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人的/物的医療資源をいかに集約的・効率的に運用できるか

なぜ日本は医療逼迫するのか?

これまで世界各国の報道を見ていると、新規感染者数等が長い間1桁少なかった(言わずもがな現在は状況が変わってきている)日本がなぜここまで医療逼迫しているか謎だったのだが、少しヒントが掴めたかもしれない。

日本は五輪無観客、英米はノーマスクでスタンド満員…この差はなぜ?』という記事において、
日本は単位人口あたりの病床数は多い一方で、民間の医療機関が大半なため政府主導で医療の集約化が進めにくいという点が触れられていたのだ。

 

無論、他にも要因はあるのだろう。

各国がこの緊急事態下でどれくらい手厚い治療をしているのかも違うだろうし、日本のように皆保険制度で貧富に関わらず皆が医者に掛かりやすい国ばかりではないだろう。
感染症関連法制の違い、通常診療の占めるウェイトの差異など、たぶん色々関係してくるのだとは思う。

 

ただ、医療資源、特に人的資源の集約と効率化は重要であり、
たしかイギリスだったか一般人をワクチン接種要員として訓練したという話は、医師や看護師を最も必要な現場に集中投入するという意味で注目すべき手法だと感じる。

 

 

墨田区の戦略

そんな中、国内の興味深い事例もある。

 

墨田区では独自の医療体制を敷いており、様々な役割分担と連携を重ねているそうだが、自宅療養者のケアに関して以下のような記述があった。

並行して、自宅療養者への医師と訪問看護ステーションの看護師の往診、オンライン診療による見守りを軌道に乗せた。8月6日時点で、墨田区には自宅療養413人、入院60人、宿泊療養126人の感染者がいる。
(中略)
「今回の波は、若くて軽症の患者さんが多いのですが、頭が痛い、お腹が痛い、薬が効かない、食べられないという自覚症状で重症だと思い、病院に行く、救急車を呼ぶ。つまり患者さんの不安が病床逼迫の大きな要因の一つなのです。その不安を減らし、安心の灯をどれだけ見せられるかが勝負です。だから往診やオンライン診療でひんぱんに連絡を取って、軽症の説明をし、治療をして落ち着いていただく。
(以下略)

 

実は、この春に大阪で医療崩壊が起きた際、上記で墨田区の保健所長が語ったのと同じ問題が起きていた可能性がある。
4月23日のJIJI.COMの記事から引用する。

大阪市消防局は今月16~18日、自宅療養中のコロナ患者から119番を38件受理。うち26件で搬送先が見つからず救急車が現場で1時間以上待機し、中には7時間20分に及んだケースもあった。

 

38件という数は当時の自宅療養者数全体からすると0.5%程度であり、妥当性の低い通報がどれだけあったかは定かではない。

ただ、自宅療養者の病状把握と適切な移送、もしくは自宅療養よりもリスクを低減でき医療資源も集約的に運用できる大規模会場の設置など、
むやみに119通報数を増やさない体制、医療崩壊を起こしにくい体制づくりは急務であろう。

墨田区内の数百人レベルの規模だから回せたのだと言ってしまうこともできるが、とても示唆に富む戦略であることは間違いない。

 

 

医療体制に関する各方面からのコメント

墨田区では他にも、初期治療が終わり回復した患者を別の病院へ速やかに移送する等の施策により、医療資源の整った病床を常に回転させ最大限活用できるようにしているそうだ。

 

医療資源の集約化に関しては、8月19日放送の『深層NEWS “救える命救えない”どう回避』も参考になる。
※以下のTverでの無料視聴は8月27日19時59分に終了予定。

 

国立病院やJCHO(独立行政法人 地域医療機能推進機構)の病床にはまだ余裕があり活用できること、
コロナ患者受け入れ病院を今のままパラパラと分散させておくのではなく、集約して一般診療と線引きした方が院内感染リスクが下げられること、
自宅療養よりは東京ドームなどの大規模施設の臨時会場に収容し、酸素吸入ができたり医師や看護師が少数であっても常駐している環境の方が、効率的にリスク回避できること、

など興味深い提言がたくさん飛び出している。

 

酸素ステーションでの対応を進めている神奈川県の担当者の話も貼っておく。

 

 

様々な医療関係者が発信するように、現場は必死である。
その現場の「必死」を最大化するような采配を取れる聡明なリーダーが、今必要とされている。

 

'21/08/22 最終更新

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