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愛実様@白虹(2023.1.14〜2.12)

愛実様の作品がそこにいるだけで心が刺激を受ける。
お人形さんは何も語らないし言葉を使うことはないのに、何かを投げかけてきているような気がするのはおもしろい。ただそこにいるだけなのにね。


愛実様(@ayuminingyou)の作品を見に、横浜MERRY ART GALLERY様(@MERRY_ART_)で開催している「白虹」展へ伺った。


愛実様が出展されていたのは「私を忘れないで」という作品。Y's表参道でのインスタレーションでもお会いしたお人形さんだ。嬉しい。


「私を忘れないで」さん、前述のY'sのときに「好きな物も嫌いな物も、着ていた服も、笑った顔も、何気なく振り返った姿も忘れたくない。あなたと過ごしたわたしはあなたの生きた証。」(ご本人のツイートより)
というお言葉が添えられており、胸にぐっときたのを覚えている。

愛実様が作品に与えたエピソードはじんわり切なさや痛みを感じて好き。

そして愛実様のトルソー作品はとにかく造形が美しい。私がなりたい体の形をしている。浮いた鎖骨や肋骨がかわいい。肩甲骨から腰にかけてのラインや骨格がすごく綺麗。

愛実様の作品は人間味があるのかもしれない。人間味がある、という表現がちょっとしっくりこないのが悔しいんだけど。エピソードには共感を抱くし、造形は人間に近い気がする(それでもお人形さんならではの美しさがある)。共鳴するというか、お人形さんの世界に引き込まれるというか、自分と重ねる?重なる?みたいな感覚になる。心はざわざわするが同時に安息も得る。ある意味こわいのかも。そのくらいのエネルギーを感じる。ただ愛実様のお人形さんをぼーっと眺めているのはすごく幸せだ。

本当に素敵。
垂れた塗料が涙みたいで綺麗だな。

正直愛実様の作品は難しいものが多いと私は感じるが、だから惹かれるんだと思う。この「私を忘れないで」さんもそう。添えられたエピソード、タイトル、作品の容貌、解釈が難しい。どうして髪の毛やまつげがないのか、瞳孔がないのか、ひび割れたボディの意味は?これはどんな表情か?しかしそもそも私の解釈など必要だろうか?愛実様の作品は心地よく思考を巡らせてくれる。


お人形さんって、多かれ少なかれ自分を投影してしまうものだと思う。私が悲しい日はお人形さんも悲しいお顔な気がするし、私の機嫌が良ければお人形さんもニコニコしている。具合が悪いと心配そうな顔をしてくれている気がする。私の気分や願望はお人形さんに映る。

ただ、愛実様の作品は対話できているような気になるのだ。これも結局は私の願望みたいなものなんだろうけど、思考は次々に湧いてくるがなんとなく一歩引いて見ることができて、自分の内側が整理されたような気分になる。不思議ですね。


なんだかたどたどしい文章になってしまった。愛実様の作品を見ると、ウワーすごい!素敵!と思うし、いろんな考えごとをするんだけど、その揺さぶられた感情を言葉にするのが難しいことがわかった。確か村上春樹の小説だったと思うんだけど、「言葉というかたちをとるべきではない」みたいな表現があってすごく気に入ってたのを思い出した。そんな感覚なのかもしれない。言葉にしようとすると違和感が残る。

私とお人形さんとのやりとりはきっと他者には理解できない言語で行われているのだろう。愛実様の作品はそんな特別な気持ちにさせてくれる。

ただ、タイトルを含め愛実様が作品に添える言葉はいつもすごく素敵なのだ。これも愛実様の作品の大好きなことのひとつ。


MERRY ART GALLERY様はすごく素敵なギャラリーだった。いいにおいがした。靴を脱いであがって、和室で細長い形をしているのだけれど、立体作品は真ん中に並べて360°見られるようになっていてすごく嬉しかった。お人形さんのおしりってかわいいんだよ。また、壁や柱は重厚感のある濃い色の木でかっこいいのだ。その和室に一点置かれた愛実様の作品がまたかっこよくて。あと畳なので這いつくばって見ることができます。落ち着く。
空間的にもエネルギー的にも、作品と作品の距離感みたいなのがちょうど良かった。鑑賞するときに干渉されない。これは大事なことかもしれない。


何も考えずわーかわいい!素敵!最高!って言ってるのも楽しいし、これはどういうこと…?と考えるのも楽しい。愛実様の作品は何度も会いたくなる。そこにいてくれると嬉しいものだ。


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