CASE 5 annie the clumsy

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 「ここに来る前にアロママッサージ行っちゃった(笑)」と、清々しく打ち合わせ現場へ登場したannie the clumsy(アニーザクラムジー)さん。今回は彼女にお話を伺います!アニーさんは、十代の頃のイギリスホームステイを期に、ウクレレ弾き語りスタイルのシンガーソングライターとして活動を開始。「私不器用だから」と色々謙遜しがちな彼女ですが……DIYで整えたという自室にこもり、日々新しいことに挑戦している、音楽に対して熱心でとっても努力家な人です。現在では多くのCM音楽を手掛けています。

ビデオで記録。その発想はなかった!

― アニーさんの音楽制作のスタイルって、簡単にいうとどんな感じですか?

annie the clumsy(以降:annie) iPhoneのボイスメモにアイデアを録り溜めたり、結構気軽な感じ。タイトルが「新規録音No~」のままでたくさん残ってる(笑)歌い終わったあと、仮のタイトルを言ったりしてるけどね。それでも最後まで聴かなきゃわからないから意味ないけど(笑)歌詞も一緒に入れちゃうかな。私字が汚いから書いても読めないし(笑)

― 歌詞も入れちゃうんですか。

annie そう。あとはビデオ録画もする。タイトルを言って、自分が弾いてる手元を録画して、「ここはEだからね!」みたいな補足言ったり。

― ビデオ録画でデモ作りするの面白いですね(笑)初めて聞きました。でも自分の姿を録るってなんとなく恥ずかしくて抵抗あるかも。

annie 私は弾き語りのビデオとか、YouTubeにアップしてるから抵抗がないのかも。それにメモするのが苦手なのかも。コードとか正しくわからないし。ボイスメモだと結局ほぼ聴き返さなくなるんだよね。たくさん録ったって。だからビデオのほうがいいかな。

― 面白いなあ。ボイスメモにアイデアを吹き込むのとビデオを録画する以外に、本番ではDAWも使っていると思うんですが、アニーさんは今何を使ってますか?

annie 『Logic Pro』を使ってます。最初のころはずっと『GarageBand』でした。でも4年前くらいに今の『Logic Pro』に移行したかな?

― そうなんですね。

annie 音楽をはじめたと同時に宅録もはじめたから、DAWで作曲をやりはじめて7年くらいは経ったかな。初めの頃は、マイクも使ってなくて、ノートパソコン内蔵のマイクを使ってた。懐かし〜……

― アニーさんって、今や多くのCM音楽を手がけていますよね。それらの作業もガレバンでやっていたことってあります?

annie 主にはCM歌唱ですけどね。最初の頃はガレバンでしたよ。もちろん、マイクはちゃんと買いましたけど(笑)

― ガレバンでもいけちゃうんですね!マイクはずっと『Blue bluebird SL』ですか?mmmさんも同じものでしたね。

annie そうそうそうそう。同じ。

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― オーディオインターフェースは何を使っています?

annie 当時、meiちゃん( mei ehara )に相談して選んだ『Steinberg UR22』。

― CASE1の菅原さんと同じ『Steinberg』ですか。なかなか人気ですね〜。ボーカルも家で録ってるんですよね?

annie うん、すごい雑音入るよ。CMの歌唱案件のお仕事は基本的に仮歌を家で録って、その後指定されたスタジオに行って本番を録音するけど、たまに「そのまま(宅録)でもいいよ」って言ってくれることもある。一応雑音が入らないように、夜に録るようにしてるから。ボーカル単体で聴くと車の音がうっすら聞こえるけど(笑)全体で聴けば気づかない。

― 多少なら平気ですよね。アニーさんの音源、それほど雑音がすごいと言う印象はなかったんですが、ちゃんと気をつけているんですねぇ……。ウクレレも『Blue』のマイクで録っているんですか?

annie うん。なるべくラインでは録りたくないから。ラインだとウクレレっぽい音にならなくて。いろいろ音重ねればごまかせるんだけど。

― アコースティックの楽器はラインだと味気なくなりがちですよね。

annie その代わり、ノイズはすごいけど。

― 『Blue』マイクは、特性的にハイが結構録れるので、空気音とかノイズが目立つんですよね……。ボーカルを録る場合は、アニーさんの声質と相性が良いと思いますが。ウクレレを録音するためのマイクを探してもいいかも。

annie すごいね。みんなよくわかりますね。近くに住んでほしい。

― ははは(笑)

annie いなくって。周りに分かる人が。

― 私たちも周りもいないので、このDONCAMATIQをはじめたってところはあったりしますよ。

annie あ〜、そういうことね。

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自分に合って、必要な機材ってどんなもの?

annie 宅録をはじめたころ、全部meiちゃんに助けてもらってて。オーディオインターフェースもさあ、設定とか繋ぎ方とか、色々訊いたもん。電源の入れ方があってるのかとか(笑)

― 今はどうでしょう?詳しくなりました?色々機材も購入している印象ですが。

annie 詳しくない〜(笑)!色々買ってることは確かだけど。この前、マイクプリアンプを買ったんですよ、何買ったのか忘れたけど。2万円位の安いやつ。でも届いたらアダプターが日本式じゃなかったの……。だから使ってないもんね。ちゃんと調べないからそうなった。それに、私が住んでるアパートのせいなのかもしれないけど、マイクプリ使っちゃうと逆にノイズが入るから、使ってない。あまりにも音がセンシティブになりすぎて、逆にすごいノイズが入るっていうのかな。もしくは私の設定が間違ってるのかも。使いこなせないだけで。

― 買ったけど使わなくなった機材ってそれ以外にも結構あるんですか?

annie あるある!使いこなせなかったり飽きたりして。私のやってることって本当に勿体無いと思うもん。買って使わないか、売ってる。例えばKORGのちっちゃいリズムマシーンとかサンプラー。2種類買ったじゃん?もう使ってないじゃん?『Teenage engineering Op-1』も、10何万もしたのにあんまり使いこなせてないし。色々買うじゃん、使わないじゃん。せっかく買ったんだから、それを使って一回は音楽作ってみなきゃなあとは思うんだけど。(※その後色々試している様子)

― でもそう思うのはえらいですね。

annie そう。でも本当にそういう機材がたくさんあるよ。ボーカル用のエフェクターも買って、ちゃんと使ってないのに、また別のやつを買うっていう。BOSSの、色んな人が使ってる古い方のやつを買って……何だっけ。メルカリ見ればわかる。

― メルカリで売るんですね。よくヤフオクで機材を探していると「買ってから一回しか使ってないので新品同様です!」って説明に書いてる人がいて、意味がわからないって思ってたんですけど、目の前にいた!(笑)

annie そういう人いるよいるよ〜。

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― 買うときは新品が多いんですか?

annie 新品で買うの、私頭おかしいよね。どうせ売ったり使わなくなるのわかってるのに……。あ、これだ 『TC Helicon voice live touch』(メルカリの出品履歴を見ながら)。BOSSの『Loop Station RC-30』も売ってる。これは売らなきゃよかったって本当に後悔してる。エレキウクレレも売ってる!(笑)まあ、とりあえず買っちゃうんですよね、試してみて合わないと思ったら売っちゃう。

― CASE4のimaiさんがそのスタイルでしたけど、そこまで売ってはいなかったな(笑)しかし、もちろん調べてから買ってますよね?レビューとか多少。

annie 調べますし見ますよ。そういうのを見ると、「自分にもできる」って簡単に思っちゃうんだよね。でも実際買ってみると、それなりに勉強したり練習したり、技術がないとできなかったりするから……(笑)あー無理だってすぐなっちゃう。ノリでいっちゃうんだよね。

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― ウクレレは何本持ってるんですか?

annie 1、2、3……4、5かな!

― 音域によって変えてる?

annie そうそう〜、変えてる。夏っぽい曲を作るときは小さいソプラノのウクレレを使ったり。基本は普通のサイズの『Luna guitars』のコンサートウクレレ」。あとはバンジョレレとか8弦ウクレレ。でもあんまり使ってない。難しくて私の下手がバレる!抑えるの大変。抑えきれてない弦がブリーン!ってなっちゃうし。

― そもそも、なぜウクレレをはじめたんですか?

annie それは、簡単だから〜。

― 音楽始めたいなって思ったときに、ウクレレならできるかもって思ったんですか?

annie うん、そうですね。楽々だって思った。

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― ウクレレの前は別の楽器をやっていたんですか?

annie 一度ギターを挑戦した。でもFコードで挫折した人です。未だに弾けません。それに比べてウクレレは、はじめて長く続けられたね。みんなに「アロハ好きなの?」って言われるけど、まったくそうじゃないの。運びやすいし、ライブのとき楽だし(笑)

― 好きなミュージシャンがギターやベースを弾いていて、それがその楽器をはじめるきっかけになる人は多いと思うんですけど、「楽だから」っていうのは面白いですね(笑)

annie あ、でもその逆はあったかも。シンガーソングライター始めたばかりのとき、ギターを弾く人は結構いるからウクレレだと逆に目立つかなって思ったりした。

― あれっ、意外と戦略的?

annie 戦略的じゃない(笑)あとはウクレレをプレゼントしてもらったっていうのがあるかな。それはもう壊れたけど。

今までと違ったアルバム制作

― 2018年に出した3rdアルバム『Broaden Your Minds,You Must Look Beyond』は、ウクレレ弾き語りをメインとした過去の1stアルバム、2ndアルバムよりも音数が増えましたよね。それぞれ全部アニーさん演奏したんですか?

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annie うん、全部『Logic Pro』で音入れしてる。それから『オムニコード』。オートハープみたいなものですね。オムニコードは本当に活躍してますね。楽で。キーを慣らせばコードが鳴ってくれるし、太いベース音もあったりするので。

― 音は結構作り込んだ感じのアルバムだなと感じたのですが。

annie それはもう『Logic Pro』に内蔵されてる音源のお陰ですよね。

― 『Logic Pro』は音良いですよね。もう仕上がった音になっていて。ループ音源の種類も豊富ですし。

annie でも未だに『Logic Pro』のループドラムの使い方だけはわからないですね。

― 使用する音源を決めるにあたって、『Logic Pro』に内蔵されている音源を全部チェックしたりします?

annie する!一応全部聴いて気に入ったものをピックアップしてます。聴くと楽しいよね、「あ、この音使える!」って。

― 気に入る音源を見つけると曲できそうな気がしますね。ピックアップした上で、お気に入りリストとか作ったりします?

annie 作らない。使いたいときに探すよ。名前で覚えちゃう。ベルならベル検索してやっちゃう。

― 音楽制作で悩みとかあります?

annie アレンジも含めて全部自分で作るとして、間を縫うようなアレンジができないんだよね。ウクレレで弾いて、それに合わせてピアノのコードを調べて重ねるから、鳴りが一緒になっちゃう。

― うーんと、それってつまりどういうことですか?ウクレレのストロークのリズムに合わせてピアノを重ねてしまうってこと?

annie そうだし、ウクレレでGを弾いたとしたら、ピアノでもGを弾いちゃうっていう。

― それは普通じゃないですか?

annie そうなんだけど、全部ジャーンって和音でやっちゃうんだよ。

― あ、なるほど。それぞれのパートが別のことをする、例えばウクレレの伴奏に合わせてピアノが飾りっぽいことをするというようなことができないってことですかね?

annie そう。どうにか頑張って合う音を探すけど、結局私の曲はずっと一緒。展開がなくて。

― ちなみに、曲を作るときはウクレレですか?

annie うん、全部ウクレレ!完成してウクレレが入らない曲も、きっかけはウクレレから。ウクレレでコードから。

― そうなんですね。アニーさんは「展開がずっと一緒」って言いますけど、繰り返しの中にも良い感じに流れが生まれていると思います。ウクレレでどこまで作ってから音を追加していくんですか?

annie ウクレレと歌を全部録ってから音を重ねてく。たまに歌が入る前に音を重ねようと思って挑戦するんだけど、うまくいかなかったんだよね。

― 今回のアルバムは打ち込みのドラムなども入ってますよね、それはなぜ?

annie 前のアルバムたちと差別化したかった。何かしら変えたいなあと。あとアルバムの中で一番最初に作った曲でダンスの曲があるんだけど……。

― 『My Body Is Ready』(M5)?

annie そう、それが一番最初にできて。シンセから始まってシンセで終わる曲だから、それに全体を合わせていった。ドラム入れてからシンセを入れてく。

― 打ち込み?

annie うん。YouTubeでドラムの打ち込み方って調べて、動画見てやってる。

― ははは。結構YouTube見てますね。

annie わかんないからさ。何が先に来るのかとか。

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― 何で打ち込みしてるんですか?

annie 『KORG micro KEY』。短いのを買えばよかった。私長いの買っちゃって。すげー邪魔。幅取るし。

― でも鍵盤数が多いほうがドラムの音数多い音源のときは便利じゃないですか?

annie そうなんだけど。別にどっか行くわけじゃないけど、これどっか行くとき大変だなあって(笑)別の買えばいいんだけどね。

― KORG『NanoKey』とか良いですよ。ベロシティもちゃんと付いてますし。

annie ほんとに?あの平ったいやつ。あれ欲しいなと思ってた。どこ行くわけでもないけど(笑)

― 一曲作るのにどれくらい時間かかる?

annie 作れるときは一日で作れちゃう。でも朝はじめて、深夜とか。

― どのあたりでやめようと思うんですか?

annie 私一回はじめたら、わりと本当に終わりの終わりまで見えないと寝れなくて。そういう自分が嫌だ……。ニットとかもそう。編みはじめて完成させないと夢に出てきちゃうの、毛糸がぐるぐるぐる、なんかちょっとした脅迫観念があるのか(笑)

― ニット編んでるときすごかったよね(笑)ものすごい量を短期間に編んでましたよね。

annie そう、誰にあげるわけでもないのに。

― ミックスもアニーさんがやってるんですか?

annie ミックスはね。最終的にアルバムを作るときは友達にパラで渡してる。前スタジオ経営してた友達がいて技術があるから。クリスマスソングのカバーアルバム『Have Yourself a Merry Clumsy Christmas』も一緒にやってくれた。

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― 自分ではやらないんですか?

annie たまにやりますよ、自分で。

― アニーさんの曲は音数が少ないのが特徴的だなって思っていて。

annie ああ、音数少ないのはスキルがないからだと思ったほうがいいです。

― 少ないけど、最小限の音で良い感じに成り立っててすごいですよ。

annie 歌詞の量が多いから。

― ああ、なるほど。

annie 歌詞の量が多いから、埋められてるんだと思う。

― なるほどなあ。あと、アニーさんてコーラスとかハモリを作るのがうまいなって思います。

annie うん、コーラスは得意かも。でも人によってコーラスの付け方違うよね。癖があるっていうか。王ちゃんの曲で前コーラス吹き込んだ時はそのハモリ方がすっごい難しかった。癖がすごい強くて!全然できないって、全然その音程に合わない。ごめんなさい〜!とか言って(笑)

― コーラスの癖ってありますよね。コーラスっていうか、歌メロの癖っていうか。自分が好きな流れが身についてるんでしょうね。

annie だから難しいよね〜人のを歌うのは。でもそのくせ人が歌ってるのを聴くとコーラスつけたくなるのわかる?

― ははは(笑)わかります。

annie カラオケで友達が歌ってるのに合わせてすげーハモりたい(笑)

― 音楽聴きながらハモったりしちゃうのわかりますよ(笑)

annie でしょう〜!私もそう。ハモるの大好き。でも人に頼まれると怖い(笑)でも最近学んだのは、ヘッドフォンで両耳塞いでて、自分の声が聞こえないとだめで、片耳外してやると自分の生の声を聴きながらできるからやりやすい。

― モニタリングがちゃんとしてればできるってことですね。

annie そうそうそう。

― 家でのモニタリングは?最近スピーカー買ってましたよね?

annie そう、買いました!アイ……アイ〜なんとかってやつ……知らないですか?

― IK MULTIMEDIAの『iLoud』?ちっちゃいけど音がすごい……。

annie そうそれ!すごい良いの!びっくりしちゃった。それこそmeiちゃんからスピーカー貰おうとしてたけど、大きすぎたから部屋に合いそうなのを探した。私の部屋6畳だから。『iLoud』でもう十分。音もでかいし、低音とかも気持ちいい。夜はさすがに音出さないけど、お昼は普通に出してる。ヘッドフォンよりもスピーカーで聴くほうがやりやすいっていうことも、最近学んだことの一つ。ヘッドフォンから聴いてるのとは違うじゃん。

― 普段音楽聞く時もスピーカー?

annie うん、でも夜は低音が響いちゃうから使わない。昼は掃除しながら爆音で……でもそのせいでぜんぜん掃除できてない(笑)踊っちゃって。

― 音を出せると良いですよね。

annie モニターってほんとに重要なんだって実感した。

― 作る音楽も変わります。狭い感じじゃなくなるというか。空気に乗るだけで本当に違う。

annie でも防音機能が欲しいね、部屋に。そうすれば24時間できるじゃないですか?一軒家に引っ越すか、たまに悩む。でも防音にするのめっちゃ高いよね……。

生活と制作の環境。距離感の保ち方

― これは毎回質問しているんですが、アニーさんは曲を作ろうと思って作ってます?

annie どうだろう。前はねぇ、作ろうと思わなくてもぽんぽん浮かんでましたね。純粋に楽しかったからその頃は。

― やっぱりそうなんですね。全員そう言います(笑)

annie 今は自分の曲を作るよりも、CMの音楽を作ることの方が多いから。仕事になると違うじゃん?趣味で作ってた頃は死ぬほど浮かんできてて、日常のことでも「何でも曲にしちゃおう」って思えたんだけど、今はそうじゃなくなったかも。

― 確かに。CM音楽を仕事として作ってますもんね。じゃあ今は、作曲の時間を取って、作ろうと思ってはじめる感じですか?

annie 自分の曲を作るときだったら、積極的に取ろうと思って取ってはいないね。今は頭の中が空だから、びっくりするほど浮かばなくて。

― なるほど。

annie 今、自分が何をしたいのかわからないっていう時期にいて、このまま続け……ま、続けますよ?けど周りのミュージシャンたちがどんどん新しいアルバムを出していくじゃないですか。「羨ましいな」とはやっぱり思ってて。でもいざやろうとなっても簡単にはいかなくて。

― その気持ちはよくわかります。それぞれリリースのスピードが早いですよね。もう出すの!?って。

annie そうなの。アルバムの完成を目指すとき、全体像を考えてから作ったほうが楽だって、3rdアルバムを作ったあとに気が付いて。前はただ順番にできた曲を集めただけだったけど、全体像を決められれば、それを軸に曲が作れるじゃん。全体像を探してる感じです。今は。

― 全体像っていうのは、題材とかテーマってこと?

annie 題材、テーマ。そうそう。

― つまりCM音楽の作曲依頼みたいに、テーマを与えられたら作りやすい?

annie そう!そうなっちゃった。なっちゃったのよ。悲しいことに……。

― 確かに、自分自身の作品となると、テーマを考えるってなかなか難しいことですよね。

annie そう、今そういうの無いのよ〜。刺激的な暮らししてないから(笑)

― その曲がぽんぽんできていたときって、アニーさんはテーマを見つけられていたのかな。

annie どうだろう。とにかく、誰かに聴かせたいわけでもなく、自分で自分の曲を作れること自体が面白いって思ってた。今も楽しいけど、前と比べるとそうでもなくなちゃってんのかなって思うこともある。

― それでいうと、2018年のアルバムの作業中は楽しかったんですか?

annie それはすごい楽しかった。本当はレーベルからリリースしようとも考えたけど、自由に、何かに縛られずに、好きなようにやろうかなって思って作ったから楽しかったかな。作ってるときは楽しいよ。終わると燃え尽きちゃって次出すまでが長いけど。あと最近、SNSと距離を置こうと思って、Twitterとかも辞めた。

― それはまた何故?

annie みんながキラキラしているように見えて。私、暗いときはすごい暗いし、「みんないいなあ」って、そういうことが結構、音楽制作にとって悪影響になることがあるから。

― わかります。最近はそういうことも顕著で、アニーさんと同じ様にSNSを辞める人多いんじゃないですかね。見なくてもいいこと、知らなくてもいいことが多いから。

annie ほんとに!?なんか、みんな楽しそうじゃん、イベントやったり行ったり。

― そういうときだけみんな書き込みますからね。

annie そうね。キラキラしてるのを見たくないっていうのもあるけど、みんなの不安とか感じ取れて、自分に立ち返ると「私もそうなったら嫌だな」暗くなる。

― そうですね。ちょっと前までなかったものなのに。不思議ですね。必要ないんでしょうね。SNSのそれとはちょっと違いますけど、自分の気分を害す出来事が続いて、その反動で曲できたりすることはあります?

annie それがねぇ、あるの。落ち込んでるときは歌詞がいっぱい浮かぶんだよね。でも暗い歌詞だよ、わかる?暗い歌詞だから曲にしたくないって思っちゃうんだよね。

頑張るアニーちゃん。病院に搬送される


― 何かの曲を聴いて、創作意欲が出て曲を作ったりとかあります?

annie 全体像に悩んでる中、最近それのほうが多いかもしれないな〜。例えば王ちゃん(王舟のこと)の「楽しく〜騒いで〜」(「とうもろこし畑」)とか聴いて、こんなの作りたいって思ったよ。実際作れてないけど。カバーもしたかったけど、難しくて。

― ウクレレだから、ギターみたいに和音を濁らせることもできないですし、ニュアンスを出すのが大変なのかもしれないですね。

annie そうなのよ、明るくなっちゃうから。

― 最近は何か聴いてます?

annie ビリー・アイリッシュとか。

― お、良いですよね。

annie あんな若い子がこんなことできるの!?普通。とか思いながら聴いてる。声も良いしね。すげーささやくよね。ささやくのにビブラートが作ってのがすごいなと思って。あ、私ビブラートできるようになったの!

― おお、ビブラート。

annie でもね、練習してたら過呼吸になって、病院運ばれたの(笑)

― えっ!?

annie 間違った練習の仕方をしてて、そしたらいくら息を吸ってももう出なくて、もう真っ青になっちゃって、パパが「どうしたの?」って。だから「お願い……救急車呼んで……」って言って(笑)その時は過呼吸ってものがどんなものかを知らないから。来た救急車隊員から「酸素100%ですけどね」「過呼吸だよね」って言われて(笑)まあそのまま連れてってもらったけど(笑)

― どんだけ練習したんですか(笑)

annie その日は4時間くらい練習してた、ずーっと。でも正しいやり方なんて知らないから。YouTube見て見様見真似。……完成した今も多分自己流だと思うんだけど。

― その成果、聴いてみたいですね(笑)

annie でも恥ずかしくてね、まだお聴かせできるようなもんじゃない。

― まだ楽曲には使ってないんですか?

annie カラオケでしか使ってない(笑)

日本語の歌詞、英語の歌詞

annie 日本語の歌詞って書けないって思ってたんだけど、実際書いてみたらと意外と書けた。けど、やっぱり難しいんだよね。

― 日本語の歌詞もつくるけど、デモを考えるときは英語が多い?

annie 日本語の曲だったら日本語から作るよ。けど、うまくはまらないんだよね。

― 自分が思いつくメロディにはまらない?

annie そう、はまらない。

― ありますよね、そういうこと。メロディっていうか歌い方にはまらないのかな。アニーさんの歌って、すごくリズミカルで、ワン、ツーってフックがあって駆け上がってく感じですよね。日本語だとそれがやり辛いのかも。グルーヴが異なるというか。曖昧に聞こえても良い言葉が英語より少ないのかも。

annie ああ〜。

― 「ぃっただきまーっす」みたいな、「い」をすこし潜めてしゃべると変というか、ちゃんと喋らないと、ふざけてるように聞こえちゃうとか。

annie ははは(笑)なるほどね。そうかも。でも次アルバムを作るとしたら日本語の曲を一曲入れたいと思ってるから頑張らないと。

― 最近ヒップホップやってるじゃないですか。あれすごくアニーさんに合ってますよね。良いです。

annie でもみんなすごい厳しかった。「あと0.1秒早くフロウ!」とか言われて、「わかんないよ!」って(笑)

― 日本語の曲をカバーしたりはしないんですか?そういうの、参考になってくるかもしれないですよ。

annie うーん、知り合いとか友達の曲を聴いたりはする。日本語の歌詞書かなきゃいけなかったときはふたりの曲(王舟とmei ehara)を参考にしました!

― おお、すごい身近な(笑)

annie そうよ〜、身近な曲じゃなきゃ聴けなくて。そもそも知らないからそんなに。でも最近知った青葉さん……?

― 青葉市子さん?

annie そう、すっごい良いね!あの人。びっくりしちゃった。たまたま王ちゃんとかmeiちゃんの曲をSportifyでかけてると入ってくるの。聴いててすっと入ってきた。「え、洋楽?」って最初一瞬思った。聴いてたら日本語だって気付いたけど。

― 青葉さんの曲もアニーさんの曲も、人に伝わりやすい雰囲気があると思います。素直な感じ。

annie 素直な感じ?うん、私素直なんだよねぇ〜〜(笑)


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annie the clumsy(アニーザクラムジー) 2011年 ニュージランドのコメディデュオ”Flight of the Conchords”に影響を受け、 ウクレレとオムニコードを使いながら、不器用ながらも宅録での音楽制作を始める。 2018年6月には、3rdアルバム『Broaden Your Minds, You Must Look Beyonds.』 を自主リリース。2016年 Rallye Labelからリリースしたクリスマスアルバム『Have Yourself a Merry Clumsy Christmas』は、マルイのクリスマスBGMに選出された。
その他自身の制作以外にも、シンガーソングライター王舟のツアー・サポートにコーラスとして参加、 ヒップポップグループとのコラボレーション、大人気アニメ「アドベンチャー・タイム」のイベント出演。多数のTV,Web等のコマーシャル楽曲を手掛け、女優としても出演するなど、多岐にわたって活躍している。そんな彼女の夢はFlight of the ConchordsのJemaineとBretと曲を作ること。https://annietheclumsy.com





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