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一万編計画

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一万編の掌編小説(ショートショート)を残していきます。毎日一編ずつ。
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2021年5月の記事一覧

虚言癖。

また嘘をついてしまう。1度嘘に舵をきってしまうと、整合性をつけるために口はよく動く。結果…

物怪の不幸。

油断。エンジンをかけたまま、コンビニエンスストアに立ち寄っていた。今思えば平和ボケと振り…

眠り

今日も眠れない。眠りという営みが初めからなかったのではないかと笑ってしまうようにさえる眼…

芝生の上。

芝生を見ると、僕は思わず寝転んでしまう。土の状況を鑑みる余裕がないくらい、盲目的にそれが…

スケッチ。

スケッチは人生に必要不可欠だ。写真では味気ない。機械を通してしまうと、それは情報になって…

ゾンビくん。

「やりたいこともできることもない君を、誰が求めるんだろう?」 彼は答えられなかった。彼は…

修験道。

絶壁を登っているかのような過酷さ。踏みしめても、踏みしめても階段は続く。何百段と登っても、まだ道は半ばである。 修験道とは、読んで字の如く〝験(しるし)を修める道〟のことである。自然と対峙し、自分の無力さに打ちひしがれながらもひた歩くことで、悟りに似た験を掴み取る。徹底的に自身を追い込むことが、この国の美徳であることはどうも古来から変わらないらしい。 修験道として名を馳せるこの山は、かつては山自体が信仰の対象であった。山を望み、祈る人がいたわけだ。もし、今祈る人がいたとし

磯の鮑の片思い。

言葉には力がある。人を傷つけるだけのナイフのような言葉もあるが、美しく示唆に富む言葉もあ…

時空の狭間。

4月。35人が入れ替わり、立ち替わる。掲示物はすべて清算される。あの一年がなかったかのよう…

バス。

いつもの散歩道を、僕はバスの車窓から眺めている。どのような思考回路を辿って、バスに乗り込…

不思議な学生。

日本のアニメが好きだった。アニメを日本語で楽しみたいと思い、学習を始めた。好きなことに熱…

久方ぶりの教室。

久方ぶりの教室に愕然とした。窮屈な椅子と机。まるで、この国の教育そのものを具現化してるよ…

知恵を愛すると言うこと。

フィロソフィアとは、知恵を愛するという意味だ。知恵は限りある人生を鮮やかなものにするはず…

『今朝は俺が早かつたぞ雀』

今朝は俺が早かつたぞ雀。 尾崎放哉の自由律俳句が好きだった僕は、公園や図書館で句集を繰り返し読んだ。不思議なことに、印象的な句は毎回違う。つらつらと斜読みをしていると、不図目の前に情景が立ち現れる句に遭遇する。そして、しばしその情景の中に自分を置き、ぼおっとする。そういう時間が、僕には欠かせないのだ。 深酒をして、静寂の明仄。気絶に近い睡眠が途切れ、僕は布団から身を起こす。便所に行くが、酔いも覚めずカーテンをあける。頭は軋むが、空気は澄んでいて冷たい。 雀の鳴き声は、朝