【字書き】あなたを唯一無二にする中長編の書き方

1万字前後の話が大半を占める中、字数の面でまず目立つ上に、そこに脳破壊がついてきたら、熱狂的なファンの掴みどりが可能で、下手したら神にもなれる。それが中長編です。

以前の記事では短編を1万字以下としたので、中編は1万字〜5万字、長編はそれ以上、と定義します。
これ、人によって感覚違くてね。いやいや、3万字までは短編でしょ…って方や10万字、はたまた15万字以上じゃないと長編とは呼ばない!って方もいらっしゃるかもしれませんが、これまで私がハマったジャンルにおいては支部で10万字以上はたま〜に見る程度ですし(連載作品の合計字数は置いといて)、オッ長めのが投稿されているな…と思っても5万字以内に収まっている印象です。ジャンルによるかも。
なので、この記事では支部で平均的に見られる字数規模でのレクチャーをしてみたいと思います。
なお、私の作風がR18シリアス寄りなので、そういうのが得意じゃないよって方のお役には立てないかも。ギャグとかエロオンリーで10万字とか書ける人、すごい。まあ、このレベルになってくると、筆力ってよりは単なる得意分野の違いの話になってくるか。

①基本のキ:読者の脳破壊を執筆の軸に置く

脳破壊ってなんそれ〜〜!!って方は上の記事をご参照ください。
つまるところ、物語の起承転結を、「書き手がこうしたいからこうした」を「このキャラだからこそ、こうした」に置き換えられるレベルに解釈を立たせて、物語に落とし込むことです。
そもそもですが、これやらないと最後まで読んでもらえない可能性も高いです。読んでもらえても、消費されて終わる。
「このキャラはこんなこと言わないだろうけど、萌えるからいいや〜!」は短編だと比較的アラが目立ちませんが、5万字以上の世界になってくると、誰の話を読んでいるのかわからなくなってくる。
それに、人物の解釈が浅いまま書くと、人間の動かし方がわからず、自分も何書いてるのかわからなくなってきます。
私は、中長編を書く、という行為は、推しの「人間性」を書く行為だと思っています。
紆余曲折を省いて、萌えを切り取ったのが短編。そして、その紆余曲折を最初から最後まで書くのが中長編。
解釈は置いといて、ひたすらにイチャラブやパロで読者の心をキュンキュンさせるのも、また一興でしょう。
でも、推しの「人間性」の赴くままに話が展開し、読者が新しい推しの顔を発見することができる文章群。それが書けたら、あなたは界隈唯一無二の書き手になれます。
このレベルになると、他に中長編を得意とする書き手がいても、当然人によって解釈や作風は異なるので、「その他大勢」や「似たような話を生産する人たち」には絶対なりません。
ここまで読んで、脳汁ドバドバしてきませんか。別に?そうですか。
では、中長編を書く際の考え方をご紹介していきます。

②最強方程式「推しカプの関係性の変化」×「推しの人間性の変化」

生まれも育ちも違う人間同士。何から何まで相性ぴったりなんてことはあり得ない。まず、それを念頭に置きましょう。
だから、どんな関係性においても、何かしらの引っ掛かりや問題点が必ず存在しています。二人はそれにあえて触れていないだけで、確かにそこに存在している歪み。その解像度をとにかく高めてください。

歪みは大きくなっていく?心の距離が近づくほど?大人になっていくほど?
どういったシチュエーションにおいて価値観がの違いが明らかになって二人を戸惑わせる?そもそも戸惑いもしないのか?
どんな価値観をもっていたから、どんな出来事で、推しは変ろうとした?
などなど…

推しカプの二人がそれぞれどのような価値観を持っていて、どのようなすれ違いや歪みをはらんでいるか、ということをスタート地点に、その課題の表面化、そして帰結まで…これを解釈を軸に描いていくと、あっという間に3万字は超えます。
①でのリンク先でも同じようなことを書いたけど、「相手が好きだから、変わる」だけでは弱いです。むしろ、「う〜ん…関係性に変化を与えるほどの衝撃や、変化を裏付ける推しの価値観の描写が弱い、このエピソードを追加してみようか…」などと試行錯誤して書き綴っていくことに、中長編を書く楽しさがあります。そしてその試行錯誤が読者に深く刺さったりします。そうして帰結にまでたどり着いたとき、読者は大抵発狂します。大好きな推しカプの人間性を脳にぶち込まれるからです。

③気づかないほど自然に伏線を忍ばせる

笑い方とか声の出し方とか、間(ま)とか、普通そんな言い方しないよねって言い方とか。意識して伏線を敷いたことはあまりないのですが、筋書きそのものがキャラクターの解釈に沿って計画されているので、「あの時の受けちゃんの発言はそういう意味だったんですね…!」とか、伏線と認識してくれた読者さんの感想をいただくことも結構多いです。
こうした、具体がわからない程度に帰結を「匂わせる」伏線は、解釈が立っていれば勝手に脳と手が書いてます。自分で伏線とも思っていないし、当然人に気づいて欲しいとも思っていない。
けれど、それは物語の深みになる。推しの「人間性」によって物語全体が展開していると読者に錯覚させることができ、物語という沼に引きずりこむ。
(錯覚としたのは、原作のキャラクターを借りたあくまで二次創作だから、ということと、書き手の意図が一切介入しない物語は存在しないと思っているからです)

とりあえず現時点で言語化できることは書けたかな?
さらに終盤のどんでん返しや、結末を簡潔に地の文のみで書く、セリフのみのラストにする、今後の展開を匂わせて終わる、などの工夫をすると、読後感がとんでもないことになり、もう、読者はオーバーキルです。この辺は読書して手札を集めておくといいと思います。

今回は展開構成に絞って書きましたが、5万字以上になってくると読みやすい文体で書けるとかなり有利かなと思います。
文章表現については私も人にこう!と提示できるほど自信はないのですが、読んでて疲れない文体、何も考えなくても脳に入ってくる文章とはよく言われるので、最低ラインはギリギリクリアしているのかもしれません。
二次創作に美しい文章なんかいらないって過激な論調もありますが、それを追い求めるのが好きだからしょうがない。好きでやってることに、誰にも口を挟む権利はないよね、などと思っています。
文章表現について、書けることあるかな…かなり感覚に頼ってるところもでかいので、いくつか言語化できそうになったら記事にしたいと思います。

それでは本日はこんなところで失礼します。