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自由をどう生きるか?ーー現代の意外な難問

 自由に配偶者を選べるはずの学歴も収入もそこそこの中流男性がなぜ未婚なのか?この謎を解こうとしたのが拙著だった。

 この謎は、 自由に職を選べるはずの学歴も収入もそこそこの若者がなぜ職を転々と変えるのか? どんな進路もサポートしてくれる家庭の子どもが、なぜひきこもりか? などと基本的に同じである。
 
 周囲からはそんな恵まれているのに何やってるの?あなたなら少し努力すれば出来るじゃない?と言われる。 でも選択しない。
 

 基本的に拙著と本書シュワルツ,バリー『なぜ選ぶたびに後悔するのか - 「選択の自由」の落とし穴』武田ランダムハウスジャパン、2004年 は同じ問いを解こうとし、かつかなり近い答えを出していると思った。少し共通点を拾ってみよう。

 自由と自主性autonomyは生活の充実感well-beingに不可欠であり、現代は選択肢を広げてきた。ところが、無力感が蔓延している。それはなぜなのか?筆者の答えは、①選択が増えたことによって期待値も上がり、満足感が得られなくなった。②選択肢が増えることによって選ぶ手間が増え、ウンザリしてしまう というものだった。
 
これは、拙著に登場する男性たちが「もっといい女性がいるかもしれない」と理想を追い求めた結果、未婚になってしまうのと同じだ。
 
 そこで著者は処方せんとして、「最高」を求めるのではなく、「まずまずでいいgood enough)という満足を得るように勧める。これも私が「締め切りの設定と理想の中身を減らす」ことが大事と提言したこととほとんど重なる。
 
 本書は心理学と経済学をベースに拙著と違う角度から現代の問題に身近な事例から迫っていて分かりやすい。またアルベール・カミュの言及など知的な深さも感じさせる。
 
 20年前の本だが、同じようなことを考える人はいるものだと感心した。両者を読めば、現代の意外な難問を自覚でき、それに対応できるようになると思う。
 
 最後に本書は、アマゾンでやたら値段が上がっているが、増刷すべきだと思う。























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