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⑲ミャンマーでのインターンシップ(ミャンマーで考えたこと、感じたこと)

2017年の記事になります。

2017年7月2日からヤンゴンでのインターンシップで今晩まで毎晩飲み会に参加していたため、体重が増えてしまいました。

ヤンゴンで感じたことをザックリとまとめたので共有致します。

まず第一に、こちらの日本人のミャンマーに対する期待が高すぎることには驚きました。

お決まりのセリフは、ミャンマーはラストフロンティアで国内人口が5,000万人以上いるため、今後高い経済成長の余地があるというものです。

しかし、当のミャンマーは1988年から鎖国をしてようやく23年ぶりに開国をしたばかりなので、虫のいい話ばかり追い求めてミャンマーに来られても困るし、最近来た分際で文句ばかり言うなと(僕がミャンマー人であれば)感じます。

話は変わりますが、バックパッカーでASEAN10か国を訪れると分かりますが、ミャンマーはラオスと並んで食生活が豊かで市場に沢山の食材が溢れています。
一国のGDPという外形的な基準だけで見ると「市民の豊かさ」は見えないと改めて感じました。

 例えば、シンガポールは教育水準が高く安全で、インフラも整っていて暮らしやすいと想像していましたが、年収500~1500万円ぐらいのシンガポール人と家は基本的に親と一緒に暮らす公営住宅で、恐ろしく狭いです。年収2000~1億円ぐらいにならないと、マーライオンやマリーナベイサンズが見える中心部には住めないので、とてもではないですが、私みたいなしがないサラリーマンがシンガポールに住むのを夢見ることは無くなりました。しかも、娯楽もほとんどないので、つまらないですし。。。

 私の給与水準で質の高い生活を求めるには、中進国であるタイやマレーシアが選択肢になります。経済発展をしてGDPが高いことはあくまで1つの魅力ですが、人々の暮らしとあまり関係ないケースも多々あります。

東南アジアではマーケットの活気や売られている食材の種類を見れば、それとなく生活の質が分かるのは面白いです。

ミャンマーの人々の生活水準が分かる記述を見つけましたのでまとめます(藤田幸一「ミャンマーの『貧困』問題」 無料でダウンロード可能)。

ミャンマーの1人当たり所得は市場為替レートのドル換算で見ると、ラオス、カンボジアより低いが、食生活を見るとカンボジア、ラオス、ベトナムの人と同じくらい、またバングラより質の高い、油脂、魚介類、果物、卵、飲料等を飲食している。

②ミャンマーでは1人当たり家計支出額で見た最上位の20%と最下位の20%で約4倍の格差があるが、家計所得に占める食費の割合(エンゲル係数)にはほとんど違いがない。所得格差は、より豊かな食生活を享受するという格差になっている。これは電気、水道、家屋等の生活インフラが未整備なためである。特に農村部において電化率が20%以下と極めて低く、テレビ、冷蔵庫、その他の家電製品が普及していない。その結果、階級格差、所得格差は、誰の目にも明らかな形ではなかなか表現されず、貧しい人たちも貧しいなりに食べ、タイのように「人並み」の豊かな生活を期待したりしない。その意味で、「期待の革命」はおこなっていない。こういうところで民主化運動はなかなかおこらない。

食事から経済や民主化の動向を予測できるのは面白いと思います。ミャンマーは民主化したと言われていますが、いまだに軍人議席が25%存在しますし、多くのミャンマー国民が選挙権を有したいと思っているわけではないです(政治のことを考える余裕があるミャンマー人がそんなに多くいると思えません)。

 私たち外国人は、ミャンマーに色々な変革や経済成長を求めていますが、それはアメリカの対日構造改革要求と一緒で、一方的な傲慢な押し付けにならないか心配しています。というのも、食材が豊かで、これまでもこれからも、大して変革しなくても、国民は食べて暮らしていけるためです。変にGDPを崇拝して経済の原理だけで、ミャンマーの発展=ミャンマー国民の幸せと捉えるのは恩着せがましいという自省を感じます。

 とは言えど、策を何も講じなければ、隣国の大国に呑み込まれてしまうという危機感もあります。

 導入はこれぐらいにして、以下ヤンゴンで感じたことをザックリとまとめたものになります。一見、独りよがりなまとめに見えますが、ヤンゴン大学の教師、ミャンマータイムズの記者、JICAの方等、10人以上の方と意見交換して得た知識が基になっています。

ミャンマーで考えたこと、感じたこと

マクロ経済概観

●現在のミャンマーの1人当たり名目GDPは1300ドルで、日本で言えば1967年水準。当時の日本は人口1億人、GDP1243億ドルで輸出額104億ドルのうちアメリカへの輸出が30%を占めた。この頃の日本は全共闘運動前の野蛮な状態(殺人者数は1955年の2119人をピークに67年に1395人へ減っていたが、暴力は日常茶飯事)
●日本の1967年のGDP実質成長率は11.1%、1968年は11.9%(米国2.5%、4.8%、ユーロ圏3.6%、5.4%)であり、世界経済も好調だったため、比較的成長が楽であった。
●現在のミャンマーは成長率7.6%だが、世界経済成長率は2.7%(韓国2.8%、米国1.6%、EU1.6%、日本1%、中国6.7%)という状況で、海外投資を呼び込むにしても限定的
●ラストフロンティアとしてのミャンマーは、まだまだ経済発展の最初のステージ(1人当たりGDP1,000→3,000ドル)。サービスの質が悪くて当然だが、ミャンマー人気質のおかげで、アメリカよりは相当まし
●日本人含む外国人は現在の自国経済と比べがちだが、自国の半世紀前の水準と比較すべきである。

今後のミャンマー経済の動向

●2011年の開放政策による経済成長はひと段落、FDIの額は小さくなり案件は小粒化(2010年度200億ドル24件→16年度665億ドル139件)
●2016年11月に日本が表明した官民合計8000億円規模の支援への日本企業の期待大(ODAを当てにする建設会社は多いが、ODAはあしかけ5年が標準(FS2年、建設3年))
●個社にとってミャンマーに工場・事業所新設の必要があるか、タイからの輸出や派遣でいいか不明。
●ASEAN・中国との更なる一体化を受けて、短期的にミャンマー人がますます中国・タイへ流失(人身売買含む)、中国・タイ製品がミャンマーに流入して中タイ経済に浸食される恐れがある(マーケットの商品を見れば今でも同様)。
●長期的にミャンマーが地政学上有利との議論があるが、日本にとっての長期の見通しは不明である。
日本がダウェイ港の開発に本格的に乗り出すのはティラワ港の整備が終わってからであるため東西回廊はまだまだ先か?(中国はパイプラインによってひとまず地政学的重要性をクリア)
●2020年の次期総選挙までのスーチー政権が政策実現・人口ボーナスの観点から勝負だが、過去1年間で何ら進展がなくても、国民は気にしていない(国民の期待値の低さが強みか?)。
●欧米のNGOがやっかい。ミャンマーの民主化運動は、軍事政権の汚職や抑圧に対する不満で、政治の民主化を求めているわけではなかった。欧米のNGOグループは「ミャンマーの民主化の手助けの旗手を謳い、人権問題にやたら介入」してくる(当方が米国でも感じていること)。

国内安全保障

●ミャンマー政治にとっては、内政の安定(少数民族との和平)が最優先。経済発展は彼らの生活水準の向上に結び付くことが理想であるが、徴税機能・官僚機構が脆弱であるため中央から地方への所得再分配が困難。少数民族の国境貿易を黙認することで安定化を図っているものの、中国・タイ依存が依然高いままであるため、引き続き全方位外交でバランス重視。軍用機は中国に支配されないために、ロシアからも受注(2001、09年の戦闘機(MiG-29/UB以外に最近も))、インドとも軍事協力(2006年に共同海軍演習「ミラン2006」に国産コルベット艦「アノーヤター」を派遣)。
中国からすれば、国境地帯はバッファーの役目(ロシアにとってのウクライナ)。中国にとってはモンゴル、ラオス、北朝鮮と同様。政府が中央集権化を進めて、国軍が中国との国境に進出して、統一されたミャンマーと国境を接することは脅威(例:2013年中国はUWSAにヘリコプター・ガンシップ等の装備を供給、少数民族武装グループを活用して中緬国境での紛争を煽り、中央政府に圧力をかけた)。

ヤンゴン都市構造

●都市の規模やインフラ整備が交通増・人口増に追いついていないが、一時的な外国人の増加に終わる恐れもあり。将来的に、建設中の高層住宅が余る可能性大(中国人の莫大な流入に期待)。
人口の3分の1を占める少数民族への差別や文化(言葉)の違いが大きいため人口転換(田舎から都市部への人口移動)が起こりにくい構造?(中国は途中で農村戸籍を段階的に無くして、沿岸部への労働供給を推し進めたが2011年にルイス転換点を迎えた)。
●ヤンゴンが国際都市になれるか不明(お隣のバンコクはミャンマー・カンボジア・ベトナム・ラオス人が労働する東南アジア大陸部の国際都市、2000万人以上が訪れる世界一の渡航先)。

中国にとってのミャンマーの重要性

●自国の生き残りのために地政学上重要(中国に対する)。中国にとっての国家戦略重点分野であるエネルギー、鉄道、ITに関連するのであれば、金に糸目はつけない。チャオピューのガスパイプラインや、ヤンゴン市内の携帯電波、バス等。
●ガスパイプラインは基本的に地下を通り直接は目に見えないので(川を横切る時を除く)まだ抵抗が少ない。鉄道敷設は貨物輸送で市民の生活向上に繋がらず、領土侵害のシンボルとして映るためしばらくは不可能。
●一番恐ろしいのは、マルウェアや制御システムが内製されている中国携帯やWiFi等のITシステム関連。OppoやVivoはiPhoneと性能は大差ないが、150ドルから購入可(システムエンジニアでもマルウェアの除去が不可能とのこと)、東南アジア諸国での広告・営業攻勢が強い(バンコク、カンチャナブリ、ビエンチャン、ルアンパバーン、クアラルンプール、香港、上海で大々的な広告・販売店を目撃)。

マクロ戦略よりミクロの個別戦略

マクロ戦略は考えても無意味。マクロの指標に信憑性がなく、ミャンマーに未来の絵を描く余力がない。何にもまして最重要なのは国民統合
●いままではビルマ族と少数民族という対立軸であったが、NLDと軍部という対立軸が増えたため、意思決定が一層困難に。安全保障や大きな経済発展に繋がるマクロ戦略以外は響かない。(電力不足解消→更なる製造業の誘致→持続的な発展というのは直近の理想の絵姿)

以上

See you soon.


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