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読奏劇×ListenGo<日記帳>

 昨日5/28(金)正午より、伊万里有さんによる朗読「日記帳(江戸川乱歩・著)」の配信が開始されましたので、コンテンツ内容について書きたいと思います。(内容のネタバレがありますので、ご注意ください)

 まずはいつも通り「読奏劇とは何か?」を簡単に説明させて頂きます。「読奏劇」は2020年8〜11月にかけて配信した、著作権が消失した国内外の名作小説・童話等を題材に、音楽のミュージックビデオのように映像演出で見せる、配信に特化した朗読劇です。音楽のスタッフと映像で活躍されるスタッフの皆さんとで制作した為、完成作品は時には映画のような・時にはドラマのような内容になっています。現在はダイジェスト映像のみをYouTubeにて公開中ですので、ぜひ覗いてみてください。

 今回は、前述の読奏劇の”音声部分のみを配信する”新サービス(スピンオフ企画)ということで、前回を”映像版・読奏劇”、今回を”音声版・読奏劇”と呼んでいます。音声サービスのポイントは、朗読音声に、作品の世界観や朗読頂いたご出演者様の声質や演技の方向性をイメージしてSE・BGMを乗せており、より作品の世界に浸って頂けるような作りを意識しています。


 ここから本題に入りますが、伊万里さんとはもう5年近くお仕事をご一緒させて頂いていましたので、低域に芯のある声質が生きる&クールに読み上げられる作品を読んで頂こうと当初よりイメージを持っていました。ですので、最初のお打ち合わせ後の週末にはこの「日記帳」という作品をご提案していたと記憶しています。

 また収録時の打ち合わせには、伊万里さんからも読みについてのご提案がありました。日記帳を朗読する方々の多くは、この作品を読む際に感情をぶつけられる事が多いのですが、実は亡くなった弟の日記帳を読む兄の心情(その先の展開も含め)からすると、淡々と読み上げる方が良いのではないか?というご提案でした。少し読みを聴かせて頂き想像以上にフィットしていた為、面白い朗読作品になるのではないかと思っていました。昨年の「映像版・読奏劇」で、北村諒さんによる「瓶詰地獄(夢野久作・著)」を制作した際に、表現者(演出/演者)の解釈で作品に大きな変化が生まれる朗読の魅力を強く感じていましたが、それを再度感じさせられた瞬間でした。

 この日記帳では、伊万里さんの読みをより生かす為にBGMの「間」・「展開」に秒単位でこだわっています。(制作者の一方的なこだわりです)淡々と読み上げる作品としたが故に、シチュエーションからもピアノによるバラードを常時置きたくなるところですが、そうすると流れがべったりして飽きてしまう。緩急の付け方が非常に難しい作品でした。

 「間」については、冒頭のタイトルコール後、7秒付近からBGMがスタートしますが「ちょうど初七日の夜のことでした」の読みのタイミングと朗読のテンポにフィットするBGMを慎重に選んで重ねています。また6分28秒付近、手文庫の底から11枚の絵葉書が見つかるシーンのBGMの入りタイミング、17分14秒の兄が暗号を解読するシーンのBGMの入りタイミング、そして25分3秒。最後の結末に繋がるBGMです。どれも朗読にフィットするBGMを慎重に選び、タイミングを重ねていますので、もしお時間があれば注意深く聴いてみてください。

 「展開」については、ピアノバラードの合間に、最初は8分34秒付近からになりますが、一定のリズムを刻むエレクトロミュージックを挟んでいます。一見すると相性の悪そうなピアノバラードとエレクトロミュージックによるシーンの転換が、作品場面と朗読者のリズムにはまると自然にフィットして、作品にも緩急がつくという面白い部分ではないかと思います。また、伊万里さんの好むブラックミュージックのリズムイメージに近い音楽を入れる事で伊万里さんとの親和性を出したいと思った部分でもあります。


 毎回書いている部分ではありますが、今回のコンテンツは試聴して頂いた方に作品の情景を思い浮かべて、その世界観に浸ってもらえるよう制作したつもりです。コンテンツは冒頭1分の無料試聴も可能ですので、ぜひ気になった方は試聴してみてください。特に今回の「日記帳」は最後の1フレーズで物語の景色が大きく変わります。何かをしながら聴く「ながら聴き」と非常に相性が良い音声配信サービスですが、必ず2度目は落ち着いて聴いて見たくなるのではないでしょうか。



羽田野嘉洋(Dreamline inc.)

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