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朝ドラ「ちむどんどん」に思うこと。


朝ドラ「ちむどんどん」が始まってまだ1ヶ月弱。
前作「カムカムエヴリバディ」は毎日楽しみにしていたのだけれど
観るのが辛くなってしまった。

①元々あまり放送してほしくなかった。


今、沖縄に対しての日本の対応は「冷遇」としか言いようがない。
むしろ残酷すぎる。
県民投票で、辺野古移設は反対である、という明確な答えが出たのにも関わらず、辺野古の基地建設は止めるどころか、むしろ加速させているとしか言いようがない。
それでいて「リゾート」としての、自分の都合のいい沖縄、リアルを見つめないでもいい人たちは憧れを抱き続け、消費を続ける。
こんな食い潰しをしている最中で、事実上の税金のような形で受信料を徴収しているNHKで朝ドラだなんて、という気持ちでいっぱいだった。
そんな意見は割と多かったように思う。

②せめて放送するなら


今回は沖縄だけではなく、神奈川県横浜市鶴見区も舞台になるという。
そのため、どんなに内容が「本土に都合のいい沖縄」であったとしても
これだけは描いてほしいと願っていた。
ヒロインや、その家族がヤマトで「朝鮮人、沖縄人はお断り」と
就職差別や部屋の貸し出しを断られ、鶴見のウチナーンチュコミュニティがどういう役割を果たしたのか、というシーンは入れてくれるのでは?ということだ。
実際私は「沖縄の人だから契約社員でいいと思っていた」という言い方を、当時勤めていた会社の人間から言われた経験もある。
意外と変な扱いをする人は、未だ多い(むしろマジョリティだと思う)。
実際、ヒロインが上京した頃を思うと、もっと露骨に言われた時代。
そこを何らかの形で描いてくれるならと思っていた。

③私の感じた違和感。


実際始まって。例えば語りがジョン・カビラさんである、
共同売店のシーンや、そこで米ドルが使われていたなど、
「ああ、割と悪くないのか」と最初は思った。
(個人的には、飼育していた豚のエピソードは、多少強引と
いえどもよかったと思っている)。
しかし、結局違和感の方がみえてきてしまった。

SNSでいろんな人が発信しているので、あくまでも私個人としての
違和感を書こうと思う。

まず、このドラマでは「ここなら米軍関係者が絶対にいるであろう」
という場所に、全くそういった人が出てこない。
最初、比嘉家が招待をされたレストランのシーンが強烈だった。
当時、あれだけいいお店に行ける人は米軍関係者のはず。
実際、今の沖縄でも、「いい店」に行くと米軍関係者は割と普通にお客としている。
お店の見た目も、当時の沖縄にそぐわない建物の作り。
そこはまだ百歩譲ることができたとしても、
もうそこで「あぁ、アメリカ世を隠した」という気持ちでいっぱいだった。
最近出てきたハンバーガー屋さんのシーンもそうだった。
カジュアルな店でも米軍関係者は割と当たり前にいるはずなのに。
以前放送されていた「てるてる家族」で佐世保(長崎)のシーンがあって
そこでは米軍と思われる若者がいたのを覚えているし、
それこそ前作の「カムカムエヴリバディ」は、駐留軍ロバートは重要な登場人物。
この差で、「ダメだ」と私は思ってしまった。

他、沖縄の人の中でも、特に「男性」
(例えばヒロインの父親や、鶴見沖縄県人会の会長など、割と大きなポジションにいる人)は日本人の俳優が演じている。ここにも違和感があった。
それとは対照的に、女性は沖縄出身者が多い。ここも私個人としては差別的な印象を受けてしまった。

④「日本人が、いかに沖縄を知らないか」

始まって早々、「ちむどんどん」はそれをを如実に表すドラマになってしまった。
もちろんスタッフで沖縄の方も関わっている人は多い。
しかし、このドラマはあくまでも監督など、いわゆる「仕事で重要なポジション」は日本人のスタッフ。

例えば、同時期に放送される「ふたりのウルトラマン」は監督は長年沖縄をテーマにした映画やドラマを作り続けている中江氏。
もちろん彼も京都出身者なので厳しく観ないといけない部分はあると思うけれど、経験を思うと「ちむどんどん」とは歴然とした差がある。

まず、主役の二人はウチナーンチュの役者だ。言葉のアクセントもネイティブなのでほぼ違和感がない。
予告編のセリフにも「復帰」について「日本本土」について一定の距離を置くような印象をちゃんと与えている。沖縄をテーマに、そして復帰のタイミングで放送するならば、ここまで覚悟して欲しかったし、それぐらいのキャスティングや制作スタッフを揃えて欲しかった。
それをしなかったのは「日本人の傲慢」と言われても仕方がない。

⑤せっかくなら


同じNHKでも、例えばNHK沖縄で放送されている「きんくる」はもちろん、夕方のニュースはやっぱり完成度が違うなと感じることがある。
むしろ沖縄のスタッフやタレントさんが出ているのでリアリティがある。
「復帰」に関する番組も、今はこのタイミングなのでたくさん再放送されている。

中央のNHKでも、沖縄を追ったドキュメンタリー番組はたくさんあるはずだ。沖縄戦や米軍統治下、今一番話題と言っても過言でない(そして、その要因は日本本土にある)貧困の問題に関しても、最近放送されたばかりだ。
新しくフィクションのドラマを作るぐらいなら、そういった番組を連日再放送したり、NHK沖縄でのローカル番組を放送してくれればいいと思う。

数日前、2年4ヶ月ぶりに帰省した。実家で録画されていた「きんくる」はもちろん、地元放送局OTVやRBC、QABの番組を観た。もちろんそれぞれのスタンスもあるのは当然だけれど、東京にいて手に入る情報とは差が大きすぎた。

ドラマだって、ウチナーンチュが作って、ウチナーンチュのタレントさん、役者さんが作り上げた作品だってある。
「エイサーどんどん」なんて、ウチナーンチュじゃないとわからないエンターテイメントだった。

朝ドラに励まされている人は多いと思う。あんまり現実を言いすぎるとちょっとかわいそうかなと思った。
しかし、思った以上に「ちむどんどん」は沖縄の描写のみならず、ストーリーの矛盾を突っ込んでいる視聴者が多いような印象を受ける。「沖縄のテーマにしたらウケるんじゃないか」と安易に考えて作ってしまった朝ドラであれば、それもファンに悪いんじゃないか。
今からでも監督やスタッフ等を総入れ替えしてもいいと思う。私は特に、脚本家の羽原氏には期待していたので落胆が大きい。

受信料払っているのだから、それぐらいはご意見として伝えてもいいだろうか。

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