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配管工事のレベル別『是正事項リスト』〜お金を生まないムダな時間をなくすために

このnoteを読むことで、配管工事で是正となってしまう事項が分かりますので、無駄な「直しの時間」を無くすことができます。


どんな現場でも、ある程度まとまった配管があれば、必ず「検査」がありますよね。

中間検査・消防検査・施主検査・サブコンの社内検査・ゼネコンの設備検査など、現場が大きくなるほどその数は多いのでは無いでしょうか。

それで、検査があれば必ず出てくるのがその後の「是正事項」です。これはどんなにスゴ腕の配管工でも、どれだけ完璧だと自信があっても、0というのは難しいのではないでしょうか。

むしろ意外とまとまった量が出てきてしまうこともしばしば。この理由としては、単純な忘れだったり設備を知らない建築の突拍子もない指示だったりします。

私もこれまでに、「またこれか・・・」というようなものや「それ、いる?」というようなものまで、数えきれないくらいの是正をしてきました。そんな中で一つの湧き上がったのです。

同じ是正事項を繰り返さなければ、ムダな直しの時間は減っていくはず

だってそうですよね。是正となった内容を覚えておいて次の現場の時に気を付ける、つまり「直しになるような悪い芽」を最初から摘んでおけば、検査では何も指摘されませんから。

これって考えてみれば普通のことで、なんでもそうですが、「同じ失敗は繰り返さないようにする」というのは誰しも日常的にやっていること。

例えば、いつも通る道で段差につまづいたら次から気を付けますし、車庫入れで擦ったらより慎重に運転するようになるわけです。できるだけ危険・嫌いなもの・不安などは回避したいのが人間だからです。

ですが正直なところこの業界では、そういったムダを無くしていこうという意識が低いように感じます。この理由としては、是正事項が共有されずまとまった資料的なものも無い、そして施工自体がどこか“職人の腕任せ”になっていることではないかと。

そこで、私がこれまでの配管工人生の中で経験したものや、他の職人・監督から聞いた是正事項をまとめて共有することで、少しでも現場でのムダな時間が減るのではないか。そう思ってこのnoteにまとめることにしました。


このnoteの構成

このnoteでご紹介する是正事項は、4つのレベルに分かれています。それが次の4つ。

・レベル1 :そりゃ是正になって当たり前
・レベル2:施工時になかなか気付けない・忘れがち
・レベル3:いやぁ納得いかないけど仕方ない
・レベル4:いやそれ職人イジメでしょ

そのままなのですが、レベルの数字が大きくなるほど現場で是正事項として指摘される可能性は低くなります

なので、確実に押さえておく必要があるのはレベル2くらいまでですかね。ではそれぞれの内容を見ていきましょう。


レベル1:そりゃ是正になって当たり前

是正事項として指摘されても何の文句も言えない、当たり前レベルの内容です。

■支持不足

吊りバンドのピッチが広すぎるとか、振れ止めが取られていないなど、配管の支持が不足している状態です。

「2m以内が数箇所2.1mになっている」みたいなのは指摘されないとしても、「細物の塩ビ管の支持が全て2mピッチになっている」みたいなのは確実にマズいです。

また、施工時にしっかりと支持していても、どうしても他の作業やダクトなどの邪魔になってしまい外されてしまうケースもあり得ます。これは本来外した人から連絡をもらうのがスジですが、忙しい現場ではそうしてくれないことも多いですから、施工し終わった配管も機会があればチラチラ様子を見ておきましょう。

よく指摘にあがる内容を書いておきます。

・竪管の中間指示が無い
・振れ止めが無い、不足している
・継手の近傍に支持が無い
・伸縮継手やストラブに抜け防止が取られていない
・フレキや伸縮が意味をなさない支持になっている


■貫通処理が未了

現場で配管が貫通すると言えば、スラブと壁です。貫通部には何らかの「貫通処理」をすることが求められますから、それが未了なら確実に是正となります。

例えば、フィブロック・耐火パテ・穴埋め・アルミテープ貼りなど。ただし、ここに関しては配管時に施工する内容と、保温時に施工する内容が分かれますから、その点は確認が必要です。

また、現場によって指定される材料や施工要領が違ってくるケースもありますから、これも最初に確認しておくのが無難です。


■漏れている

これは当たり前ですね。さすがに、ノーテストでいざ通水をしたら未接続箇所からジャジャ漏れ、みたいなケースは除きますよ。笑

そうではなくて、配管後にテストをかけた時や器具付け後に通水した時には漏れていなくても、その後に漏れが発覚することもあります。なぜなら、長時間かけて微量な漏れが出てくることもありますし、他の作業で衝撃が与えられて漏れることもあるからです。

これを防ぐには、器具付け後に少し時間を置いてから再チェックする、他作業の影響を最小限にするための支持や養生を施すなどを意識しておくと良いでしょう。


レベル2:施工時になかなか気付けない・忘れがち

施工時には気付けずに後から指摘されることや、ついつい忘れてしまいがちな内容です。

■バルブ・減圧弁・ゲージ・チャッキ・伸縮などの不足

配管を接続する機器の仕様としてチャッキや減圧弁などを入れ忘れたり、系統ごとに止水できるバルブが入っていなかったりするケースです。

ほとんどは図面のミスや監督の指示不足が原因となりますが、直しになるのは確実ですし、職人としてもその辺りは気付いて逆に指摘するくらいが理想です。

もちろん、複雑な大型機器廻りについては指示通りにやるしかないですし、逆にウンチクをたれて監督を説教するなんてことはNGです。

大掛かりな直しは追加工事になるとは思いますが、そうでもなければ泣き寝入りになりかねませんから、こういった「役物」についてはちょっと敏感になっておくと良いかと思います。


■錆止めの塗り忘れ

VB管やVA管でねじ込み配管をしたら、接続部には必ず錆止めを塗りますよね。それ以外にも支持に使うアングル材の切り口や穴あけした箇所にも塗ります。

給水なら保温されてしまって検査の時には分からないことがほとんどですが、施工時に忘れがちな箇所と指摘されることがある箇所をあげておきます。

・ねじ込み時にパイレンをかけた箇所や傷ついている箇所
・全ねじの切り口(特にレベルバンド)
・MD継手が傷ついて錆びてしまっている箇所
・PQ継手(全塗装を指示されることもある)
・消火関係など保温しない配管を綺麗に塗布する


■配管の伸縮を考慮した支持

塩ビ管や高温の水が流れるような配管については、熱によって伸縮するということで、伸縮継手が入ることが多いですよね。この伸縮継手は文字通り「伸縮を吸収するためのもの」ですから、伸縮しないと意味がありません。

なので、その近傍を支持する場合でもそれを考慮しなければなりません。例えば、管とバンドの間に空間を空けたガイド的なものにするとか、伸縮継手近傍のパイプ側は支持しないなど。

単純にピッチで支持していると忘れがちなので、施工時には気にかけてください。


レベル3:いやぁ納得いかないけど仕方ない

ちょっと細かすぎて普通はやらない、機能的には充分満たしているけど施主の意向で、みたいな内容です。ここからはレアなケースに入ってくると思います。

■支持方法(施主の意向など)

思わず「それいる?」と言ってしまいそうな配管の支持を要求されることがあります。例をあげますね。

・鋼材に全ねじが通る箇所は全てダブルナットにする
・雄ねじアンカーに全ねじを吊るす時はナットを入れる
・鋼材を躯体面に固定する時はアンカー3発以上(普通は2発)で固定する

これらは最初から指示されて入ればそんなに煩わしくはないのですが、後々言われとスーパー面倒なことになります。少し想像するだけで背筋が凍りますね。笑

とはいえ、ここまで「後からだと超大変なこと」に関しては、さすがに監督からも最初に指示があると思いますよ。


■防食処理

配管や支持金物への防食処理は非常に重要ですよね。なぜなら、適切に防食処理されていなければ、配管の寿命が縮まってしまいますし、地震などへの耐久性も著しく低下してしまうからです。

それは既によく分かっているとは思うのですが、「そこまでやるか・・・」というような箇所を指摘されることもしばしば。例えば以下のような箇所です。

・バンド関係に使う全ねじの切り口全て錆止め
・全ねじにプライヤーをかけた箇所へ錆止め
・鋼管のねじ切り時に旋盤で固定した箇所へ錆止め
・ピット内配管で使ったVB管全てに防食テープ(保温箇所も全て)
・フランジに対する絶縁スリーブと絶縁ワッシャーの使用

防食処理は確かにやっておくに越したことはないのですが、個人的にはそこまで神経質にやる必要はないと思っています。

なぜなら、長年経過した建物の改修工事をやる際に、腐食してどうしようもなくなっている箇所というのは、ねじ部や外部で雨ざらしになっている箇所などに限られるからです。

腐食が発生しうる箇所を全て潰すというのは不可能に近いので、細かいところは指示された箇所だけで良いかと思います。


■器具(水栓類)の傷

器具付けで水栓類をねじ込む際には、モンキーやイギリスを使用するかと思います。それで、何個、何十個とねじ込みを行っていると、たまに少しレンチが滑ったり地面に擦れたりして傷がついてしまうことがありますよね。

このような傷は、言わなければ気が付かないようなレベルですが、見る人は見ます。どんな些細な傷でも傷には変わらないので、ダメと言われれば変えるしかありません。

なのでねじ込み時に注意するのは当たり前として、イギリス・モーターレンチ・水栓レンチなど、なるべく傷がつきにくい工具を使うよう心がけましょう。


■全数チェック

機器との接続箇所が漏水したり、飲み込みマーキングがされていなかったりした場合に、その1箇所でことが終われば良いのですが、他の箇所もチェックするハメになることがあります。

いわゆる「全数チェック」というやつです。こうなると、数百台ある機器との接続箇所を全て点検効果らチェックするとか、マーキングの有無を全ての継手でチェックして無い場合は一旦継手外して確認、みたいな気が遠くなる作業を強いられるケースも。

そうならないためにはとにかく施工を気をつけるしかないのですが、特に「同じことの繰り返し」になる作業は気を抜かずに行ってください。先ほどからあげている機器との接続やマーキングなどは、その最たる例ですね。


レベル4:いやそれ職人イジメでしょ

ここまでくると、もはや予想は不可能です。もし是正事項として指摘されたら事故にあったと思って腹をくくるしかありません。ただ、中にはこんな指摘をする人もいるということを知っていただき、事例として頭の片隅に入れておいてください。

■ナット部に全てマーキング

施工でナットを扱う機会はたくさんありますが、締付け後にマーキングをすることがありますよね。例えば、MD継手のボルトナットや、相フランジのボルトナット、ダブルナットにした箇所などです。

その辺りは必要ですし逆に当たり前ですが、稀にとんでもない箇所のマーキングを要求された事例がありました。

それは、バンド類に使用されている全てのナット部へのマーキングです。吊りバンドのタンバックルやバンド部のナットに始まり、立てバンド・レベルバンドなどのナット部全てに、線を引く形でマーキングを施すというもの。

正直なところ「それやって誰が得するの?」と思いましたが、その時は追加工事扱いになったので渋々やりました。


■器具付けでの過度な見た目重視

器具付けまで終えると、私たち配管工としての役目もほぼ終わり、仕上がったことになります。漏れがないことは当然として、仕上げなので見た目もそこそこ重視されますよね。

例えば器具が傾いていたり、メッキ管を通す穴が見えていたりなんてことは許されないわけです。もちろん傷や汚れもそうです。

ただ、ここでもわけの分からない指摘をされることがあります。これも例をあげますね。

・ペーパーホルダーなど取付けのビスが並ぶさいは「➕」の向きを合わせる
・フレキには少しもムダな曲がりを作らず余長が出たら切り直す
・メッキ管ねじ込み時にはみ出たシールテープは全て取り除く


■排水勾配

排水配管に勾配がなければならないのは100%同意できますが、図面通りの勾配(1/100や1/50)を100%全ての箇所で確保できていると自信を持って言える人っているのでしょうか?

私は言えませんし、どんなに凄腕の職人でもさすがに無理だと思うのですが、それを求めるが如く指摘をされるケースがあります。

具体的には、デジタルの勾配計を使い、5mピッチくらいで当てていき、少しでも数値が下回れば是正になるというもの。これ、完全にイジメでしょ。


まとめ

どの現場でも検査後の是正事項が0というのは難しいとは思いますが、同じ内容を指摘されないように心がけていれば、限りなく減らしていけるはずです。

今回私がご紹介した内容が、少しでもあなたのムダな時間を減らすのに貢献できれば嬉しいです。


それから、最後にもう1点ぜひお伝えしておきたいことがあります。それは、「是正にならなければいいのではない」ということ。

私たちは職人であり、施主に納得いくものを提供し、喜んでもらうために毎日汗水垂らして頑張っているのです。

なので、是正が無かったから正解とするのではなく、より速くより正確に施工する方法を日々探究していってください。

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