レイニーナイト

仕事柄、退社時間が24時を超えることがある。昨日はそんな日だった。くたくたになりながらオフィスの外に出ると、熱帯低気圧の土砂降り雨が周囲の音をかき消していた。ドルジは自転車通勤だ。通常の人ならこの状況に絶望するだろう。しかし、一方でドルジは用意周到だ。こんなこともあろうかと、いつも上下のレインウェアを常備しているのだ。人通りの少ない深夜の道だ。ウェアを着てトップスピードで帰れば被害は最小限に抑えられるだろう。ペダルを漕ぎ始めると全身に雨粒がぶつかり音を立てる。しかし、この程度全くどうってことない。靴はスニーカーなので多少染み込むが全身が濡れなければ許容範囲だ。極力濡れる時間を少なくするために全身全霊で脚を動かした。結果、予想より10分も早く家に到着した。全ては計画通り。ドルジは急なハプニングにもスマートに対応できる大人な男だ。しかし、レインウェアを脱いで中のスーツを触ると、なんとビッタビタに濡れているではないか。それもそのはず、この熱帯夜に長袖の通気性の悪いウェアを着て全力で動いた身体は汗だくになっていた。汗はパンツにまで染み込み、濡れた頭はM字ハゲが強調されている。雨に濡れるのと何も変わらない結果になってしまった。深夜にくしゃみをしながら洗濯機を回す。妻からうるさいとクレームを言われ、人知れず涙を流すドルジなのでした。

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