㊹ミャンマー情勢(エネルギー不足、2024年8月、9月乗り越えらえるか?)
前回に引き続き、ミャンマー経済の悪化状況です。
2024年8月の足元の様子
私、桐島は、ミャンマーは2024年度いっぱいで終わる(=外国企業の経済活動が停止に陥る)と予想しています。その2025年3月に向けて、悪化のスピードを記録しておきます。
今回の主題は、「エネルギー不足(⒈ガソリン不足+⒉電力不足)」です。
⒈ガソリン不足
2023年12月に起きたガソリン不足ですが、またもや、起こっています。
ガソリン不足って、日本だと2011年3月11日以降に、ガソリンの供給が追い付かなかったため、東北地方で起こりました。
その際は、長蛇の列ができ、給油量も制限されました。
事象としては、同じことが目下、ヤンゴンでも起きています。
給油のための待ち時間は、5時間以上です。
しかし、原因は異なります!!!
ガソリン不足の原因を、想像できますでしょうか?
ガソリン不足の原因
原因を一言でいえば「ドル不足」です。
ミャンマー政府は、ドル不足に直面しています。
日本政府は、2024年7月末時点で、約1兆ドル(1兆698億ドル)のドル資産を保有しています。他の外貨や金も含めると、外貨保有の合計額は、約1.2兆ドル(1兆2190億ドル)相当の額になります。
さて、ミャンマー政府は、どのぐらいの外貨を保有しているでしょうか?
ミャンマー政府の外貨保有高
最新の外貨保有高は、ミャンマー政府からは外に出てこないので、正確な数字はわかりませんが、米国のシンクタンクは、35億ドル(2024年7月のレポート)としています。
2021年10月19日に、当時の投資大臣だったアウン・ナイン・ウー氏は、60.4億ドルの残高があると発言していました。
3年近くで40%ほど減少したことになります。
ドルが足りないため、ミャンマー政府は、外国人の所得税の支払いを、2024年4月以降、ミャンマーチャット→ドルに変更しています。
日本からミャンマーの銀行へはドルは送金できません。ミャンマーの1つの銀行から他行にもドルは送金できません。
そのため、ミャンマーのTax Officeは、外国人に対して、ドルをキャッシュ(実物)でミャンマーに持参することを推奨しています。
ガソリンスタンドの現状
さて、ガソリン不足が、ドル不足が原因というところに話は戻ります。
ガソリンの輸入は、ドルを割り当てる優先分野になっています。
いままでは、以下の図のように優先的に中銀・政府からドルが安いチャットレートで割り当てられていました。
しかし、ミャンマー政府はドルが不足しています。
そのため、割り当てが停止し、Denko、Maxなどのガソリンスタンド運営業者に対し、自力でのドル確保を指示しています。
しかし、これと同時に、ガソリン販売価格は軍政の制御下に置かれいます。
そのため、輸入価格を販売価格が上回る逆ザヤ現象が起きていて、売れば売るだけ赤字になるが、軍政から販売を強制されるため売らざるを得ないという構図が生じているのです。
ミャンマーの安すぎるガソリン価格
逆ざやの証拠として、8月18日時点の1リットル当たりのガソリン価格は2,800チャットで、円に換算すると約60~65円です。
例えば、8月5日時点の日本のレギュラーガソリンの店頭現金小売価格174円(注:1リットル当たり53.8円のガソリン税と10%の消費税が課されるため約70円は税金)や7月の米国の平均小売価格140円と比較しても安すぎるのです(*゚Д゚)
ガソリン不足の解決策
さて、考えてみましょう♪
今後、ガソリン不足は、どうしたら解決されるでしょうか?
①または②の選択肢をとるしかありません。
しかし、①を選択すれば、軍政のドル保有高が減少します。
②を選択すれば、ガソリン価格が一気に跳ね上がり(現在の2倍以上)、市民から大きな不平不満が出ます。
実際、8月16日にこのような発表が出ました。
ミャンマーの中央銀行が、1億ドルを市場に売る予定という記事です。
中央銀行が、ドルを市場に販売しても、市場の実勢レートで売ってしまっては、ガソリン業者にとっては、赤字が続くだけです。
以下の①のポイントは、「安値」という箇所です。
ミャンマー軍政は、①も②を選択することができないため、ガソリン不足は、引き続き、解消しないと言えます。
※今回、一時的に解決しても、次回もっとひどくなる
チャット価値の乱高下
ミャンマー経済の先行きの見通しの暗さを反映して、チャットの乱高下が激しいです。
8月14日に1ドル=6,800チャットとなりましたが、それ以降は、両替業者に対する取締りが強化され、一気にチャット高が進みました。
とはいえ、以下のグラフは2024年1月1日以降のグラフですが、1月1日は1ドル=3,400チャットだったことを振り返ると、凄い勢いでミャンマーチャットの減価が進んでいることに間違いありません!!!
さて、ガソリン不足以外にも、絶望的な電力不足の知らせがありました。
⒉電力不足(マイナス15%電力激減)
8月12日にマンダレー地域南西部ミンジャンにあるガス火力発電所の稼働が停止しました。
これによりミャンマーの総発電能力は2,000MW→約1,700MWになりました。
ミンジャンの発電所の敷地内にあるV-Power社(90MW)とSembcorp社(225MW)が停止したのです、、、(T-T)
停止理由は、周辺の治安の悪化です。
さて1,700MWってどのくらいの大きさでしょうか?
いよいよ、ミャンマー国内全体の総電力能力は、県内150万人の電力を支える沖縄電力=1,500MWと同じレベルに下がってきました。
沖縄電力以下になるのは、時間の問題です。
2022年1月に、ミャンマー政府は、4,200WMの総発電能力があると発表しましたが、2年7ヶ月後の2024年8月に1,700MWまで落ちてしまいました。
単純計算すると、毎月80MWずつ減少しているため、1,700WM÷80MW=約21ヶ月という計算になります。
2年後の2026年6月には、電力が無くなっている計算です、、、
いままでの頑張りだと、2026年6月までしか、エネルギーが持ちません!
しかし、私、桐島は、エネルギーが尽きる前に、経済が先に瓦解する(=外国企業の経済活動が停止に陥る)と予想します。
勝負は、2024年度いっぱいです。
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