるようだった
ほんとにじめじめしてうす暗いところ

「お姉ちゃん、そっちじゃないでしょ、こっちよ」
彼女はそういってわたしの手をひっぱった
「ちょっと!やめてよ!あなたどしてここにいるのよ?」
すると彼女は
「ここほんと気持ち悪いところ、すごく嫌な感じ」
そういってわたしを引っぱってもと来た道を戻って行く

ふとみると、わたしたちは昔の図書館のような公民館のような建物の入り口まで来た
あら、こんなのさっき気づかなかった
建物は、建物というより木立の高い塀にガラス張りの入り口が付いているようにみえた
入り口のまわりのコンクリはお水に濡れてほとんど黒にみえる
どこかから湧き水があるのかしら
それともコンクリの中からお水が湧いてくるのかしら
重々しくてとても嫌な感じ
ガラスの向こうは真っ暗でなにもみえないし、人の気配もない
「ねえ、ここほんとに気味悪い」
妹は、話しかけるわたしを無視して、わたしたちは入り口をすぎて中へと進んだ
建物の中は整然としてほとんど暗くてとても静か
妹がカウンターでなにかお話をしている
わたしは隙をねらって逃げようと思うけれど、そんな勇気でない
すると妹が
「お姉ちゃん、お部屋空いてるって、こっち」
と、言ってわたしを引っぱる
え?お部屋?
わたしたちはどしてかここにお泊りするらしい
そんなの嫌だ
妹の手を振りほどいて逃げようと思うけれど、そんな勇気ない
だって一人になるのはもっと怖いと思う

大きな白っぽい両開きの扉を開けるとすごく大きなお部屋だった
お部屋の床はお布団で埋まっていて大勢の人たちがその上でくつろいでいる
お部屋の両がわには大きな棚が何段も天井に向かってつくられていて、その上にもお布団が敷いてあってみんなお休みしている
妹はわたしを大きなお部屋の一番右奥まで連れて行った
そこにはわたしたち2人分のお布団が敷いてあった
わたし、ここにお泊まりするのかしら
嫌だ
見渡すと、どこもかしこもほんとにお布団だらけで、それでも満員で、お客はわたしたち以外みんな男性のようだ
ちょっと後ろにはさっきの棚があって、男性たちがくつろいだり何かお話ししたりしている
すると、棚のお布団でお休みしていた男性が
「ちょっとこれ干してくれる?」
と、わたしにお話しした
え?お洗濯もの?
どしたらいいのか困っていると
「窓の外に物干しがあるよ」
え?窓?
窓なんてない、と思ったらいつの間にか四角い鉄の枠で作られたような窓がずらりとならんでみえる
窓ガラスが窓とは思えないほど小麦粉をまぶしたように白っぽく汚れている
重たい窓枠をやっとの思いで開けるとほんとに物干しがあって
物干しは幾重にも、前後左右、上下にも連なっていて
もうたくさんお洗濯が干してあった
どうやらここは黄金町郵便局に勤める方々の宿舎の気がする
そう思った

ふとみると、お洗濯もののすき間からすぐ後ろに黒い土のようなコンクリのような湿った壁がみえた
壁にはコケやツタがたくさん
物陰だし、湿っているし、こんなんじゃお洗濯ものは乾かない
そう思った

ああ息苦しい
お布団にもどると、妹はすやすや眠っていた
寂しい
どこからか、かすかにつめたい空気が入ってくる

目覚めた。










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