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#3 藍の電子レンジ乾燥葉を使った『生葉』染めによる絹の染色

1.『生葉』染めについて

生の藍(タデアイ)を使った生葉染めは比較的簡単で、家庭で行われることもあるが、生葉を収穫できる夏に限られる。藍は多くの他の植物と違い、自然乾燥させた材料はそのままで染色に使うことができないからである。

生葉染めは、生の藍を絞ることで色素の前駆体(インジカン)が葉の中の酵素と反応して無色のインドキシルになり、その液に布を浸してから空気酸化することで不溶性の色素(インジゴ)として発色する。しかし乾燥葉では、細胞が壊れる過程で前駆体と酵素が反応してすぐにインジゴになってしまい、そのままでは使えない状態になってしまう。

これを染色に使うためには、インジゴを何らかの方法で還元して、水溶性の物質に変え、布に浸み込ませた後再び酸化させてインジゴにする必要がある。それを行うために伝統的に行われてきたのが「藍を建てる」と言われる発酵であるが、個人では管理が難しい方法である。

しかしそのようなプロが行う難しい手順を踏まず、また還元のための化学薬品も使わずに、電子レンジを使って葉を乾燥させることより、生葉染めと同じ原理で1年中いつでもできる『生葉』染めの方法がある( 1)~3) )。それを参考に、栽培した藍(7月上旬に採取)を使って検証してみた。

参考にしたのは、以下の文献及びサイトであるが、2)と3)は、1)の論文の結果から一般的に行いやすい方法を解説したものである。

1)牛田智、川崎充代 「インジカンを保持した状態での藍の葉の保存とその染色への利用」、日本家政学会誌、52巻、1号、p75-79(2001)

2)川崎充代、牛田智 「いつでもできる藍の『生葉』染め-藍の生葉の保存と染色方法」、染織αNo246、p69-72 (2001)<2001年9月号>

3)いつでもできる藍の「生葉」染め-タデアイの葉の保存方法
https://www.mukogawa-u.ac.jp/~ushida/itsudemo.htm 2004年3月1日

2.手順

2.1 藍の生葉を電子レンジで短時間に加熱して酵素が働かないようにし、色素の前駆体を残したものを作る
1回あたり約30gの生葉を耐熱皿にペーパータオルを広げた上に並べ、600wで2分加熱した後、裏表を返して更に1分加熱した。少し湿り気が残っていても余熱で乾燥するのでそのまま放置した。重量は乾燥後約1/7になった。

2.2 色素の前駆体に働く酵素を残すために藍を自然乾燥したものを準備
収穫後の藍を束ねて吊るし、約10日間(葉だけなら夏場1~2日で可能 2)3) )屋内で乾燥させ(青くなってくる)、葉だけを使用した。

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2.3 抽出
80~90℃の湯500mlに電子レンジ乾燥葉6gを入れて10分煮出し、常温(後で酵素を働かせるため)に冷まして漉した。

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2.4 酵素反応で染色液を作る
自然乾燥葉1gをポリ袋に入れて手でできるだけ細かく揉み、抽出液に入れた。1時間後、少し青みが出てきたところをキッチンペーパーで漉した。

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2.5 染色
約30cm四方の折柄のある絹の布を入れた。布に対する染液の比率が小さかったので、染めムラができないようになるべく撹拌した。約1時間染色した。

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2.6 発色、乾燥
1時間ほど竿にかけて酸化、発色させたあと、液体石鹸(文献では中性洗剤)を水に数滴入れ洗って干した。

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3.結果

乾くと色が薄い感じになるが、浅葱色に染まった。

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実はこれより前に、古い着物をほどいた絹と思われる布で一度試みたのだが、よく見ると縦糸は染まったものの、横糸が全く染まっておらず、実は他の繊維(レーヨンか?)との混紡であったようだ。

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同じ方法で綿の布も染めてみたが、やはり植物性の綿の繊維にはインドキシルが定着しなかったと見られ、全く染まらなかった。

タデアイの電子レンジ乾燥葉と自然乾燥葉を合わせて使うこの『生葉』染めで、化学薬品を使わず、いつでも絹が染まるということが確認できた。
デメリットとしては、電子レンジで乾燥した葉を自然乾燥葉の5倍ほど用意しておかなければならず、電力と手間が要るということだ。

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