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記憶で語る「スノウ・クラッシュ」(再読が楽しみ)

ニール・スティーブンスンさん「スノウ・クラッシュ」が、ハヤカワ文庫から新版で登場するそうだ。1月下旬刊行予定。非常に楽しみで、再読したい。

もう10年かそれ以上前になるか、子ども時代に旧約版を読んだ。それもハヤカワ文庫だった。黄色の表紙をよく覚えている。サムライのような、ミュージシャンのようなドレッド頭の男のイラストに「カッコいい」と雷を打たれた。

たしか冒頭で、この男がピザか何かをデリバリーするために相当無茶をするシーンがあった。パンクだ!このあとどんな展開があるのか!となぜか無性に胸が躍った記憶がある。コナンくんがスケボーで犯人を追いかける時に通じる何かがあった気がする。

今もはっきり思い出すのは、バーチャル空間の描写だ。五感が再現されるような、人間が丸々バーチャルに移行するような世界だったと思う。当時は「メタバース」という言葉はまったくスルーしていた。幼心に横文字は焼きつかなったようだけれど、その世界の斬新さは今もよく覚えている。

読んだ当時、映画「マトリックス」の第1作に通じるな!と興奮した覚えがある。

そのバーチャル世界で異変があった時、リアルな肉体も危機にさらされる描写があってさらにドギマギした。え!そんなことがあるのか!?と。

あとはやっぱりサムライらしい何らかの刀を使ったシーンがあったような気がする。

鮮明な印象と同時に、まったく意味不明なところが至る所にあって何度も寝落ちしかけたほろ苦い記憶もある。たぶん世界観が斬新すぎてついていけなかったのだ。序盤のスピード感に対して、中盤の技術的解説が子どもにはまだしんどかったような。

それでも最後まで読み切った。サムライ的シーンはかなり後半に出てきた覚えがあるのだ。あるいは思い出の改竄で、実際は途中で挫折したのかもしれない。

「スノウ・クラッシュ」を読んでよかったかと聞かれると「よかった!」と間違いなく言える。SFが「訳分からないけどカッコいい。意味不明でも奥が深い」と印象付けられた記念碑的作品だ。

今となっては、「メタバース」が現実化するような時代で、まさしく教典というか原典というか、歴史的な作品だったのだと知る。再読して何を感じるか、試してみたい。これから初読の人には間違いなくおすすめだ。

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