休校要請は2月。コロナ「今が正念場」がいつまでか小学校の算数で解説してみた。

安倍首相が突然休校要請を出したのは1ヶ月半前の2月27日。当時首相が繰り返し述べていたのが「ここ1、2週間が極めて重要な時期」という内容でした。
2週間どころか1ヶ月半が経ったけど、5月6日までの緊急事態宣言が出されてて事態は一層深刻さを増してるよね。あの時の「ここ1、2週間」は何だったの?毎日「明日から本気出す」と言ってる人なの?ダイエットは明日からなの?
こんな状況だと緊急事態宣言の予定期間である5月に「正念場」が終わるか心配になるよね?ということで今日は政府がちゃんと説明しないので小学生でも分かる算数で「いつまでが正念場」かを雑に解説するね。

◆掛け算だけで雑に理解できる感染爆発
偉い人がやってる計算を理解するためには微分方程式だとかややこしいものが必要になるんだけど、今日は中学以上の数学はいらん。1個だけ覚えてくれ。大事なのは「1人の感染者が、次に何人に感染させるか」という数字。この再生産数と呼ばれる数だけ理解してくれればオッケー。

感染者1人が1人に感染させる場合だと再生産数はちょうど1。最初の1人から次の1人、そして次の1人とドミノ倒しのように1人が1人にずっと伝染させていくイメージね。で、再生産数が0.5なら世代ごとに半減する。最初1,000人でも1,000人⇒500人⇒250人…と感染者はドンドン減っていき、10世代で1人まで減ることになります。逆に再生産数が2の場合だと1人⇒2人⇒4人⇒8人…と倍々ゲームで増えていき、10世代後には約1,000倍に増えることになります。ヤバイ。

この再生産数が高かったのがちょっと前のイタリアや米国。イタリアの再生産数を仮に5、つまり患者1人が5人にうつすと仮定すると100人⇒500人⇒2,500人⇒12,500人と患者は劇的に増えていく。その時に日本の再生産数はイタリアより低かった。1人が1.5人にうつすなら100人⇒150人⇒225人⇒378人だ。3世代で患者数の桁が違うよね。この総数を見て多くの人が「日本は上手く抑え込めている」と思った。でも1.5を繰り返し掛け算すれば分かるんだけど、12世代後には12,975人になってしまう。125倍になる時間が3世代から12世代に変わるだけで、結局爆発しちゃうのね。1.5だろうが5だろうが、再生産数が1を超えてたら最終的に感染者は爆発する。倍々ゲームを早くやるかゆっくりやるかの違いでしかないのです。「日本は抑え込めてる」ではなくて、イタリアの数分の1の速度で確実に崩壊に向かってたのね。ここマスコミ関係者は二度と間違えて伝えないでね。

イタリアと日本

幸いなことにこの再生産数は生活スタイルによって小さくすることが出来る。普通に生活してたら新型コロナの再生産数は2.5くらいと言われているんだけど、日本人全員が毎日飲み会行って濃厚接触してる間は1人の感染者から10人感染するかもしれないし、全国民が食品の買い物以外に外出しない生活をしてる間は1人の感染者から感染するのは0.3人くらいに抑えられるかもしれない。

再生産数が1より大きいと倍々ゲームで感染者は増えていくし、1ちょうどでも今の感染ペースが永遠に続いていく。感染者を減らすためには再生産数を1より小さくしなきゃいけない。通常時は2.5くらいと言われてる新型コロナの再生産数だけど、我々が接触頻度を6割下げれば再生産数も6割下がって1になる。これが現状維持の数字。でも既に一部で医療崩壊が発生しているのに現状維持じゃダメだよね。だから最低でも7割、なるべく8割は削減しようって話になってんの。

しかも感染者が次の人に感染させるまでにはタイムラグがある。「今の努力」が結果になるのはザックリ2週間後。それまでの間いままで通りのペースで感染が増えるとしたら2週間後の感染者数は軽く医療キャパを超えるものになっている。病院は診察を求める人であふれ、感染者と非感染者が3密の状態で長時間待たされる。感染ペースは上昇していく。この状況を短期間で終わらせるために、今すぐ再生産数を1より大きく下げる必要があるのね。

◆行動制限はいつまで必要?
自粛などで再生産数を1未満に抑えるのが大事なのはわかった。問題になるのは「それっていつまで続ければいいの?」って話だよね。次はこの計算をしてみましょう。

通常時の再生産数が2.5なら、接触を8割減らした時の再生産数は0.5。つまり1世代(約2週間)で半減します。この文章を書いている12日は1日の新規感染者数が約500人なので、500人⇒250人⇒125人…と減らしていくと9世代目で1人になります。非常事態宣言が終わる5月どころか8月ですね。

次に1人になった後に普段の生活に戻ったと仮定しましょう。普段どおりの生活をすると再生産数は2.5に戻ります。つまり1人⇒2.5人⇒6.25人…となり、7世代後には今の500人を超えてしまうことになります。ダメじゃん。感染症の流行が第2波、第3波とぶり返すのはコレです。感染者が1人でも残っている限り、気を緩めるとすぐに倍々ゲームで増えちゃうんですね。

「だったら最後の1人が治るまで自粛だ!」って考えもありますが、現代では不可能です。日本だけが頑張っても海外で定着するから。先進国ですら制御できないコロナを全ての後進国が制御できる訳ないですよね。全ての国で同時に根絶しない限り、この作戦は成功しません。接触8割減を数か月継続しても根絶できそうにないのに、全ての国がこれ以上のことを実行できる見込みは絶望的ですよね。だからこの感染症はずーっと残ります。中国のように一度感染者を劇的に減らした国でも気を抜くとすぐに次の波が来ます。

「でも感染者は免疫が出来るから、集団免疫でいつか収束するのでは?」って意見もあります。確かに人口の6割が免疫を獲得して伝染させないようになれば普通に暮らしてても再生産数は1に抑えられます。でも1日に500人という今のペースで免疫獲得者が増えても1億2,000万人の6割に達するには400年かかります。我々みんな死んでる。検査漏れの人が確認された感染者の10倍いるとしても40年。40年間の自粛って無理じゃない?

ということでこのペースで集団免疫作戦は難しいです。十分な集団免疫を獲得するためには、感染爆発が発生して我々の6割がコロナに感染しなきゃいけない。致死率を2%とすると144万人が亡くなる計算です。ほっとけば勝手に感染爆発が起きるので、この集団免疫作戦を実行するのは簡単です。簡単だけど、それを望む人は少数派でしょう。

集団免疫作戦以外に我々が現実的に出来るのはワクチンや特効薬で人類がコロナを制御できる日を待つことです。人類の知恵が解決策を見つける日まで感染者数を最小限に抑えてしのぐのです。問題はこの解決策が見つかるまでどのくらい時間がかかるか。劇的に効く特効薬が奇跡的に発見されればいいけど、通常のワクチンができるまで1年くらいはかかるんじゃないかと言われています。開発しても世界人口の数割に供給できるまでには更に多くの時間が必要でしょう。普通に行ったら1年以上の長期戦が確定してるんです。「ここ1、2週間が極めて重要」じゃなくて、医学的な大発見が無い限り今後1年はずっと重要なのね。

◆1年以上続きそうなコロナ、どう対応したらいい?
安倍首相はもちろん、与野党の全政治家はこの現実を受け止めた上で中期的な政策をやんなきゃいけないんです。決して「1~2週間頑張ればなんとかなる!」なんて甘いもんじゃなくて、1年以上は行動抑制が必要な前提で動かなきゃいけないんです。これは緊急事態宣言どころか休校要請の前から明白だった科学的事実。1ヶ月の休校で誤魔化せる話じゃないんです。1年休校したら全チビッコが致命的に勉強できなくなるから、あのタイミングでオンライン移行の準備なり早急な対応が必要だったんです。
政府は不都合な真実を伝えた上で、それでも強めの行動抑制が必要な理由を説明しなきゃいけない。「あと2週間!あと1ヶ月!」って1年以上繰り返されたら国民も持たないよ。その上で、国会なんて今すぐオンラインに移行しなよ。物理的に集まる必要性が皆無の国会のためにこの時期に全国から数百人の議員が集まるの意味不明。一般人に出社自粛要請する前に自分もやろうよ。一般の企業には運送やら医療やら、物理的に人が行かないと不可能な仕事が山ほどあるんだから、国会みたいな会議は真っ先に自宅勤務にすべき業種だよね。このまま国会強行するならいつか議員に集団感染が発生すると思うよ。

一方で我々民間の人も「1年以上続く可能性が高い」って事実を直視した行動が必要になってきます。直近の売上が激減した会社は、これが1年以上続く未来を想像してみてください。この減収を年単位で耐え切る経営体力はありますか? 凄く難しい課題だけど、これから続く自粛時代を乗り切るようにビジネスモデルを考え直す必要があります。在宅勤務要請は5月以降も頻発するかもしれません。いずれ迫られる課題なら、先延ばしにせず今やりましょう。

◆8割減の正念場から6割減のやや正念場へ
なかなか難儀な問題ですが、ワクチンの開発までずっと行動8割減をする必要がある訳ではありません。今は1日500人程度の新規感染者が報告されていますが、行動を8割減にすればいずれこの数字は下がります。この件数が十分に下がったら制限を弱めて「それ以上増えないレベル」つまり8割ではなく6割の行動減に移行すればいいんです。

感染者戦略

8割から6割に減ったらかなりのことが出来そう。今はほとんどのスポーツが休止状態に追い込まれてるけど、6割減で良い状態ならドーム数万人を集めるのはダメでも選手だけで無観客試合をするのは大丈夫そう。チケット代の収入はゼロになるけど、オンラインでペイパービュー(試聴ごとに課金)をやれば収入ゼロよりずっといいよね。何より選手の活躍の場が作れるのが大きい。
その一方でテレビは大人数のチームで作ってるドラマとかの番組がコロナでどんどん制作できなくなってくと思う。番組表に穴が開く。じゃあそこにスポーツの中継入れればいいよね。放映権払って選手にもお金が回って、番組の穴も埋まる。スポーツ以外でも無観客の演劇やコンサートを入れてもいい。互いの足りないパーツを互いが補い合ってこの危機をしのぐしかないよね。

◆まとめ
・再生産数が長い期間1を超えると地獄
・再生数が1だと感染者数は横ばい、それ未満だと減衰
・ワクチン出来るまでは再生産数を1以下に抑える必要がある
・だから「正念場」が続くのは1年以上と考えるべき
・ただし8割減を続けられれば、どこかで抑制は緩和できる
・政治も教育もビジネスも、これらを前提に再検討が必要

僕も関係するイベントの収益が全部飛んじゃったんだけど、嘆くだけじゃ何も生まれないんだよね。こんな時期だからこそ知恵を出してコロナを乗り切りましょう!

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