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さいごの乗り継ぎの電車を待っているいまは、
コロッケが食べたいきもちでいる

久しぶりのとうきょう…東京都、ふるさとだ
あちこちで工事中だった
人混みに紛れなくてもいい 1つ目の訪問先までは、
オシャレな六本木行きのバスに乗ることにした

東京は ぎんなんの季節だった
ことしは すずなりらしく
おなじみの匂いが、風にのって鼻にとどく
予想外に 長居をしていたので
すこしだけ 時間が気になる

ちがってそう…とおもいながら 歩いていると
予想は当たった、道を間違えたらしく
2つ目の予定は あきらめることが決定した
さらに静かで 駅やバス停もない
ただ道がつづいている、歩いている…
風はきもちいい… が、不安もセットだ

1つ目の訪問先で 厨房を見せてもらったとき、
たくさんのサツマイモが
ザルの上で出番をまっていた
だからなのか、焼きいもの香りを
キャッチしたのだった

フタを勝手に空けていたら、
おじいさんが 「おいしいよ」と声をかけてくれた
お昼はこれにしたほうがいいよの、
サインとして受け取る
おひるを 食べ損ねていたのだ

3つ目の用事の時間がせまっていた
さっきのおじいさんに聞いてみようと
この辺りの最寄り駅を尋ねてみた
予想外の駅名に、いま何処にいるのか
全く検討がつかなくなる

到着まで 歩いて15分くらいだそうで、
イチョウを鑑賞しながら
ぎんなんを嗅ぎながら
ウォーキングのひととすれ違いながら
焼きいもを食べながら…
その予想外だった 駅を目指した

どこも ぎんなんはスズナリで、
トングをもって、拾っているひともいた
すこし 拾いたかった

奇跡だ!!
何事もなく、無事、駅にたどり着く
電車を乗り継ぎ 3つ目の訪問先に到着

そうえいば、今日はじめてイスに座った
どれも コレも 異次元に感じる
ぎんなんを拾ってたり
焼きいもを食べていた おなじ時間に、
ココではずっと 音色が響いていたのだね…
ワープして、突然移動してきた感覚がつづく
キラキラを体感した
ドリンクの引き換えもしないで
ねこのもとへ 帰ることにする
夕ごはんを 待っているのだ

乗りかえ駅の通路で 本屋に少しつかまり
改札口に向かう途中、
コロッケが すごく食べたくなった

うちにたどり着かないと
何をたべることになるか分からないけれど、
冷蔵庫にあるやきそばを
キャベツと のこりの豚肉で、つくるのかな
さよなら コロッケ…またね

おなじ東京でも、生まれ育った地元に着くと
「ただいま…」のことばが 浮かぶのに、
30年とちょっと、暮らしたり あそんだりした
その他の東京には「おじゃまします」のキモチに
いつからなったのだろう…と、はじめておもった