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ドンマツオ、ビートルズと出会った頃。

 その昔、くるり岸田くんに「ドンさんからはビートルズの影響は全然感じられないっすね」と言われて、いやいやおれはむしろストーンズよりもビートルズから音楽に入った人間で、高校生の頃はビートルズ以外の音楽は聴きもしなかったのだ、と答えていた(ふーん、とあまり納得してなさそうに彼は返してきたが)。

 ボクのビートルズとの出会いは中学生の頃で、学校の掃除の時間に何故かPenny Laneのデパートインストバージョンが流されていて、知らず知らずに覚えていたのであった(まあそれ以外でも子供テレビ番組やCMで断片が流されており、馴染みはあったが)。

 そこで、兄キがビートルズファンという同級生にカセットテープを渡して(高価なクロームテープ)90分の片面に、ビートルズのベストを選んで録音して欲しいと頼んだ(すでに表面にはイデオンの交響曲バージョンが録音済みだった)。一週間ほどして「ほれ」と返されたそのテープには、なんとホワイトアルバムのC面とD面が録音されていた!(◎_◎;)兄キ、さすがだぜ…。

 どちらかと言えばイエスタデイとかレットイットビーとかを期待していたので、ひどく面食らったのを覚えている。何しろ、Birthday から始まってRevolution No.9で終わるのだから…(わざとか、Good Nightは未収録)「獅子は我が子を千尋の谷へ突き落とす」とも言うけれど、兄キは渾身のベストでもってボクのロック力を鍛えようとしてくれたのかも知れない…。

 テープ代も勿体無かったし、ボクもめげることなく毎晩テープを聴き続け、遂にはどの曲も「あー良かー」と思え、そうなった頃には別の友人が貸してくれていたサザンオールスターズが聴けなくなるほどロックが身体に回ってしまっていた。ホワイトアルバムの曲の幅広さと、アンチコマーシャリズムと、アート性(さらにそこはかとないブルース感覚)がロックの原体験であり、基準となったのであった。ラッキーだったと言えよう。兄キ、突き落としてくれてどうもありがとう。

 それもあってか、ズボンズのメンバーにする際にビートルズ聴いてないとかいうやつは問題外で、「おれヒップホップとジャズしか聴いて無いっす」とか言ってた後期ドラマーピットには(やはり)ホワイトアルバムを買って渡して「向かう二週間はこれ以外の音楽を聴かないように」とパワハラかましたりしたなー。反省スンマセン。それでも奴もビートルズすごい!となって、やはり本物の音楽の力はすごいなーと思ったものでした。

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