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読奏劇×ListenGo<走れメロス>

 本日は、昨日4/30(金)正午より配信が開始された、崎山つばささんの読む「走れメロス」のコンテンツ内容について書きたいと思います。(内容のネタバレがありますので、ご注意ください)

 まず「読奏劇」とは、2020年8〜11月にかけて上映した配信に特化した朗読劇で、出演者と作品とを掛け合わせて映像演出で魅せる企画でした。(私がずっと音楽に関わる仕事をしていたことからMusic Videoのような演出と謳わせていただいています。)今回は、読奏劇の音声部分のみを配信するサービスということで、前回を”映像版・読奏劇”、今回を”音声版・読奏劇”と呼ぶことに致します。

 読奏劇の音声部分のみを配信とは書きましたが、前回投稿の通り”映像版・読奏劇”と”音声版・読奏劇”の大きな違いは以下の3点で、今回は(1)(2)に触れます。
1.音声の新規録音
2.BGMの新規構成
3.ブックレット写真の新規撮影

 朗読と言いながらも「演じること」に重きを置いて臨んで頂いた前回の映像版と違い、今回は音(声)のみで伝える物になりますので、リスナーがリスニングに集中できる作品作りに取り組んでいます。それが(1)(2)の部分である音声の新規レコーディングとBGMの再構成です。例えばコンサートのライブ音源は、ライブに行った方にとっては当時の記憶が蘇り心が揺さぶられることがよくありますが、初見では置いていかれるケースもあるかと思います。それはライブ会場に居た記憶がないので当然なのですが、今回はこのコンテンツを初めて試聴された方でも作品の世界に浸って頂けるよう、崎山さんには”演じること”というよりは”読むこと”に熱量をぶつけて頂いたと思います。BGMもその熱量ある読みに添えることで情景が浮かぶよう細かく作って頂いています。

 コンテンツの28:30付近より「ふと耳に、潺々、水の流れる音が聞こえた。」というセリフから始まる段落がありますが、ここは何度かテイクを撮り直した部分です。息を吐き出すような、まさに”小さく囁きながら清水が湧き出ている”かのような崎山さんの朗読と、それを添える水が流れるSE。そして水を一口飲んで、まさに”夢から醒めたところ”で緩やかにフェードインしてくるBGMが、義務遂行の希望が生まれる広がりを表現しているシーンと重なって個人的には強く気に入っており、聴きどころだと思っています。

 そして段落は前に戻りますが、コンテンツの16:12付近より、妹の結婚式が終わりいよいよメロスが磔場に向かう決意のシーンが来ます。身支度をし、殺される為に・身代わりの友を救う為に走ろうとするシーンです。「若いメロスは辛かった」とあるように、自分を奮い立たせて何とか決心して向かおうとするという、けっしてポジティブとは言い難い部分であるのに、音楽が加わることで希望の見える前向きな表現になっているのが、音楽の成せる面白い部分だと思っています。アコースティックのBGMというのがまた相性が良く、生のバックバンドで、舞台上で同じ企画をできないものかな?と想像を膨らませてしまいます。

 そして映像版・読奏劇では、崎山さんがイメージしていたのは読み人としての軸を物語の主人公・メロスではなく、書き手である“太宰治”に据えることと語っていました。(エンタステージさんより)

 そのような点も思い出しながら、スタジオで”読んでいる感じ”を出す為に少しだけ生感(リアル感)を残したいというオーダーもエンジニアさんにはしていたので、息使いやページのめくる音等を若干残しているのですが、このめくり音の調整は意外と難しく苦戦しました。ここは第二弾以降に繋がる話もあるので、いずれ書きたいと思います。

 いずれにしても、今回のコンテンツを試聴して頂いた方に情景を思い浮かべて、走れメロスの世界に浸ってもらえる内容になっていれば幸いです。そして、時には学校の教科書を読んでいた頃を思い出すような、時には昨年の映像版・読奏劇を思い出して壮大な映画の物語をイメージするような、いろいろな楽しみ方が生まれてくれれば有り難く思います。

 コンテンツは冒頭1分の無料試聴が可能です。1分でも崎山さんのエネルギーを感じることができますので、ぜひ覗いてみてください。

羽田野嘉洋(Dreamline inc.)

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