夕暮れ 坂道 ジャリ道 シバ犬たちに追われる 古ぼけたフードコート

夕暮れ
そんなに広くはない道
自動車2台くらい通れる道
上り坂を上へ向かって歩いていた
坂の途中に止まって振り返っている

暗い
坂道の左側は芝生がひろがっていておんなじかたちをしたバターに似た大きな建物が並んでいる
窓はない
バターの建物のうしろは涼しげな木立
バターアパートは坂道の下のほうまで続いていると思うけどよくみえない
右側は背の低い子供っぽいイラストみたいな街路樹
なんの木かわからないけれど
赤いお花が咲いていた

坂道をずっと下れば街につながっていると思う
わたしのいるところからは街はみえない
街は・・
雲の下にあると思う
黒っぽい雲
ただ
遠くの右手にとても高い建物がみえる
建物は、途中雲のローブをまとって突き抜けて
てっぺんはもっと高いところの雲に覆われている
まだ薄明るいお空を縁取って
でも暗くてたくさんある窓もかすかに見えるだけ
窓たちに灯りはなかった

色もない
白黒
でも、夕暮れってわかる
夕暮れの空気が漂っている

わたしは向きなおって坂を上がっていく

丁字路に到着
道の片側は背の高いコンクリートのななめの壁

あら
ここ知ってる
壁の向こう側に大きな捨てられた古い建物がたくさんあって
敷地を小さな水路や大きな川がよこぎっているところ
わたしの夢にときどきやってくるところ
観光スポットでもあるところ
夢のなかで、ここは前にほかの夢でみたところだ
って思ったけれど
いまも夢をみているとは気づかなかった

丁字路を左へすすむ
左へ行けばこの敷地の入り口があるはず

あった
入り口はすぐにみつかった
横に10メートルくらいの門扉は前にきたときより小さくて高さもわたしの胸くらいで低い
もっと大きな門扉だったと思うけど
ここは裏口かしら
門は閉じていてだれもいない
門扉の向こうの大きな建物たちも真っ暗でぼんやり大きな黒いかたまりがみえるだけ
写真を撮ろうとおもったけれど、ちょっとこわくてやめた

もうお家にかえろう

そう思って門をよこぎって小さめの公園もよこぎって
公園をよこぎる途中、あたりは白黒じゃなくてカラーになって
緑が、公園入口に連なる黄色いパイプ柵が、そしてカラフルな遊具たちが公園の土の濃いグレーをバックに生き生きと色あざやか
呼吸する空気も、柔らかくていい匂い
どしてかみんんな太陽に照らされて夕方から昼下がりにかわった
雨上がりなのか公園の土は湿っていてところどころ思い思いのかたちのみずたまりもあった

いつもの夢と同じに、空気はつかめるくらいに立体的で
色たちは生き生きしすぎてビーンってダブってふるえている

電柱の住所にみおぼえがあるけど・・
立ち止まって考えたけれど・・
ここからお家にもどる道がよくわからない気もする

公園をよこぎって・・住宅地・・
この先を右手にすすんで・・
う~ん・・
このかえり道だと遠回りでどうすすめばいいのかよくわからない気もする
別の夢でみた緩やかな登坂がみえた気もする
自動車が空いている道を行き来している
そこは本当にある道
でも、その道はわたしのお家のそばじゃない

やっぱりもときた道にもどったほうがよさそうだわ

踵をかえしてすすむと、みたときあるようなないような白っぽいアパートの前を歩いていた
アパートの敷地のはじっこには空になったピンクっぽい色のシャンプーの入れ物や黄緑の洗面器みたいなのが捨てられていた
赤やうすオレンジ色のプラスティックの小さなお人形や折れ曲がった白いストローもゴチャゴチャに捨てられていた

だれかにみられているような気もする
みている人のお顔がちらりと思い浮かんだ
高齢の男性
よれよれの部屋着すがたで切れ長の目をこらしてわたしを睨んでいる
しらない方
こわい

とても狭いじゃり道
まっすぐ続いている
両側に工事で使うようなクリーム色の鉄板プレートの壁が工事で使うパイプの骨組みで支えられて続く
鉄板プレート壁の下から1メートルあたりに明るめのブルーのボーダーラインが2本引かれている
鉄板プレートがきちんと高さをそろえてならんでなくて
ボーダーラインがプレートのつぎめのところででこぼこにずれていた

うす暗い
歩くと、ガリッ、ガリッ、ギュルッ、ギュルッって音がする
どしてかいやな感じ
だって
うす暗くてだれもいないし
うしろからなにかが来るってわかる
こわいけど振り向くと
わたしの後をシバ犬がついてくる
1ぴきじゃない
黒や白や茶色いシバ犬がたくさん

どしてこんなにたくさんシバ犬がいるのかしら
こわい
こわくてがまんできなくて走りだした
わかっていたけれど、わたしが走りだすと犬たちもいっせいに追いかけてくる
こわいこわいこわい
こわいー!
犬に食べられちゃうかもしれない
走りながら隠れるところをさがすけど、道はまっすぐで両脇に壁があって隠れるところなんてない
と思ったら
ちょっと先、左側に壁の隙間がみえて骨組みのパイプもみえた
そこだけ壁のボーダーラインもとぎれていてすぐにわかった

あっ!
あの隙間に隠れよう!
夢ではいつも速く走れないけど、今日の夢では速く走れた
わたしは壁の隙間にサッとからだをすべり込ませて
でも
その瞬間
ああ、この隙間ならシバ犬も入ってこれる
そう思うと
隙間に逃げたわたしをやっぱり犬たちが追いかけてくる

どうしようどうしようどうしよー!

壁の隙間を抜けると砂利の敷いてある広場
手入れされていないのか大小さまざまな雑草があちらこちらにピョンピョンって生えている
その先に緑のフェンスがみえてフェンスの向こう側は水路がある

水路だわ

どしてかわかった
ああもう逃げられない
水路の向こう側には薄汚れてボロボロの昔の屋外フードコートみたいのがみえた
ラーメン屋さんとか餃子屋さん、クレープ屋さんとかたこ焼き屋さん
うす暗くて色味が薄れてみえたけど白黒にはなっていない
でも、雑な広告の印刷みたいにザラザラしてみえる
ああもうだめだ・・

水路の向こう側のフードコートのまえ
犬たちも追いかけてきた
わたしはサッと素早く身をひるがえしてフードコートの左側へ走った
どしてがそうすれば犬たちの追跡を振りきれると思った
すると犬たちは左側に逃げたわたしには気づかないでフードコートの右側へ群れなしてすすんでその先の通りをきれいに1列にならんで左に曲がっていなくなった

ああ、たすかった、ホっとして涙があふれる
水路のフェンスに寄りかかってしゃがんで泣いていると
ショートヘアーの知らない女性がやってきて
「うちのお店で休んでいきなさい」
「お泊りしてもいいのよ」っていった

わたしはその方に抱きついて泣きながら、お泊りするかどうするか考えた
だって
ここがどこなのか、わたしのお家にどうやってかえるのかわからなくなったから
どうするか考えながら、どしてかとてもせまくて汚れたお部屋がみえた
赤色っぽいお布団が敷いたままでちらかったお部屋
知らない男性のすがたもみえた
そして
その方とわたしが一緒に歩いてお店に入るすがもみえた

目覚めた。


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