藤炎様@CARNAVAL 祝福と祈りとしてのバレエ・リュス(2022.12.16~12.18)

藤炎様(TwitterID:@mal_de_taco)の作品を見に、デザインフェスタギャラリー原宿で行われていた「CARNAVAL 祝福と祈りとしてのバレエ・リュス」(会期終了しています)に伺ったときのこと。

こちらは、木村龍先生のお人形教室の生徒さん4人での展示だった。

私が藤炎様の作品を初めて拝見したのは、2022年2月頃のクラフトアート創作人形展だ。裸体、固定ポーズのお人形さんたちが艶めかしく、当時私は禁欲的であることにこだわっていたため、お人形さんから色気を感じたことに後ろめたい気持ちになった覚えがある。白い肌に派手めなお化粧を施した長い髪の少年の姿で、筋肉や筋がすごくリアルな藤炎様のお人形さんたちはとても妖艶で美しかった。ぱっと見の印象は強く残っていたものの、つまりは綺麗な少年たちに照れてしまい、写真を撮ったりまじまじ見ることは憚られたというワケ。


そんな藤炎様の作品をまじまじ見られる機会があるなんて!と、喜んで原宿に向かった。

作家様は4人全員在廊されており、藤炎様の作品が見たくて、と言うと藤炎様を呼んできてくれて、作家様ご本人とお話しさせていただけた。とっても嬉しい。作品のことやお教室に通い始めたきっかけなど何でも楽しげにお話ししてくださり、おかげさまでとても幸せな1日になった。
藤炎様は作品についてお尋ねすると、こういうテーマ/イメージなのでここはこうしています!ということを歯切れよくお答えしてくれる。設定(という表現でいいかわからない)が具体的にあって、言葉で説明してくださるのは作家様の考えを共有してくれているようで嬉しかった。


藤炎様の作品はやはり妖艶で美しい。シャツや髪の毛の質感の表現もすごい。粘土がこんなに多彩な見え方をするとは。
とにかく骨格や筋肉の造形が綺麗で、上半身の大胸筋から三角筋にかけてのラインや、腰周りの腸骨筋や腸腰筋・腹斜筋が、筋肉とその影も美しいのだ。腰周りは藤炎様の好きなポイントらしく、体を捻って腰周りを強調したポージングのお人形さんもいた。腹部は皮下脂肪を感じる柔らかそうな印象。こちらも中性的な表現なのだそうだ。
骨格や筋肉が繊細かつ人間に忠実なかんじがするのだが、藤炎様曰く「解剖図を見てつくりました!」とのこと。平面を見て立体におこしたのはものすごい処理能力と技術だ…!と感動した。

また、お顔立ちも綺麗なお人形さんばかりだ。濃いめのお化粧がしてある。流し目みたいな色っぽさがたまらない。
少年の形が好きなんですか?と聞いてみたところ、「イケメンの方がいいじゃないですか!」と仰っていた。めちゃくちゃわかる。愛でるならイケメンがいい。私はこのお人形さんたちのことも藤炎様のこともより一層好きになってしまった。
作品に対して、素敵だと思った部分を小難しく解説できないとだめなのかなという勝手なイメージを持ってしまっており、そのせいでアートに詳しくない私は劣等感のようなものを抱いているのだが、素直に綺麗だな〜とかイケメンだな〜と思うだけで十分なのかもしれない。藤炎様のつくる美しいお人形さんたちを見ていたらそう思えて気が楽になった。綺麗なものは綺麗ってだけでいいんだわ。綺麗なことに理由とかないし。

ところでこちらの展示はテーマがあった。「フォーキンのアルルカンをモチーフにしています」「バレエ・リュスをコンセプトにした展示で素敵でした」などの言葉が飛び交い、学のない私はまたもや?マークでいっぱいになってしまった。恥ずかしいことに元ネタがわからない。逆にみんなはバレエ・リュスにどこで出会ったの?という疑問すら浮かぶ。しかし、聞かぬは一生の恥だな、と腹を括り、バレエ・リュスのことがわからないと藤炎様にお伝えしてみた。

すると藤炎様、「これに関する漫画ありますよ!山岸凉子が描いてて、なんなら図書館に置いてます!」と教えてくれた。
なんて親切…!

作品へのこだわりもテーマも制作のことも余すことなく教えてくださり、さらにはコンセプトになっているものすら知らない私に優しくおすすめ図書まで教えてくださるとは…お人柄が素敵すぎる…


藤炎さんに教えてもらったバレエ・リュスの漫画「牧神の午後」を読んだタイミングこのブログを書こうと思ったので会期が終わってからになってしまった。しかし、会期が終わってからも文章に書けるくらい鮮明に印象に残っている。本当に素敵だったなあ。

牧神の午後、近所の図書館にあった。貸出中だったので結局Kindleで読んだ。

展示の前に読めば良かった、と案の定後悔した。藤炎様たちを始め4人の作家様の展示は、バレエ・リュスを根っこにそれぞれの作家様の表現がなされた素晴らしいものだった。お人形さんのかわいさはバレエ・リュスを知らなくても感じられたが、もっと深く見ることができたはずだ。

しかし次にバレエ・リュスという単語を聞いたらいち早く反応できる。ありがたい。藤炎様のご厚意には感謝してもしきれない。

バレエ・リュスとは、20世紀初頭にセルゲイ・ディアギレフというロシアの芸術プロデューサーが創設し、パリを中心に活動したロシア・バレエ団である。
天才バレエダンサーのヴァーツラフ・ニジンスキーや振付師ミハイル・フォーキン、作曲家イーゴリ・ストラヴィンスキー(この人ココ・シャネルと付き合ってたことがあるらしい)などを起用し、舞踏・音楽・美術など多彩な面で革新的な作品を多く遺した。

藤炎様がこの展示のためにつくられたアルルカンの作品は、ミハイル・フォーキンが振り付けした「ル・カルナヴァル」という作品から着想を得たそう。アルルカンとは道化役のことで、黒い仮面を付け、ひし形の艶やかな色使いのまだら模様の服を着ている。「牧神の午後」にも同じような衣装の登場人物がちらっと出てきて、これか!!!と嬉しくなった。

藤炎様のアルルカンは、「バレリーナっぽさを表現したくて」とご本人の仰る通り、ふくらはぎや足の裏が湾曲している。確かにバレリーナっぽい…!そしてタイツの質感がすごい。関節部分の布の余り方がすごくタイツっぽい。粘土でこんな表現ができるのか、とその日何度目かわからない感動のため息が出た。

ちなみに「牧神の午後」は、ストラヴィンスキー作曲、ニジンスキーが振り付けしたバレエ・リュスの作品で、ニジンスキーの露骨な性表現が物議を醸した。「牧神の午後」なので牛を型どりました、と香夜様(TwitterID:@9091cm_xx)の作品は角が生えており、牛の模様もつけてあった。これがまた素敵だったのだが、もう言葉で何と表現して良いか全くわからないのが悔しい。実物を見てほしい。


こちらの展示は、ロシアとウクライナを始めとする不安定な世界情勢に対し平和への祈りを込めて開催した、とのことだった。また、4人の作家様の自主的な働きかけにより開催されたものとのことで、企画・運営、設置や装飾もすべてご自身でされたと伺った。私はこういうきっちり計画されたものが大好きなので、その背景も含めて感銘を受けた展示だった。見に行けて良かった。

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