星野源さんの法則

なにか物事を評価し、それを公に言及するときは「星野源さんの法則」と勝手に呼んでいるルールを厳守するようにしています。『星野源のオールナイトニッポン』で何度か発言されていて、自分がよく聞いていた2017〜2020年当たりにも話されていたと思います。

ラジオなので正確な出典明記が難しく、かつ、記憶によるので不正確かも知れません。その上で、私が呼ぶ法則というのは以下二点に集約されます。

1.何かを高評価するとき、別の何かを比較して落とすことはしない。
2.「◯◯が好きな自分」の話にしない。

たとえば、すごく面白い本を読んだとする。第一法則は、「あの作品はつまらなかったけど、これは面白い」とか、「これに比べたらあの作品はほんとダメ」というように、面白い本の面白さを表すのに、わざわざ別の作品を「落とす」ことをしない、という意味です。

第二法則は結構難しい。何かを評価するのは多かれ少なかれ、自分語りになりやすい。また別の観点としては、「なぜ自分はこれが面白いと感じたのか」という個別性の中に、その人の評価の独自要素が入ってくる面もあるので。

ただ、ある物語、ある本、ある音楽を、自分のことを語りたいがための「道具」にするとしたら、それは行き過ぎであるはずです。その意味で第二法則は、「自分は本当にこの本が好きで、この本を紹介したいのか」と自問自答して、抑制する戒めとして機能させるイメージです。

実際、星野源さんは、ラジオの中で好きな音楽を語る時「とにかくいい」という感じで、良さをゴリゴリに推してらっしゃる印象。二つの法則の共通点は「好きなものの好きな部分を語る」というところに帰着するかなと思われます。

本来、批評というのは第一法則に則らないとは思います。どうしたって比較は含む。でも東京事変の曲『透明人間』ではないですが、「何かを悪いというのは僕には簡単じゃないことだよ」。難しい。

だから、楽しく、無理なく、好きなものを語るときは、この二つの法則はちょうど良いのではないかと思われます。

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