開発しておわり、ではないコロナワクチン開発の現場
7/30放送分のガイアの夜明け『ワクチンの真実2 独占! 国産ワクチン開発』を見た。
後発組はどんどん治験がやりにくくなる
国内数社がワクチン開発を進めていること
ワクチン開発は資金と時間が掛かること
開発と同時に量産体制も考えないといけないこと
など色々知れておもしろいのだが、1つ気付かされたことがあった。
それは、国民のワクチン接種が進めば進むほど大規模な治験が難しくなるという事実だ。
考えてみれば至極当たり前のことなのだが、効果があるか副反応はどうかなどを確かめるので、既に他社ワクチンを接種して抗体を持っている人を対象にはできない。
承認済みワクチンの接種が国民の大半に行き届いてしまうと、皮肉なことに国内での大規模治験は絶望的になってしまうのだ。
国外のワクチン接種が進んでいない国で被験者を探すしかなくなってしまう。
しかも、ワクチンの治験ではワクチンを接種する人とプラセボ(偽薬)を摂取する人をあえて作り、互いの結果を比較するのが一般的だ。
番組内では、これだけファイザーやモデルナのワクチン接種が進んでいる中で、プラセボを打たれて数ヵ月間本物のワクチン接種ができない(←事後経過を見るためと思われる)というリスクを被験者に背負わせるのは、倫理的・人道的に許されるのかと悩む場面が出てきた。
これについては、厚労省がプラセボなしでもいいように方針変更したそうだが、なんにせよ後発組はなにかと苦労があるなという印象だ。
量産体制を整えるのもまた大変
こんな記事も出ているが、コロナ関連の様々な治療薬含めワクチン等の製造現場は、原料や資器材の不足に悩まされているようだ。
私は今アメリカのノババックス社の動向を追っているのだが、各国と既に供給契約を結んでいるこの会社も、例に漏れず量産体制の構築に追われているようだ。
契約国へのワクチン供給時期や、各国機関へのEUA(緊急使用許可)申請の後ろ倒しが発表されている。
今後、ワクチンの効果がどれくらいの期間持続するのか、変異株にどれくらい有効でい続けられるのか、供給が滞らないか、まだまだ確証がないことが多い。
既に3回目の追加接種(ブースター)の検討の話が出ているが、いかんせん突貫で開発したワクチンであることは否定のしようがない事実なので、まだまだ油断はできない。
承認済みの国産ワクチンがあるということは、国内への優先的・安定的供給、今後の改良版開発や接種データの蓄積など、様々な観点で重要である。
もはや国家安全保障の問題でもあるので、今後の動向を注視したい。
※欧米と日本のスピード感の差は、長年の研究成果の積み重ねとそれを後ろ支えする政府方針に依るところが大きいという記事がいくつか出ているので、それらを読んで感じたことはまた追い追い書くかもしれない。
ワクチンを囲い込む強国
パンデミックを最短で抑制するには先進国がワクチンを我先に囲うのではなく、人口比に応じて世界各国に配分すべきだというシミュレーション結果と見解がどこかの機関から発表されていたのを見たが、結局は強い国がぶん取っていく有り様である。
そもそもワクチン開発企業が偏在しているし、事が事だけに自国優先にならざるを得ないので、当然ではあるが。
COVAXファシリティのような枠組みがあるのは、せめてもの救いだろうか。
他にも、各国が無償での供与なども行っている。
南米のチリが中国企業製のワクチンを使用していたりと、今後の国益や外交を考慮した水面下のワクチン戦略はどこも進めているのだろう。
話は少し変わるが、最近知って驚いたことがある。
ロシア国内では国産ワクチンへの不信感が強く、未だにワクチン接種があまり進んでいないそうなのだ。
記事にもあるように、ロシアのワクチン承認や接種開始がかなり早かったのは私も記憶している。
この国産ワクチン不信がプーチン政権の支持率に影響しているのか、あるいは政府のコロナ対応への不満が聞かれる日本国内の状況との類似点の有無など、少し興味深い話な気もする。
'21/08/22 最終更新
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