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フェチへの目覚め

夏の想い出

幼い頃の私は本ばかり読んでいる大人しい子でした。

小学3年生の夏休み。
好きな本を買っておいでと言われ、本屋で出会ったのが
ポプラ社から出ていた江戸川乱歩の少年探偵団シリーズ『時計塔の秘密』だったのです。

いまの私のフェチの全てがこの世界に詰まっていると思います。

手袋フェチ
人形フェチ
エナメルフェチ
は、確実に江戸川乱歩の影響です。

東京下町に住む子供だった私は、浅草〜上野〜向島〜湯島を自転車で駆け巡りながら
「ここがあの場面の場所なのだな」
と心をときめかせ、菊人形や蝋人形を見ては
「この中に怪人二十面相が姿を隠しているかも」
東京タワーに上っては
「あの売店のお爺さんは、もしかして明智小五郎の変装した姿かも」
と想像を逞しくしたものでした。
(当時の東京タワーには、おどろおどろしい蝋人形がまだあったのです)

エナメルとの出会い

私の祖母はお洒落な女性でした。
60歳を過ぎても、家の中でも紅を引きコルセットを締めスカートを履き、外出する時にはパンプスとハンドバッグに日傘を差して出掛ける。
72歳で脚を折るまで、そのスタイルを貫きました。

いまなら解るのですが、パンプスを履き続けるのは脚に相当な負担だったと思います。
祖母は美意識の高い女性だったのでしょう。

祖母のお気に入りのハンドバッグの1つにシャネルのマトラッセというキルティングのエナメルバッグが有りました。

当時の私はシャネルが何なのか全く解っていませんでしたが、チェーンの持ち手やエナメルの艶や綺麗に並んだキルティングの模様や紅やハンカチ程度しか入らないエレガントで優美なバッグに魅了されました。

まるで江戸川乱歩に出て来る貴婦人が持っているバッグそのもののように思えたのです。

祖母が見ていない時に、こっそり衣装部屋に入りレースのショールやエナメルのバッグやサテンの手袋などを身に着けてこっそり鏡に写してうっとりしていました。

たいていは、後でバレて怒られるのですけどね。

もちろん当時の私には、その甘美な時間がフェチや性と結びつくはずもないのですが。
その後、エナメルフェチがきっかけになりSMの世界を知るのは、そこから10年後の話です。

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