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デンタルクリニックへ

今日は薄曇りの一日で、突然何度か激しく雨が降る不安定な一日だった。どこか物語の一節にでもありそうな天気だった。灰色の空が広がり、時折ぽつり、ぽつりと雨が落ちて来ては豪雨になる。しかしそれも長くは続かない。傘を持つべきか、持たざるべきか、それが問題だ。だが、そんなことは誰も気にしない。街はいつも通りのリズムで動いていた。

夕方、五か月ぶりにデンタルクリニックへ行くことにした。こうして文章にすると簡単な行為に思えるが、実際にはちょっとした冒険のようなものだった。歯医者の待合室には、昔読んだ本のような静けさが漂っていた。雑誌のページをめくる音が時折聞こえ、その音はどこか遠くの記憶を呼び覚ますようだった。

診察台に座り、天井の無機質なライトを見上げながら、これまでの五か月間のことを考えた。日常の忙しさに追われ、デンタルクリニックのことなどすっかり忘れていた。だが、今ここにいることが、なぜかとても重要なことのように思えた。

歯科衛生士は優しい声で話しかけながら、丁寧に作業を進めていた。彼女の手は確かなもので、その動きには不思議な安心感があった。白いマスク越しに見える目元は、どこか穏やかで親しみやすかった。彼女との短い会話は、まるで長い旅の中で出会った見知らぬ人との瞬間の交流のように感じられた。

一通り歯のクリーニングが終わると、再び薄曇りの街へと戻る。道にはまだ雨の痕跡が残っていたが、空は少し明るくなっていた。帰り道、彼女の優しい声と確かな手の感触を思い出しながら、何気ない一日の大切さを噛みしめた。

こんな一日の、現実と非現実の境界が曖昧になる瞬間。そんな風に、今日という日を過ごした。

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