見出し画像

基本情報技術者試験の存在意義を確認した1日。

何の話か

IPA(情報処理機構)が主催する情報技術者試験。中でも基本情報技術者は年間約10~20万人が申し込む名の知れた国家資格の1つである。
企業が社員に対して入社時、研修期間中に取得を推奨することや、社内評価制度の判断軸に組み込まれていたり、合格時に褒賞金を支給する例もある。つまり、これらの企業はこの資格(基本情報技術者)の価値を認めている。

一方で、私の周りで働く先輩エンジニアや、資格取得済のメンバから以下のようなことも耳にする。
「資格(基本情報技術者)と実業務の業務は別物。」
たまたま見たYouTuberも同じようなことを言っていたので、おそらく私の周りだけでなく、この資格に価値を感じていない人も一定数いるのは事実であろう。また、書いてる私も何に価値があるのか言語化できない一人である。

私が知る範囲の多くの国家資格は、資格保有者には保有者にしかない権利が与えられる。保有者に与えられる資格が明確であるから、価値を理解できる。
基本情報技術者(他の情報処理技術者資格も同じ)の場合、保有者には何の資格が与えられているのであろうか。その資格を言語化できないことこそが、価値を計れない原因であることに気づく。

・電気工事士→電気工事士法に則り、保有者のみ実施して良い業務がある。資格が明確。価値を理解できる。
・危険物取扱者→消防法に則り、保有者のみ実施して良い業務がある資格が明確。価値を理解できる。
・基本情報技術者→ そもそも何の資格を与えられている?言語化できないから価値と認められない(私はこれに当たる)

調べた結果

結論、IPAのホームページには基本情報技術者とは明確に何の資格かが定義されていた。
以下原文引用(https://www.jitec.ipa.go.jp/1_13download/youkou_ver4_5.pdf)

業務役割
基本戦略立案又は IT ソリューション・製品・サービスを実現する業務に従事し,上 位者の指導の下に,次のいずれかの役割を果たす。
   1.需要者(企業経営,社会システム)が直面する課題に対して,情報技術を活用 した戦略立案に参加する。
   2.システムの設計・開発を行い,又は汎用製品の最適組合せ(インテグレーショ ン)によって,信頼性・生産性の高いシステムを構築する。また,その安定的な 運用サービスの実現に貢献する。

期待する技術水準
1.情報技術を活用した戦略立案に関し,担当業務に応じて次の知識・技能が要求さ れる。
   1 対象とする業種・業務に関する基本的な事項を理解し,担当業務に活用でき る。
   2 上位者の指導の下に,情報戦略に関する予測・分析・評価ができる。
   3 上位者の指導の下に,提案活動に参加できる。
2.システムの設計・開発・運用に関し,担当業務に応じて次の知識・技能が要求さ れる。
   1 情報技術全般に関する基本的な事項を理解し,担当業務に活用できる。
   2 上位者の指導の下に,システムの設計・開発・運用ができる。
   3 上位者の指導の下に,ソフトウェアを設計できる。
   4 上位者の方針を理解し,自らソフトウェアを開発できる。

また、情報処理技術者試験自体の目的は以下と定義されていることも知る。

1.情報処理技術者に目標を示し、刺激を与えることによって、その技術の向上に資すること。
2.情報処理技術者として備えるべき能力についての水準を示すことにより、学校教育、職業教育、企業内教育等における教育の水準の確保に資すること。
3.情報技術を利用する企業、官庁などが情報処理技術者の採用を行う際に役立つよう客観的な評価の尺度を提供し、これを通じて情報処理技術者の社会的地位の確立を図ること。

ここまでくると、企業は価値を感じ、私含めた周りの人々は価値を感じにくかった冒頭の話とすこし繋がってきた。
①基本情報技術者の保有者に与えられる資格
②その資格に対する企業目線の価値
③実務に取り組む人間の資格への期待値と実際の存在意義の乖離
にわけて冒頭の話との繋がりを私なりの解釈で説明してみる。

①基本情報技術者の保有者に与えられる資格
・資格保有者のみに与えられる権利等は法令上定められているわけではない。(電気工事士等とは違い、免許的な効能はない。)
・IPAが「期待する技術水準に記載された事項」を満たしていると認めている。
解釈抜きの事実のみで語るとこの二点であろう。ここは予想と大きな乖離なく改めて言語化するとこういうことなのかあという感じ。

②その資格に対する企業目線の価値
仮に情報処理技術者試験がない世の中をイメージすると価値を理解しやすそうだ。この場合、各社はIT人材の評価ルールを自社で0から策定し、技術変遷にあわせて定義し続けなければならない。これは多大な労力かつ、そんなに困難な作業をできる人間を各社が調達し続けられるとも思えない。
それゆえ、IPAが時代変遷にあわせて各レベル水準を定義し続け、評価手段(資格試験)も提供する。各社は上述の背景感からそれを利用するという構図だと理解した。(情報処理技術者試験の目的2、3あたりからもそう読み解ける)
なので、冒頭で私が書いた「企業が資格の価値を認めている」というのは、正しくは「企業はIT分野に限らず人材評価制度、人材育成施策が必要という前提で、ことIT分野においてはIPAの資格制度を組み込んだ設計をしていることが多い」、「IT分野だけ外部機関(IPA)を利用することが多い(私には少なくともそう見えた)から、企業が情報処理技術者の資格に価値を感じているように見えた」という表現が適切そうだ。

③実務に取り組む人間の資格への期待値と実際の存在意義の乖離
これは、期待値と資格で定義している水準のギャップだと理解した。
基本情報技術者の水準は、「上位者の指導のもとに・・・」という言葉が置かれている。現場に置き換えるとあくまで、先輩のサポート、助言のもとで業務をこなせるという状態であろう。であれば、私含めた登場人物の資格保持者への期待値が高すぎる。あくまで基本情報技術者はサポートのもと動き出せる水準なのだから。例えば、試験で出てくるような用語「スケールアウト」「ストアドプロシージャ」というワードが現場で出た時に、「あ、聞いたことある、関連ワードで調べよう」という行動がとれれば資格の水準としては十分なイメージなのであろう。まあ、そらそうか。

以上











この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?