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『 』との想い出だけが 《前》
バス停の古いベンチ。
変わらない静かな海。
太陽と防波堤、影が動く。
進学を機に地元を出て二年。
あの頃は飽きるほど見ていた海も、なんだか懐かしく思える。
潮風の匂いに、潮騒に。
脳の隅の方をくすぐられる。
息を吸い込むたびに、心がもやもやする。
瞬きをするたびに、『 』がそこにいるんじゃないかと思う。
でも、肝心のそれが思い出せない。
『 』が誰なのか。
そんな簡単なことが
『 』との想い出だけが 《後》
柏手が鳴って、電流が流れたように、私に衝撃が走る。
記憶、思い出……
私の、本当の。
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古びた、誰も寄り付かない神社。
参拝に来る人も居ない。
なんなら、誰の目にも映っていない。
神様は忘れられたときに死ぬ。
日に日に、体に力が入らないことを実感していて。
私はもうすぐ、死ぬんだろうな。
そう思っていたある日。
「……………………」
小さな、男の子。