「エブエブ」が残念なワケ

映画「エブリシングエブリウェア・オールアットワンス」を、あんまり予備知識なく行きました。

ミシェールヨーが主演、カンフーアクションがある程度の知識。
マルチバース、多元的宇宙は、あんま難しくないといいなー、くらいのヌルさで。

で、結論から言うと、つまらなかったです。
内容が分かんないとかでなく、やりたいことは分かるけど楽しくない映画でした。

(以下ネタバレあり)

前半はまあまあカンフー多め。でも撮り方とアクション演出に爽快感がない。

多元宇宙の自分からカンフーをベースに色々な能力をダウンロードして主人公が強くなってくとことかは割とワクワクするんですけど、インストールされた技の動きで面白いのは包丁さばきとピザの看板で敵をいなすところくらいで、アクションの手数が少なく、カンフーとしては全然食い足りない。

カンフーって日用品とか、なんでも武器にするじゃないですか。もっと!もっとカンフーなら面白くなるでしょ!!もっとカンフーを愛して!!とまず思った。
いっそもっと大胆に、アクション映画をパロった多元的宇宙なら見応えあったかも。(許可が出るかは知らんけど)

で、その多元宇宙にアクセスする方法の「バカバカしさ」も、カンフーと同じでアイデア不足だと思うんですよね。キモいとか下品とかありえないの組み合わせだけで笑える人はいいんじゃないでしょーか。私はこういうの欧米人好きだよねーって冷めた目で見てました。ナンセンスっていえるほどの笑いのセンスは感じませんです。

それと気になったのが、この物語、カンフーで戦う意味は結局ないんですよね。

エヴァンゲリオンで散々ロボットで戦ってたのに、最終的に会話で解決して終わる、あのルートを辿るんです。
ただ、エヴァはあの世界を構築する一要因だから存在に意味があるけど、この映画の世界観には特に東洋的な味つけがあるわけでもないので、カンフーで戦う理由がない。
ミシェールヨーだから、画面映えとしてカンフーが必要だから、あるいはなんかカンフーって荒唐無稽で面白いでしょ?って思いつきで使ってんだな、という印象。

あんまり必然性のない二部構成も、楽屋おちっぽいのやりたかっただけかな?
でもそれがウケる!斬新!みたいに面白いかというと…フツー。

そう、面白さとかバカバカしさでいうと、突き抜けるようなものはなく、全体にB級感がすごい。
うーん、20年前くらいならカルトムービーで終わってたんじゃないかな。

なんかこの、海外で絶賛してて、これが今アツイ!わかんなきゃダメ!みたいなムードの中期待してポカーン、みたいな感じは、古いですが「キル・ビル」のときに似てます。
でも絵面もセンスも馬鹿馬鹿しさも段違いなので、並べるのはホントは嫌です

それから、ウンザリしたのが、主人公がマルチバースにアクセスするときの演出。色んな表情で色んな世界にいるミシェールヨーのアップがシャカシャカ切り替わるだけ。この繰り返し、ワンパターンすぎる。
ポケモンショック起こしそうな感じがしたので、一番長い切り替わりシーンは途中で目を閉じました。

SNSの感想を見ると、セリフとか関係性がエモいとかいう感想があって、確かに良いテキストもあったなとは思うし、この映画を見て、いまこの瞬間を大切に生きたいという謎のエネルギーが沸いてきたように思います。
描かれてる内容も演技もいいと思う。だけど主人公と夫に比べて肝心の母と子の和解描写は割を食った感は否めないし、ベーグルをめぐる最後の攻防も勢いでで押し切ってるし、結局何がどうなったん?という問いに対しては、雰囲気でわかれ!という不親切なまとめ方でしかない。

乗り物で言うと、ジェットコースターほど楽しくないがスピードは出るヘンテコマシーンに乗せられ続ける苦行というか。
とりあえず飽きさせないように次から次へと場面を切り替えてガッタンゴットン引っ張り回されて、なんか最後にキラキラ光るもんがあるな…と思ってたら、一際でかくガッタン!とマシンが揺れて終点につきました→ああ、最後まで乗り心地よくなかったな……みたいな。そんな感想。

まとめ

私の場合
①表現が合わなかった。
クライマックスまでに画面から受けるストレスが強すぎました。
そして残念ながら
②「物語」のカタルシスが表現上のストレスを解消するほど効果的ではありませんでした。
③人間ドラマとテーマは良かったと思う。

実は先にSNSで
「こんな世界的ヒットが日本では遅れてる現状が嘆かわしい!!」みたいな発言を見てたんですが、観終わってみると、日本公開が遅れたのは、こりゃ日本人一般には受けないなって配給元が判断したからだなと。
マニアとか言われる人より、やっぱお金動かす人の目の方がシビアで確かなんじゃないの、とぼかぁ思いました。

アカデミー賞がどうのってのは…非白人が変わったことしたら褒めなきゃいけないムーブメントでもあるんじゃないですかね(投げやり)

もし「アジア人の感性で描かれた作品!欧米はダイバーシティに基づいて能動的にこの作品を理解すべき!」みたいな論調で推されてたりしたら嫌だな。


私が怒涛の勢いでブログを書くに至ったということを鑑みるに、ひとりの人間にクソな現実にバタフライエフェクトを起こそうという力を与えたという意味では、この映画はパワーがあるんだと思います。

でも、みんな観て!!オススメ!とは、言えない。そんな作品でした!

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