読書感想文

私が読んだ本の記録

読書感想文

私が読んだ本の記録

マガジン

最近の記事

私の読書感想文: 坂口安吾 悪妻論

先日、電車に乗った際に妊婦に中学生ぐらいの制服を着た子供が座席を譲っている微笑ましい光景を目撃しました。 席を譲った中学生は素敵な心の持ち主だと思うと同時に、日本の道徳教育が行き届いていることを改めて実感した次第です。 一方、ときどき優先席であるにも関わらずどっかりと腰を掛け、妊婦や高齢者の方が目の前に来ると寝たふりをするような人も稀に見ることもあります。 そういう席を譲らない人に対して、何となく心が貧しい人だと私は感じてしまいます。 おそらく、多くの人も私と同様に「席を譲る

    • 私の読書感想文: 夏目漱石 坊っちゃん

      高校までの国語・現代文の授業を通じて「近代文学は面白くない」と結論付けている人もいるかも知れません。 私も「正直、この作品はよくわからないし、つまらない」という感想を持った作品はありますので、すべての近代文学が誰にとっても楽しめるものであるとは言えないと考えます。 しかし、今回紹介する夏目漱石の『坊っちゃん』だけは胸を張って「面白い!」と断言できる作品だと思います。 登場人物紹介坊っちゃん出てくる登場人物は非常に個性豊かで、魅力的です。 登場人物を見て頂いただけでも、読みた

      • 私の読書感想文: 芥川龍之介 蜜柑

        最近、座席に座っていた男性がすくりと立ち上がると、大きなお腹を抱えた妊婦さんに席を譲っている光景を目にしました。 この光景を目撃した私は、少しだけ心が穏やかになり、気分が晴れやかになったことを覚えています。 誰かの優しさに触れたときや美しい光景に触れたときには、自然と心が豊かになるのを感じます。 今回紹介する芥川龍之介の『蜜柑』はそういう感情を抱いたことがある人には、きっと共感できる作品だと思います。 おそらく、『蜜柑』は10分程で読める短編ですが、読了後には少しだけ日々の疲

        • 私の読書感想文: 宮沢賢治 注文の多い料理店

          忙しない現代社会の中で、合理的に行動することに疲れてしまうことが多々あります。 一方で、資本主義の社会の中で生活する中で、これはしょうがないことだと割り切っている自分が存在していることも確かです。 何でもかんでも金勘定で考える社会に違和感を感じている人は、今回紹介する作品は心に刺さるのではないでしょうか。 今回は宮沢賢治の『注文の多い料理店』を紹介します。 この作品は、宮沢賢治が都会で生活する一部の人に対する批判が込められた作品だと考えます。 賢治の都会の価値観に対する批判的

        私の読書感想文: 坂口安吾 悪妻論

        マガジン

        • 読書感想文
          4本

        記事

          私の読書感想文: 芥川龍之介 トロッコ

          遊園地のジェットコースターに幼少期にはよく乗せてもらいました。 最初こそ恐る恐るではあったものの、一度レールを滑走する爽快感に魅了されると、「もう一度!もう一度!」と両親にせびっていました。 その度に、何度も行列に並び直し、一緒にコースターに乗せてもらったと記憶しています。 子供ほど体力がない両親には、大変な注文だったのだろうなと、今でも感謝しています。 一方、子供ながらに動力源を備えないコースターがレールの途中で止まらないことを不思議に思っていました。 一直線にレールを駆け

          私の読書感想文: 芥川龍之介 トロッコ

          私の読書感想文: 芥川龍之介 蜘蛛の糸

          誰かを羨ましく思ったり、自分だけが良い思いをしたいと思う時もあると思います。 そんな時に思い出す作品は、芥川龍之介の『蜘蛛の糸』です。 幼少期に母親が読み聞かせしてくれたっきり、作品に触れる機会はありませんでしたが、雨が続く今日此頃になって、家でとじ込もって過ごすことが増えたため、改めて読み返してみる気になりました。 読み返すと10分ぐらいで読める作品にも関わらず、十分に面白い作品であり、芥川龍之介の凄さを感じました。 皆さんが少しでも、芥川龍之介の作品に触れるきっかけになれ

          私の読書感想文: 芥川龍之介 蜘蛛の糸

          私の読書感想文: 宮沢賢治 星めぐりの歌

          日本の2021年5月26日の夜は皆既月食でした。 私が丁度帰路についていた20時過ぎに皆既食が始まるということで、最寄駅から一駅前の駅で下車し、夜道を1人歩いていたのですが、結局、お月さまを拝見することはできませんでした…。残念…。 一駅多く歩いた時間は、適度な運動となって、おにぎり1つ分のお肉と脂肪を燃焼してくれたと思うことにしています。 今回紹介する作品は、宮沢賢治の『星めぐりの歌』です。 『修羅と春』という詩集に掲載されている作品を取り上げます。 皆既月食に限らず、夜

          私の読書感想文: 宮沢賢治 星めぐりの歌

          私の読書感想文: 宮沢賢治 永訣の朝

          休日を有意義に過ごすことの難しさを実感しています。 金曜日の夜には、あれこれと考え巡らせ計画を考えているのですが、大抵の場合は土曜日の朝に寝坊をしてしまい、計画が頓挫します。 その後は、無計画なままにダラダラと時間を浪費し、また月曜日がやってくるというサイクルを毎週末に繰り返しています。 そんな決断力が欠けた私がいる一方で、宮沢賢治はそうではなかったようです。 というわけで、今回紹介する作品は宮沢賢治の「永訣の朝」です。 永訣の朝は、結核で倒れ食べ物が喉を通らなくなった妹のト

          私の読書感想文: 宮沢賢治 永訣の朝

          私の読書感想文: 宮沢賢治 やまなし

          夏の足音が耳に届き、緑に染まったソメイヨシノの桜並木の木陰を心地よいと感じる季節になりました。 近所の小中学生が他愛の無い会話をしながら、緑道をかけていくのを眺めると、私にも、これ程に無邪気で純粋な時代もあったのかと思ったりもするわけです。 決して、大人になったことを後悔しているわけではないですが、忘れてしまった感受性や心の豊かさがあると思うと、少しだけ寂しさを感じる時もあります。 一方で、大人になった今でも、変わらない部分や心情もあると思います。 私にとっても、当時から変わ

          私の読書感想文: 宮沢賢治 やまなし

          私の読書感想文: 夏目漱石 私の個人主義

          人間に生まれ落ちたからには、悩まない日はないと思います。 毎日せかせかと働いたりすることに意味はあるのだろうかとか。 今学んでいることが将来役に立つ瞬間は果たして来るのだろうかとか。 そもそも、何となく私には今やっていることよりも、もっと大切なことを忘れている気がする…。 そんなときにオススメの自己啓発本があります。 それが、今回紹介する夏目漱石の『私の個人主義』です。 本作品は学習院大学での漱石の講演を文字に起こしたものですが、内容は大変含蓄深い内容でした。 「私はこの世に

          私の読書感想文: 夏目漱石 私の個人主義

          私の読書感想文: 太宰治 走れメロス

          こんにちは! 気温も上がり、涼し気な服装で街を出歩く人が多くなり、比較的過ごしやすい季節になりました。 陽気な気分で街を歩いてみたり、また時には、無性に外を走り回ってもみたくなったりもします。 私もこの時期になると、リレー選手として体育祭の練習に打ち込んでいたことを懐かしく思い、近くの公園を走ったります。 ただ、7月を過ぎた頃には、暑さゆえにあまり走らなくなっているわけですが…。 というわけで、今回は太宰治の『走れメロス』についての読書録つけてみました。 走れメロスは、主人

          私の読書感想文: 太宰治 走れメロス

          私の読書感想文: 夏目漱石 夢十夜 ~第六夜~

          芥川龍之介、太宰治、夏目漱石...。 有名で知っている作家だけど、実際の作品はあまり読んだことがない。 高校のときの国語の授業で読んだのが最後になっている。 でも、少しだけ近代文学に興味はある。 そんな人の背中を押せるならと、私の備忘的な近代文学の読書録を残していくつもりです。 今回は夏目漱石の『夢十夜』についての読書録です。 夢十夜は、文字通り筆者が見た夢の内容を「第一夜」から「第十夜」までの十個の短編として書き記した作品です。 夏目漱石がそれらの夢を本当に見たのかはわか

          私の読書感想文: 夏目漱石 夢十夜 ~第六夜~