見出し画像

#10 藍生葉の時短編グルコース建てレシピ

前記事#9で、ハイドロを使わずにグルコース(ブドウ糖)によって藍の生葉を化学建て(還元)し、より安全に、植物繊維の木綿も染められる方法を考えました。L-アスコルビン酸(ビタミンC)を加えることで少し時間を短縮することができましたが、それでも3時間前後の放置時間が必要で、行事やグループの集まりで行うには難しさがあります。
今回は、湯を加えて染色液の温度を上げることで反応速度を上げ、より時間の短縮を図りました。


1.木綿の藍生葉染め(ブドウ糖建て・時短)の手順

  1. (染色液約1Lあたり)タデアイ生葉 50gと、水 500mLをミキサーに30秒ほどかけ、布で漉してしっかり絞り、生葉の「ジュース」を作る。

  2. 1の「ジュース」にアルカリ剤として消石灰15gを入れ、そこに熱湯500mLを3~4回ほどに分けて加え(できれば温度計で液が60℃を超えないように確認しながら)5分ほど撹拌し、沈殿は残るができるだけ溶かす。

  3. 2の液に還元剤としてグルコース(ブドウ糖)15gと、酸化防止剤としてL-アスコルビン酸(ビタミンC)5gを加えて5分ほど静かに撹拌し、よく溶かす。

  4. そのまま15~60分放置する(この範囲では放置時間が長いほうが濃く染まる。タイトル写真は60分放置のもの)。この時間を利用して布に絞り模様をつけるなどしてもよい。

  5. 染めムラ防止のため布を濡らして絞ってから染色液に入れ、部分的な酸化を防ぐため水面からなるべく出ないよう、ゆっくり動かしながら5~15分間染色する。大きめなものや複雑な形のものは長めに時間を取る。

  6. 染めムラができないようにたっぷりの水の中に手早く布を入れてさばき、何回か水を変えて酸化(発色)させ、水洗いして乾かす。

2.補足説明

2.1 染色液の温度について

一般に液の温度が高いほうが、化学反応の速度は上がりますが、生葉染めの場合は発色までの過程に葉の酵素による反応があるため、温度を上げ過ぎると酵素の蛋白質が変性してしまい、反応が進みません。
そこで、水と熱湯の混ぜる割合を調整し、液温をコントロールして布片を染め、どのくらいの温度が適当か調べてみました。
次の写真は、グルコースを投入する時の液温と、その後布を入れるまでの経過時間による染まり方の比較です(L-アスコルビン酸は不使用)。

写真1
※グルコース投入時の液温は Y:40℃ X:45℃ A:50℃ B:60℃ C:65℃ D:70℃ E:76.5℃
※数字はグルコース投入から布を入れるまでの経過時間(分)

染着量を液温別に比べると、A(50℃)からB(60℃)のあたりに山があるようです。
E(76.5℃)は全く染まっていません。グルコース投入前の操作時にはこの数字よりさらに高い液温になっており、高温のために酵素が変性してしまったものと考えます。
今回の手順書きの液温に関係する部分では、水と熱湯の混合割合をAと同じ(500:500)として、消石灰を5分溶かしたあと待たずにグルコースを投入する方法を採用しました。

2.2 L-アスコルビン酸の効果、および放置時間について

写真2 L-アスコルビン酸なし 左:30分放置 右:60分放置 
写真3 L-アスコルビン酸あり
左から15分放置、30分放置、60分放置

布片によるテストの際は各液温につき一つの液を使い、決まった時間ごとに布片を入れて、その都度多少撹拌されてしまいましたが、こちらは別々の染色液をそれぞれ所定時間まで放置し、半手拭いを染めたものです。
L-アスコルビン酸を入れないものでは、還元と同時に酸化も進行してしまうためか、色が薄めで、今回の範囲では時間を増やしても染着量がほとんど増えませんでした。
L-アスコルビン酸を入れた場合は時間とともに染着量が増え、30分放置と60分放置のものは、同じ時間で入れない場合よりどちらも濃く染まりました。
長期的には退色してくることや、乾くと濡れている時より色がだいぶ薄い印象になることなどを考えると、液の放置時間に関しては、L-アスコルビン酸を入れたうえで30分以上、なるべく長めに放置した方が安全であると思います。

2.2 染料の増量について

もっと早く濃く染めたい、という場合の最終手段として、藍の生葉を2倍(100g/L)に増量してみました。L-アスコルビン酸も加えています。

写真4
(上)写真3と同じもの。基本の葉の量で、左から15分放置、30分放置、60分放置
(下)藍の生葉を2倍に増量し30分放置したもの

葉の量を2倍にして30分放置したもの(下)を、基本の葉の量で同じ30分放置のもの(上中)と比べると、葉を増量した方が明らかに濃く染まりました。
増量せずに60分放置したもの(上右)との比較ではわずかに染着量が増えたか?という程度ではっきりした差が認められませんでした。
増量して放置時間も60分にしたらもっと濃く染まるかもしれません。


これらの結果を参考に、分量や時間などを状況に合わせて適宜調整しながら、お試しいただけたらと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?